愛しいんだ、

愛しいんだ、


    







   


  




愛しいんだ、







     見てないふりをする  眼差しが



     太腿をふわっと包む  巻き毛が



     息を吹きかけたら小さく揺れるピアスのついた  耳が



     唇の動きに細やかに応えてくれる  頬とこめかみが



     もたれかけたくなる、ふっきれたような  気丈夫さが



     買い物袋を三角に折って置いてくれる  遠まわしな愛情が



     会えなくなった母さんや姉さんの話をするときの  哀しげな思い遣りが 



     生きていく知恵のような、したたかな  ユーモアのセンスが



     時々あたふたさせて、ひとを迷子みたいにさせる  気の強さが



     じっと押し黙って、言いたいことを明かさない  プライドが



     みんなといるときに、机の下で隠れて手を握ってくる  あどけなさが



     いつか前触れもなく、終わりの日の夕方に見せてくれた  泣き顔が。








愛しかった。







夢中で、過ぎた。

    







   


  

愛しいんだ、

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愛しいんだ、

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-06-14

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