キャベツ投げ
さあ、ドッチボールをしよう!
残酷な、ドッチボールを!
ある少年のおぼの家で、キャベツが大豊作だった。
あんまりキャベツが採れ過ぎたので、
おぼから少年の家へと、箱入りのキャベツが送られてきた。
お母さんは思わず、困惑してしまった。
どんな風に調理しようか、そればかり浮かんだ。
少年は箱の中を覗き込んだ。それで、ある閃きが浮かんだ。
次の日、彼は大勢の友達を連れて、運動場にいた。
側には皆で担いできた、
家から持ってきた箱入りのキャベツが置いてある。
少年は満面に笑って、こう言った。
「皆、キャベツでドッジボールしよう!」
皆は賛成した。好奇心で、気持ちは一杯だった。
ピーッ。合図が鳴って、ドッジボールを開始した。
ボン、と一人に当たって、(打撲して)退場。
ボン、ともう一人に当たって、(内出血して)退場。
どんどんどんどん、退場していった。
ボン、と一人に当たって、(骨折して)退場。
ボン、と一人に当たって、(激しく嘔吐して)退場。
やがて、残りは一人になった。
物凄い勢いで、誰かがキャベツを投げた。
ドン。頭に直撃して、割れた。
キャベツが割れた。頭も割れた。
血が水みたいに流れ出た。
ぞっ、とした。
皆ざわざわ脅えた。
少年は言った。
「逃げよう!」
残された子供は、即、死んだ。
振り向きながら、逃げる子がいた。
泣きながら、逃げる子がいた。
しかし誰も、黙っているしかなかった。
夜中、子供達はがたがたと震えていた。
母親達は心配したけれど、何も言わなかった。
運動場で死んだままの子供は、明け方見つかった。
両親とも、号泣していた。
近くには、真っ赤なキャベツが落ちていた。
いじめが生み出した結果、と誰かが言った。
実際にはいじめじゃなかったけれど、
学級会が開かれた。全校集会も開かれた。
先生達は言った。
「誰があんなこと、やったんだ?」
黙々とした時間が流れた。
誰もが何も口に出さなかった。
当たり前だ。
罪には罰が待っている。
子供達は集まった。
集まって話し合った。
今回、誰が一番悪いんだ?
「あの少年だ。」
皆、一斉に少年を指し示した。
キャベツを持ってきた少年だった。
けれど、もうそこには少年の姿はなかった。
家に帰った少年は母親に懇願した。
「この学校は怖いから、転校させて。」
一部始終を聞き終えた母親は脅えていた。
「この村の子供達は、一体どうなってるの?」
少年は、いなくなった。この村に。
残ったのは、キャベツだけ。
そして、残酷な、子供達だけ。
後日、別の村で、同じような事件があった。
そして、そこにも転校した少年の姿があった。
キャベツ投げ
友達何人死ねるかな?