あなたの笑顔に魅せられて(2)

第二章 ある日の月曜日

俺は透明人間だ。正真正銘の透明人間だ。何、俺の姿が見えないから、確認のしようがないだって。それは当たり前だ。見えないからこそ、透明人間なのだ。もし、俺に尻尾があって、俺の透明の技術がまだまだ未熟で、尻尾だけが見えることなんてなれば、問題だろう。それなら、お前は、ひょっとしたら、俺が狸か狐かじゃないかだって?冗談は、よしてくれ。狸や狐が、自分のネタがばれるようなことはしないはずだ。それに、狸や狐を馬鹿にしてはいけない。狸や狐だけに、馬鹿じゃないだって。それはそうだ。言葉遊びは止めておく。俺が言いたいのは、狸や狐は、民話では、ある時は、主人公、ある時は、主役を支える名脇役、ある時は、敵役として、登場しており、人間とは、切っても切れない、近い存在なのだ。また、時には、信仰の対象にもなっている。狐や狸が祭られている神社は、日本中、至るところにあるはずだ。人は、死して、名を残し、虎は死して、皮を残す。狸や狐は、死して、神となり、透明人間は、死して、脱ぎ捨てられた服だけ残す。誰だ、こんなところで、ストーリーキングをしたのは?との、非難めいた声が聞こえてきそうだ。俺も、いつかは王、裸の王様となれるのか!
それはそうとして、俺が何故、透明人間になったのかだって。そりゃあ、企業秘密だ。とにかく普通の人間から見ると、全く見えないらしい。もちろん、俺自身が自分を見ても全く見えない。もし、透明人間に仲間がいたとしても、全く見えないだろう。こんな俺だから、普通の会社勤めはできない。また、透明人間だなんて、うっかり口に出してみろ、異人さんに連れられて、どこかの見世物小屋にでも売られてしまう。ははは、見世物小屋だなんて、俺も年齢がばれてしまうな。昔、地元の神社の秋祭りのときに、近くの空き地に、どこからともなく大型トラックがやってきて、あっという間に、テントを立ち上げ、狼少年や大いたち、ろくろ首の看板が立ち並んだものだ。
その頃から、透明人間だった俺は、木戸銭を払わずに、閻魔大王が座る入り口を、誰にも咎められることなく、正々堂々と、潜り込んだ。中身の様子だって?それは、俺の無銭入場と同じくらい、時効ものだ。大きな板に血糊のついた(多分、赤い絵の具だろう)大いたち、肩車された片方が、土台の仲間の肩に立つ、ろくろ首、この見世物小屋が、ありもしないことを大袈裟に、さも実在するかのように、わめきちらす、狼少年と、すべて役者が揃っていた。だが、今も昔も、騙されていたと分かっていても、つい、心躍る気持ちを抑えながら、近所の子供たちは出向いたものだ。そんな気持ちは、いつの世でも、人にとって大切な宝だ。好奇心のないところに、進歩・発展はありえない。見世物小屋で熟成された未知への憧れが、世界最高峰の山への冒険、南極、北極への極地の制覇、果ては、月や火星など、地球を離れた、宇宙への挑戦に繋がるのだ。だからこそ、透明人間である俺のこれからの告白も、楽しみながら読んで欲しい。少し、我田引水か、はっ、はっ、はっ!
それじゃあ、お前の仕事は何だって?よくぞ聞いてくれた。俺の職業は、俺の体を使った商売、まさに、手に職をつけたというより、手が勝手に商売に適していたもの、常に前向きの、行進じゃなくて興信所、つまり、私立探偵だ。探偵だなんて言うと、聞こえはいいが、小説や映画、テレビなどで出てくるような、かっこいい仕事じゃない。台風が接近して、大雨警報の出ている日も、冷たい木枯らしの吹く風の日も、思わぬ大雪で、電車など公共交通機関がストップして、道路では、スリップした車が衝突している日も、余りの暑さに、自分の周りに汗のプールができる日も現場に出向き、汚い、きつい、給料安い、気分が悪い、着るものがいらない、いや、これは俺だけのことか、という悪条件で、仕事に望んでいる。とにかく、ろくな仕事じゃないってことがわかるだろう。それじゃあ、何故、そんないやな仕事をしているのかって。透明人間なら、透明を利用して、盗みなど様々な悪事を働けば、金儲けなんか簡単だと思うかも知れない。
いやはや、その通りだ。宝石店とか銀行などの金融機関に行けば、金目のものや札束だって、取り放題だろう。でもよく考えてみろ。俺は確かに透明だ、他の人間からは見えない。でも、俺が盗ろうとする宝石とか紙幣までもは、透明にできない。また、透明にしてみろ、そんな宝石とか紙幣なんか、一般には使えないじゃないか。店の中で、宝石や銀行券だけが空中に浮いて、もちろん、マジックショーじゃないぞ、俺がただ掴んでいるだけのことだが、どこかに行ってみろ。そりゃあ、誰だって、目を剥き、口をあんぐりと大きく開けて、顔色が蒼白になるくらい驚くだろう。もしくは、宝石や札束が、一日中、部屋にいたから、気が滅入って、気分転換に、外の空気を吸いに行ったのだろうと気に止めない人もいるかもしれない。そんな奴は、いないか、はっ、はっ、はっ、はっ。
店員やお客さんは、最初、驚愕のあまり、体の動きが止まっていても、そのうちに、この空飛ぶ紙幣を掴みに来るだろう。お金の管理に、第三者がいれば責任感の強い従業員や、長年の低金利政策で、利子の配当に不満を持っていた客が、これこそ、銀行の浮いたお金だと利子分を取り戻そうする者、ただ単に、空調のきいた部屋で涼もうと店に入った通りすがりの人が、俺にも、金運が振ってきた、週刊誌の占いも、まんざら、当たらないこともないなと思い、あわよくば、お金を持ち逃げしようとする者、お金目当てじゃなくて、この紙幣に乗って、遠くアラブの王様に会いに行きたいと願う者など、金を追ってくる理由は様々だろう。とにかく、俺は、そんなことはしない。手堅く、一歩、一歩進むだけだ。
おっと、前へ進むのはいいが、誰だ、俺の肩にぶつかっておきながら、謝りもせず、行き過ぎようとするのは。ふざけるな。一体どこ見て歩いてやがんだ。この俺が見えないのか。見えなくて、当たり前か、俺は透明だからな。だが、心配するな。この俺だって、風呂も入るし、トイレにも行く。風呂に入ると体だって洗うぜ。そんな時なんか、一発で捕まってしまう。それも裸のままだぜ。恥ずかしいたらありゃしない。透明人間のくせに裸がはずかしいのかだって。そりゃあ、恥ずかしいに決まっている。恥ずかしさは、文化の一つだ。自分の家で、風呂上りに、裸で、部屋中、歩き回っても、何も恥ずかしいことなんかない。かえって、開放感からか、気持ちがよい。その代わり、家の外だと、パンツも見せられない。まして、パンツを脱いだ人間なんて、すぐさま、御用となる。でも、大丈夫、留置場に入れられたら、ちゃんと、パンツぐらいは貸してくれるだろう。でも、そのパンツ、ちゃんと洗ったパンツなのかなあ。外で裸になる奴なんて、俺以外に五万、いや十万といるはずだぜ。そんな奴が履いたパンツなんて、俺は、履けないよ。どんな病気がうつるかもわからない。
 俺だって、実は、病気持ちだ。病気だって、普通の病気じゃない。透明人間自体が病気なんだ。でも、もし、俺の履いたパンツで、他の誰かに透明人間病がうつったらどうなるのだろう。まだ、体全体が透明化すれば、それはそれで、何とかなるだろうが、パンツを穿いた部分だけが透明化したらどうなるだろう。街一の繁華街、中央商店街をストーリーキングで闊歩しても、猥褻物を自主規制で隠している以上、当局からのお咎めはないだろう。返って、率先して、お上の指導に従っているわけだから、お褒めの言葉を頂くかもしれない。統治者たちは、片方で、規制緩和を勧めながら、片方で、自主規正と言う名の、無言の圧力をかけてくる。だが、人間、どちらに転んでも、状況に応じ、たくましく、強く、生きていけるものだ。
 いやに楽天的だって?この透明人間の俺にだって、心配事のひとつやふたつ、三つに四つ、五つに六つ、と手の指と足の指では、数え切れない以上の悩みや心配事はある。その点では、俺も、みんなと同じように、普通の人間なのだ。凡人の仲間さ。透明人間のくせに、凡人だなんて笑わせてくれるね、と思うかもしれない。でも、いいじゃないか、それぐらいの謙虚さがあったほうが、人間好かれるからね。仲間から、他人から、好かれるのが一番。普通の人間なんて怖いよ。少し目立つと、すぐさま、足を引っ張ってくる。人が活躍していると、必ず、弱点をついてくる。いかにして、他人を笑うことしか考えていないからね。自分を笑って、その場を盛り上げる芸当なんか、これっぽっちもない。ひたすら、他人をこき下ろして、自ら浮き上がらせ、目立たせようとする輩ばかりだ。
 そう言う意味で言えば、俺なんか、大丈夫。あまりに、変わりすぎていて、誰も相手にしてくれないし、誰も彼も俺を許してくれる。でも、俺だって、小心者だから、気を使っている。気を使っているのに、使っていないそぶりを見せるのが、プロ足るゆえんである。例えば、自分を笑うことで、なんとか、この表面上見える人間の世界に踏み止まっていられる。それを忘れるとあっという間に地獄行き。本当に相手にされなくなるからね。昔誰かの本で、読んだことがあるけど、「一人の孤独は寂しいけれど、二人の孤独は地獄だわ」っていうセリフには、泣かされるね。まさしくこうなっちゃうよ。詰まるところ、透明人間は、マイノリティとしての生きていくことが大変だということさ。
 もちろん、あなたたち、普通の人間も、大多数であるがゆえに、やれ個性だ、独自性が必要だとして、常に何かを求められている点で、生き辛い時代なのか知れない。いやはや、愚痴っぽくなってしまって、互いの傷を舐め合う有様になってしまった。さあ、独り言クラブは卒業して、仕事、仕事、俺が唯一、俺として存在できる場所へ行こう。
 さあ、着いたぞ。ここが、俺の事務所。俺の城。俺の館。俺の本陣。俺の本拠地。なんだって、普通の事務所じゃないかだって。見てきたような、本当のことを言うじゃないか。当たり前田の自転車屋。しまった、ここのところ、過去のCMを調べているせいか、古典的ギャグをかましてしまった。失礼。失礼。いくら、探偵が、透明人間だからといっても、事務所は、普通だ。事務所までもが、透明だったら、お客はどこに頼めばいいのかわからない。俺に頼みたい人がいて、念ずれば、すぐに出向ければいいが、俺は、別に、超能力者ではない。ただ単に、体が透明なだけだ。正真正銘、普通の透明人間だ。透明人間友の会のメンバーの一員だが、今まで、総会に行ったことはない。この広い日本に、百人以上も透明人間がいることは、会員メンバーからわかる。互いに、電子メールでのやりとりもしているが、実際に、年に一度、総会でも開き、全員集まって、名刺交換でもできればいいんだろうが、いざ、集まったとしても、全員が透明だから、集まったかどうかわからない。透明人間同志だって、お互いが見えないのだ。だからこそ、透明人間なのだ。体に、天狗印の透明になる灰でも塗っていて、必要な時に、透明になれれば、本当はいいのだろうが、生まれて方これまで、ずっと透明だったのだ。
 じゃあ、俺が、どうして、透明に生まれたかだって?それは、俺にもわからない。あんたたち、普通の人間だって、同じだろう。自分が、少し固めで、シャンプーした翌日は必ず、仁王のように先立ち、慌てて、毛を水で濡らし、香川オリーブガイナーズの帽子を被らなければならないような髪の毛に生まれてきたわけじゃなかったろう、また、まん丸お月様のように、いつも見開いていて、どうしてそんなに驚いているんですかなんて、初対面の人に言われるけれど、視力は、両目ともに、0.02。形あるもの、すべてがぼやけていて、世界が溶け込んでいるように見える目に生まれてきたかったわけではなかったはずだろう?また、ひもがついているわけでもないのに、人からは、ダンボと同じだね、ちょっと動かしてみてよ。空が飛べるはずだなんて、からかわれるような幸福の耳ぶたになりたかったわけでもない。
 次に、何、もう、いいって。せっかく、ここまできたんだ。鼻と口のことも紹介させてくれ。ちゃんと二つ穴はあり、呼吸するのにも、臭いを嗅ぐのにも、なんら影響はないのに、ほんの少し、低いというだけで、雨が降ったときに、水は溜りませんかなんて言われる、世界にひとつだけの鼻。ああ、空気を吸い込まないでくださいよ、あたり一面が酸素欠乏になって、頭がふらふらするじゃないですか。あなただけの空気じゃないんですよ。タダだと思ったら、大量消費するその性格何とか直していただけませんか。それよりも、早く、早く、救急車をコールしてくださいよと言われるようなおちょいぼ口からは程遠い、大きな口。すべて、生まれてきたあなたが選んだわけじゃない。あなたのせいではない。なのに、全てが、あなたの責任のようになすりつけられる。
 えー、今、言った項目すべて、あなたには当てはまっているのですか。それはすごい。それならば、この透明人間の私よりも、希少価値がある。ここからの主人公はあなたに変わるべきだ。「少し変わった、普通の人の憂鬱」なんて題は、どうだろう。残念ながら、職業が探偵じゃないから、辞退しますだって。俺だって、好きで探偵になったわけじゃない。自分の特性をフルに活かせる仕事が無いかと思って、この仕事を選んだわけだ。いや、またまた、失礼。本当のことを言おう。ほかに、食っていく手段がなかったんだ。とにかく、私が言いたいことは、結局、透明人間も普通の人間であり、なんらあなたたちと変わらない。ひょっとすると、今、この文章を読んでいるあなた以上に普通なのです。そして、透明であることは、ひとつの特徴ではあるが、それをもって、特別扱いをして欲しくないということだ。
 話は、長くなった。本来の、ストーリーに戻ろう。このまま、あなたと話をしていたら、私はあなたの世界にはいりこんでしまうだろう。ほら、誰かが、肩を叩いている。でも、振り返っても、誰もいない。そう、透明人間の私がマッサージをしているのです。なんて、誰も怖がらないか。
 さあ、話に戻ろう。事務所には、ちゃんと、受付嬢もいる。名前は、宮崎 久美子。愛称、クミちゃん。仕事の段取りはすべて彼女に任せている。クライアントからの連絡もすべて彼女。だって、透明人間の俺が、電話ならいいが、直接応対したら、相手は驚いて、事務所から逃げ出してしまう。仕事が、また、一件、青い鳥のように、空高く、逃げ出してしまう。そうなると、驚くのはこちらの方だ。せっかくの顧客がただ驚くだけ驚いて逃げてみろ。俺は何のために仕事をしているんだ。この事務所は幽霊屋敷じゃない。ただ単に、驚いて逃げるのだったら、木戸銭や賽銭代わりに、金ぐらい置いていって欲しいと言いたいね。事務所の維持費だって馬鹿にならない。
 そんな理由だから、客の相手は、基本的には、全部彼女任せ。もちろん彼女は透明人間じゃない。ちゃんとした普通の人間。何がちゃんとしているかと言えば、目も、鼻も、口も、耳も見えているという点だ。鼻にシリコンを入れて、少し高くしていること、まぶたを二重にしていること、顔のえらを気にして、ほほ骨を少し削っていること、その他、原型が分らなくなるくらい、整形していること、それは俺の知ったことじゃない。面接したときには、既に、この顔だったし、俺は、他人の顔を、いや、過去を問わない主義なのだ。待てよ、今、いい事を、思いついたぞ。透明人間の俺が整形手術をしたらどうなるんだろう。物体として存在するが、他人には見えない、他人には気がつかない顔を気にして、どうなるかだって。それは、それ。これは、これだ。透明人間じゃなくても、存在自体が透明な奴は、たくさんいる。そんな奴に限って、化粧が妙にうまかったり、服選びが入念だったり、アクセサリーを、手の指から、首、耳、鼻、果ては、おへそなど、体中に穴を開けてまでも、身に着ける。透明人間の俺からしてみれば、誰も、あんたに注目していないよ、気にもかけていないよ、あなたこそ正真正銘の透明人間だと叫びたくなる。
 おっと、あれこれ、無駄口を叩いている間に、俺の事務所に到着だ。お城の門が、いざ開かれん。開け、ドア。宝は、そこに。姿は見えずとも、音が俺の存在を誇示してくれる。
「おはようございます。」
 おっ、いつ聞いてもいい響きだ。朝でも、昼でも、夜でも。いつでも、年中、クミちゃんは、「おはよう」の言葉を掛けてくれる。俺が事務所に入ると、いつも、さわやかな挨拶で迎えてくれる。透明人間の俺にとっては、かけがえのない友人で、理解者で、仕事のパートナーだ。彼女は、俺が見えている訳じゃない。俺が部屋に入ってきたら、雰囲気でわかるそうだ。まあ、長年一緒に仕事しているから、通勤途上のカフェで、モーニングをしっかりと食べて、脳に炭水化物のパワーが充満していれば、朝飯前じゃなく、朝食後に、最大限の能力を発揮できる。もちろん、ひとりでに、ドアが開き、そこに誰もいなければ、俺(透明人間)だってわかるのは、当たり前の話だが。
「今日は、朝から暑いですね。冷たい麦茶をどうぞ」
 俺は、ありがとうと礼を言い、一気に飲み干す。
いいね、いいね、昨今の、男女雇用機会均等法とやらで、会社では、女性社員がお茶を入れてくれなくなったらしいが、この会社では、社長である俺に、お茶を入れるという習慣が残っている。もちろん、二人しか、いないのだから、どちらかがお茶をいれるのは当然か。その代わり、このあと、俺が、クミちゃんのために、コーヒーをいれる。社長だからといって、威張っているわけにはいかない。二人しかいない以上、お互いの気持ちを思いやることが大事だ。法律以前の、一般常識、道徳だ。おっと、朝から、自己中心で、他人を思いやるという意識が欠けてきている、現在の日本人に対する、怒りや不満の気持ちが高ぶってきた。あまり感情を爆発させすぎると、体までが膨張し、漫画の超人のように、着ている服を破りってしまう恐れがある。冷静に、沈着に、裸の体と心を冷やそう。
 落ち着いてきたところで、さあ、着替えだ。俺は、事務所にくると、ワイシャツをはおり、ネクタイを締め、背広を着こなす。窓口では、クミちゃんが対応してくれるが、込み入った話になるとそうもいかない、俺が直接、対応する。決して、部下に投げたりしない。功績は部下に、責任は上司が、これが、俺のモットーだ。それに、秘書のクミちゃんだって、俺が服を着て実存化しないと、相談をしようにも、どこに向いて話しかけるか迷ってしまう。狭い事務所の中で、二人かくれんぼしても仕方がない。俺の方だって、服を着ることで、何か、自分が一社会人として認められたような気がする。裸の王様じゃなくて、服を着たい透明人間。何だか、変だね。
「先生、今日は、午前十時に予約がはいっています」
 先生か、少しその呼び方は、照れくさいので、クミちゃんには、何度も、やめてくれるよう話をしたが、「だって、先生は、探偵でしょう?今は、透明、いいえ、無名だけれども、そのうちに、警察も匙を投げた迷事件を解決し、有名になるのに決まっています。その時になって、急に、先生と呼んだら、何だか、舌が回らない気がするんです。だから、今のうちに、先生と呼んでいたいんです。先生は、私の誇りです」とまで言われたら、俺として、「はい、わかりました。クミちゃんのおっしゃるとおりにします」としか言いようがない。
 さて、今日の相談者か。自分だけでは解決できない仕事や家庭の問題を、困り果てた末に、探偵の俺に相談したい人が、土曜・日曜日の休みが明けるのを心待ちにしている。本当に、ありがたいことだ。今週もいいことがあるように願って、早速、彼女が事前に、クライアントから話を聞いて、調書にしてくれた書類に目を通す。何、なに。今朝一番の客は、八十過ぎの女性か。相談内容は、亡き夫のこと。まさか、黒魔術か、ブードー教の秘術を探し出して、死んだ夫を、ほんの三十分でもいいから、生き返らしてくれというわけじゃないだろうか。生き返った人間に、庭の片隅に埋めたはずの、金の延べ棒やダイヤモンドを始めとする宝石などの財宝のありかを尋ねるとか、五十年前の、浮気の証拠を突きつけて、自分があの世に行く前に、いくらかでも有利になるように、とっちめてやるとかじゃないだろうな。まあ、まだ、依頼者が来るのには、一時間も余裕がある。とりあえず、最初の三十分間は、今日一日のこと、今月のこと、今年一年のことを、ゆっくりと考えよう。探偵稼業は、マクロ的視点で物事を見ることも必要だが、魂のあるまま、空に舞い上がり、俯瞰的立場で、見渡すことも必要だ。とかく、仕事に埋没して、蛸壺人生を見直すことが、自分だけじゃなく、お客様にもいい結果をもたらすことになる。と、思った瞬間、
 突然、ドアが開く。いい試みには、必ず邪魔が入るものだ。クミちゃんの顔があせっている。
「先生、クライアントの方が来られました。予約よりも少し早いのですが、よろしいですか?」
 さすが、クミちゃんだ。予定よりも早く来たクライアントを責めるわけでもなく、思索中を妨害された俺にも気遣ってくれている。しかし、人生は、いつもこうだ。一度、自分のことをゆっくりと考えなければならないときに限って、早急の用事が舞い込んでくる。その解決を巡って、また、ドタバタが繰り広げられ、バタンキューの音が鳴り響き、大地と顔面キッスをしたかと思うと、あの世行きだ。透明人間の俺に残せるものは何がある。とりあえず、自分のことはさておき、俺は、急いで、身支度にかかった。見えない体を、見えるように背広で覆う。その代わりに、俺の心に、仕事バージョンの鎧を身に着ける。ついでに、声色も七色に変えて、
「さあ、お入りください」
 ゆっくりとドアが開く。緊張の一瞬だ。これまで何人の人が、この事務所を、俺の相談室を訪れただろうか。何度経験しても、最初に訪問者と出会うときは、心がキュッとこわばる気がする。心臓が、血液を送るのを、迎えるのを、一事、停止するような気がする。息詰まるこの瞬間。いざ、いでよ。気分が高まっているのに、クライアントの姿は見えない。静寂のひと時。一体、何がおこるのか?誰が現れるのか。嵐の前の静けさ。嵐を期待しているわけではない。口の中が、カラカラと乾いてきた。音がするわけでもないのに、カラカラとは、変な表現だ。昨日の浴びるほど飲んだビールがまだ残っているのか。脱水状況から、脱却を図る。とにかく、お茶を一杯口に含む。ドラム式洗濯機のように、ごろごろ、ごろごろ、ごろごろ、ごろごろとお茶を口の中で回転させ、吐き出すことなく、喉に流し込む。少し、生温かい。唾液の準備は整い、亀裂のはいった大地は、緑の種子の到来を待ち望んでいる。固唾を飲んで、見守る。
 その時、一台の、車椅子が、舞台の下手から、部屋の角にぶつかりながら登場してきた。貧乏探偵社のため、障害者には、やさしくない間取りである。人が喜んでもらおうとしている事業なのに、(俺だけが慈善活動のつもりでいる)人にやさしくない事務所で業務を執り行うことは、如何なものか。あこぎなまでもして、利潤を貪り、表面上は、人にやさしい、親切だということを表に出したほうがいいのかどうか、悩むところだ。椅子に座ったまま、腕を組んで思案顔の俺に、来訪者は語りかけ始めた。
「探偵さん、もう、あたしのために心配してくれているんですか、本当に、ありがとうございますねえ。でも、まだ、何もしゃべっちゃいないのに、そんなに難しい顔されたんじゃあ、解決できない仕事を頼んだようで、言い出すのが難しくなっちゃいますね」
 調書で読んだとおり、八十を何日か、何ヶ月か、何年か過ぎた女性が、俺の目の前にいる。顔には深い皺が刻みこまれて、笑っているのか、怒っているのか、第三者には、認識しがたい。あの皺に、鉛筆を差し込んだら何本挟めるのだろう。五本、十本、いや、百本か。そんな馬鹿な。顔中、鉛筆ミサイルだらけとなる。隣国のポテドンが飛んできたところで、鉛筆やりで、見事打ち落とせそうだ。それとも、「顔に鉛筆はさみ百本、ギネスに挑戦」に参加するように、推薦してみようか。それほど、目の前のクライアントの皺には、何か、俺を妄想の世界に引き込む強い力がある。グランドキャニオンじゃないけれど、顔の皺の谷へ落ち込んでしまいそうだ。落ち込んだら最後、二度と、この世には戻れない。残りの人生を、老婆の皺の中で過ごさなければならない。「皺の男」そう、今日から、俺を皺の男と呼んで欲しい。老婆の皺に包まれて、安楽な日々を過ごしたい。いかん、いかん、とんだ白昼夢だ。俺が、まじまじと、しかも、呆けた様に、老婆の顔を見つめていると、
「探偵さん、あたしの相談ってのは、そんなに難しいものじゃないですよ。優秀な探偵さんなら、ちょちょいのちょいで、解決してしまうもんだと思ういますよ。これから、あたしが話すことを聞き終えた瞬間には、多分、自動販売機の缶ジュースのように、答えが転がり落ちているでしょうねえ。その缶ジュースを飲み干したとき、あたしの問題は解決しているんでしょう。それじゃあ、話しますよ。いいですか?実は、あたし、冷たいようだけど、あの人が死んでから、いっぺんでも夢であの人のことを見たことがないんですよ。何故なんでしょうねえ。あら、ごめんなさい。あの人だなんて、言ったところで、探偵さんにはわかりはしないですよねえ。つまり、この人ではなく、その人でもなく、結局、どの人なんでしょう。顔までも、忘れてしまいましたよ。最近、もの忘れがひどくなってしまい、自分が今さっきしゃべったことさえ忘れていくんですよ。そして、しゃべったかどうか、口を動かしたかどうかせも忘れてしまうんですよ。例えば、映画で、主人公の乗っている列車が、猛スピードで駆け抜けている。敵が、主人公の命を狙って、飛行機から列車を攻撃します。だけど、ミサイルは必ず、列車には当たらず、列車が通り過ぎたレールに命中して、線路がどんどんと崩れていく。そんなハラハラドキドキのシーンがありますよね。まさに、その場面のように、あたしの記憶が消えていくんですよ」
 老婆の一人芝居が続く。
「もちろん、あたしの記憶が失われていくことに対して、周りのみんなが、心配して、ベッドの傍で、あたしの手を握り締め、固唾を飲んで、見守っていてくれるなんてことはないし、まして、ガンバレ、ガンバレの応援の声も期待しちゃいませんけど。とにかく、そんなようなものです。あら、話が、昔のレコード盤のように、数十秒飛んで、その間の台詞がわからなくなっちゃったみたいね。あたしの記憶がすべて消え去ってしまうまで、あと残された日は、何日でしょう。人は、どこからともやってきて、地球という仮の宿で、三万泊三万一日程度過ごし、再び、どこかへ旅立つんだと例えられるじゃないですか。それなら、あたしの宿泊日数は、あと何日でしょうねえ。それが何日だろうとしても、一日一日を大事に積み重ねて、人生という名の航海を無事終えたいものですよ。そう、そう、話はあの人のことですね、あの日、あの頃、あの場所で、あの時間に、あの人と出会ったんです。つまり、夫であり、旦那であり、主人であり、相棒であり、相方であり、パパであり、いい人であり、よくなかった人であり、最終型として、遠くへ行ってしまったあの人なんですよ。指示語じゃ、わからないですよね?名前ですか?そうね、名前はあったかと思うけど、今となっては、位牌の十文字が、あの人の存在した証拠じゃないんですか。でも、あたしゃ、位牌なんてはいりはしない。葬式なんてして欲しくない。まして、あの人と一緒にお墓に、仏壇にはいるなんて、想像すらできないですよ。つまり、最近、それぐらいあの人のことを毛嫌いして、四十数年間、一緒に暮らしたはずなのに、思い出のひとつも夢の中に出てこないんですよ。あの人との記憶の扉を封じ込めて、思い出すことを拒否しているんでしょうかねえ」
 老婆の一人上手が続く。
「だからと言って、あたしは、ひとでなしなんかじゃありませんよ。それよりも、あの人こそ、ひとでなし、鬼畜生、糞くらえですよ。あら、ごめんなさい。つい、感情的になって、私の中の男の部分が出てしまいました。でも、若い頃なんか、あの人に、口に出せないほど、ひどい目にあわされて、いつ別れようと思ったかわかりませんよ。仕事から帰ってくると、既に、酔っ払っているし、食事のときは、一升瓶を片手に、酒をつまみに、酒をあおる。ちょっとでも、あたしの作った料理が気に入らなければ、ちゃぶ台をひっくり返す始末。でも、あたしだって、負けはしませんよ、ひっくり返されたお茶碗をあの人に向けて、投げつけてやりましたよ。あの人、酔っ払っていても、運動神経はいいから、お茶碗は見事によけたけど、先を見通す能力はないから、中に入っていたご飯はよけきれずに、顔に当たっちゃいましたよ。今で言う、パイ投げみたいなもんですかねえ。へへーん、ざあまあみろですよ。あら、ごめんなさい。また、心の中の男が出てきた。まあ、別に、あの人のことを思い出したいわけじゃないんですが、あたしもそろそろ年だし、あの世に行く前に、もう一度、あの人に会って、喧嘩のひとつも遣り合いたいんですよ。それなのに、あたしがあの人のことを思い出さないのは、夢の中であの人を落っとこしちまったんじゃないかと思うんですよ。あの、探偵さん、私の夢の中の、あの人を探し出してくれませんかね。探し物は、夢の中ですよ、うっふふふー」
 やめてくれ、八十の婆さんの投げキッスなんか、まともに受けられない。近くにある扇子で、打ち返してやる。俺が透明人間だとしても、実体はあるわけで、感情だってまともに受けざるをえない。見た目だけの透明なんて、本当の透明じゃないのかもしれない。ガラスと同じだ。傷つくこともあれば、割れることもある。ただし、俺は、お取替えできない。持ち運びには、天地有用で、やさしく取り扱って欲しい。とにかく、今日は、なんて日の始まりだ。夢の中のじいさんを探し出してくれないかだって、SF小説か、SF映画じゃあるまいし。
 たしか、昔、見た映画の中で、サイコピラーが、自閉症の子供を助けるために、頭にヘッドギアを装着して、依頼者の脳の中に侵入する映画を観たことはあるけど、俺の事務所には、そんな、機械はない。もし、万が一、そんな夢物語みたいな機械が入手できたとしても、俺が、あのばあさんの頭の中に潜入したいとは思わない。夢の中のあの人を探してくれなんて、ちょっと洒落ているけど、現実には、無理だし、どちらかと言えば、精神科医や保健師、心の相談員にでも話をしたほうがいいんじゃないか。俺は、そう決断し、ばあさんにやさしく語りかけた。折角の客だが、出来やしないことまでも、請け負うわけにはいかない。透明探偵の名に恥じる。
「お客さま、亡くなったご主人さんのことを探してくれとおっしゃいますが、十分、ご主人さんのことを思い出されていますよ。特に、夫婦喧嘩のことについては」
「あら、そうだわね。つい、興奮して、思い出しちゃったよ。ありがと、探偵さん。また、どっかにあの人を落としてきちゃったら、探偵さんの所へ来ますよ。」
「いえいえ、どういたしまして。遠慮なく、おいでください」
 老婆は、喜びを隠せない表情で、車輪付のキントン号に乗って、部屋から出て行った。俺も老婆も、クミちゃんも、この世の人全てが、お釈迦様の手のひらで、右往左往しているのじゃないだろうか。探し物は、見つけたいのか、見つけたくないのか。答えが見つからない。

 老婆の相手をしている間に、あっという間に、昼となる。お腹が背中にくっつきだした。あまりに、すきっ腹になると、お腹が背中を突き抜け、俺を向こう側の世界に無理やり連れ込むおそれがある。そうなれば、傷害致死の犯人として、俺のお腹を俺が逮捕しなければならなくなる。自分で自分を処分する。自画自賛じゃなくて、自我崩壊だ。そんなことが起こらないように、その前に、年の功で厚くなった面の皮じゃなく、不平不満のガスで充満した腹の皮を、引っ張り上げる。例え、その姿が不恰好だとしても、透明のお腹と背中は、誰にも見えないはずだ。状況に応じて、欠点も長所となる。今日一日、また、賢くなった。昨日よりも、今日。今日よりも、明日。明日、天気になあれだ。ひとまず、安心。安心すれば、よけいに腹が減る。腹が減ると、背中を突き抜ける。どうどう巡りで、お馬が通る。
 その時だ。突然、俺の右腕が痛み出した。左腕で右腕を握る。猛烈な痛みだ。痛みに耐えかねて、こんな腕なんか引きちぎってしまった方がいいと思えるほど、我慢しかねた時、苦痛が治まった。必死の形相に微笑が戻る。つぶっていた目を開けると、そこには、俺の手が、俺の右腕が見えていた。そこには、俺の右腕が宙に浮き、ブランウン運動のように、ブランコの揺れるように、ぶらんぶらんとしている。遺憾、遺憾、何のひねりもない、直接的過ぎる表現だ。もう少し、カーブか、シュートか、ホークか、消える玉か、隠れた、粋な、言い回しが必要だ。これでは、おやじギャグならぬ、おやじ言葉だ。
 それは置いておいて、俺の右腕の話に戻る。ちょうど肩の付け根の所からくっきりと、右腕が見えている。もちろん、生まれて初めて、俺の右腕を見るわけだから、本当に俺の右腕だかどうだか分からない。ただし、指を曲げろと俺の脳が指示すれば、ちゃんと指は動く。俺の頭をかけと命令すれば、ちゃんと腕をあげ、指が俺の頭を掻いている。こうした状況から判断すると、やはり、この見えている右腕は俺の腕だ。うれしい反面、待てよだ。待て、待てだ。右腕が見えるということは、俺は、透明人間ではなくなったということだ。いや、違う。一部透明人間だ。八割、九割、透明人間だ。俺は、普通の人間でもあり、透明人間の仲間である。集合の円を描けば、ちょうど両方に重なっている部分だ。そんなこと言っている場合ではない。今後のことを考えないと。この右腕が見えたままの状況で、このまま探偵の仕事を続けられるのかということだ。
「先生、どうしたんですか。」
 俺の苦痛を耐え忍んだ呻き声を聞きつけたのか、クミちゃんが、部屋に入ってきた。
「いや、なんでもない。こともない。これを見ててくれ。私の右手だ」
 俺は、取って付けたように空中に浮かんだように見える、俺の右手を空高く差し出した。
「あら、右手じゃないですか。色でもぬったんですか。それとも、手品ですか。ひょっとしたら、マネキンに人形だったりして。先生も、人が悪いですよ。それとも今、殺人事件の犯人探しをしていて、トリックがわかったのですか。それなら、そうと、私を、ワトソンさんとか、眠りの小五郎とか、呼んでいただけません」
 色を塗ったんじゃないし、手品でもない、まして、殺人事件でもない。手品なら、ハンカチぐらいかけて、相手に期待をいだかせるよう、おもむろに見せるはずだ。こんな、素っ頓狂な見せ方なんかしない。殺人事件だって、俺が、そんな、危険な目に合うよう場所に行くわけがない。透明人間、危うきに近づいたとしても、相手は、俺をわからない。少し、悦にいる。いかん、いかん、俺は、何を考えているのだ。体は見えるが、心は透き通るほど純粋なクミちゃんに八つ当たりをしてはいけない。それとも、体が透明な分だけ、心が曇っているのか、俺は。二兎追うものは、両手に空虚。神は、全てを与えたま給わん、奪い給わん。この、無いものねだりの、あればあるだけ強欲となる唐変木よ!ちゃんと見えるんだ、この右手が。俺は、もう一度、クミちゃんに説明した。今後の、探偵稼業のことについても。
「いいじゃないですか。おめでとうございます。大丈夫、大丈夫。あら、私、何を言っているのかしら。とにかく、驚いちゃって、片言の単語や感嘆符でしか話せなくなっちゃったって。でも、同じ言葉でも、イントネーションの強弱や振幅具合によって、真実の感情が表現されていると思います」
「いいよ、いいよ、君のせいじゃない。まあ、色を塗ったと思えばいいか。ただ、これから探偵事業を継続するに当たって、まず、第一に、尾行が困るな。右腕だけ、見えていたんじゃあ、頭隠して、尻隠さずじゃあないが、尾行していた相手に悟られてしまうし、それより、右腕だけ空中浮遊していたら、殺人事件じゃないかと思って、警察に通報されてしまう。「飛ぶ右腕、中央商店街に現れる」の大見出しで、マスコミのけっこうのえじきとなる。
 うーん、何の保証もないけれど、まあ、なんとかなるか。このお気楽さが、俺の欠点でもあり、長所でもある。ただ不思議なことに、物事は、全て、見方によっては、二通り以上の捉え方がある。いい面もあり、悪い面もあり、どうでもいい、普通の面もある。主体は、屹然として存在しているのに、客体の考え方、見方一つで、栄枯盛衰の結果が待っている。俺は、主体だ、自らが存在するためには、相手を客観的に攻撃しなければ、こちらがやられてしまう。相手の攻撃を避けるためには、自らが透明となる必要がある。俺の右手よ、存在から、無存在へ戻っておいで。あの右腕が欲しい!

あなたの笑顔に魅せられて(2)

あなたの笑顔に魅せられて(2)

透明人間として生まれた主人公が、透明の特性を生かし、私立探偵として客の依頼を解決するに従い、透明だった体を取り戻す話。第二章 ある日の月曜日

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-09-19

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