暇潰しの世界征服
*五時奪字にご注意下さい
*意図しない形での他作品との一致は偶然の産物です。ご理解下さい
幼児向けのテレビアニメやマンガの悪役は、決まって『世界征服』を企てている。
それを阻止する為に、主人公は仲間達と共に、悪役に立ち向かい世界の平和を守る。
しかし…だ。
「何で悪役は『世界征服』なんてハードモードな目標を掲げるんだ?」
学校の昼休み。よく晴れた日の屋上で、俺は隣の友人に呟いた。
友人は購買で買った菓子パンの袋を開けて、かぶりつく。
「知らんよ。嫌いな奴でも居たんじゃない」
「そんなまさか。それなら、そいつを殺すだけで全てが解決するだろう」
『殺す』、と言う単語に近くで昼食をとっていた女子達が驚き、目を丸くする。俺は彼女達にヒラヒラと手を振り、握っていた紙パックのジュースを飲み干す。
「やっぱりさ、その世界が気に入らなかったんだと思う訳よ。だからこそ、世界を、自分色に染め上げる為に世界征服を企むのさ」
「ほーん」
友人は興味無さげに返事をして、黙々と菓子パンを咀嚼する。
「じゃあ、お前はこの世界が気に入ってるか?」
「え、…俺?」
「この世界が好きって奴は多分、数えるぐらいしか…。いや、居ないかもしれないな」
「何でさ」
「『全人類皆平等』とか甘ったれた言葉があるけど、大嘘だからさ。
誰かの犠牲の上に豊食が許され世界。
誰かの真実の上に虚言が有る世界。
誰かの不幸の上に幸福が成り立つ世界。
そんな世界を、誰が好きになれる?」
友人は菓子パンの空袋を丸めて青空に放り投げた。
俺が友人の言葉の意味を理解しようと悶々としていると、友人は笑った。
「おいおい。難しく考えるなよ。
つまりは、『そんな世界ぶっ壊す』って感じで悪役たちも『世界征服』を始めたんじゃないか?」
「なるほど…」
いつの間にか、近くの女子達は居なくなっていた。屋上には俺と友人の2人だけ。不思議に思っていると、昼休み終了を告げるチャイムが響いた。
「んじゃ、俺達も『世界征服』を、始めますかね」
そう言って友人は寝転がった。その意図が分からず、俺は困惑するだけだった。
「『気に入らない世界』を『ぶっ壊す』…。
つまり、5限はサボるってことだ」
「あぁ、そういうこと」
俺は苦笑して、その場に座り込んだ。澄んだ青空を見上げて、授業開始のチャイムを聞く。
「…無駄な足掻きかもしれないけど、それでも今を生きるために俺達の『世界』を『征服』するか」
小さくも大きな反抗。それは立派な『世界征服』だった。
暇潰しの世界征服
*物書きから離れ過ぎていた為のリハビリ作品です