アンテナ

落ちている時、窓の外からオフィスの天井が見えた


窓に反射した自分が見えた


目は合わなかった


クリスティーナはアンテナが欲しかっただけなのだ


そうして、飛び降りた


彼女は落ちている間、初めて気づいたことがあった


自分の頭にアンテナなど付かないということ



めまぐるしく変わる視界



飛ぶ前は、あんなに色褪せて固まったような景色が

いまは色鮮やかに変化しながら、自分を囲って笑っている



初めて聞いた音だ

初めて見る世界だ


そうか

アンテナなんか無くても、知る事ができた


そう思う途中で、ものすごい音がした


クリスティーナは八方に飛び散った


なるほどこれも初めてだ

地面に飛びついて、不思議な、圧倒的な力で地面を愛せよと空に言われているようだった



すぐにまた、静寂と共に元の世界に戻った



またクリスティーナは無視されている


さっきまで自分を見て笑っていたビルも木も雲も、何事もなかったように、ただそこにいる



自分の「部分」と、嘘のように静まりかえった景色を交互に眺めながら

全てを思い出せなくなる直前に、
もっともっと高いところから、ゆっくりと落ちてくれば良かったと後悔をした

アンテナ

アンテナ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2018-05-21

Copyrighted
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