アンテナ
落ちている時、窓の外からオフィスの天井が見えた
窓に反射した自分が見えた
目は合わなかった
クリスティーナはアンテナが欲しかっただけなのだ
そうして、飛び降りた
彼女は落ちている間、初めて気づいたことがあった
自分の頭にアンテナなど付かないということ
めまぐるしく変わる視界
飛ぶ前は、あんなに色褪せて固まったような景色が
いまは色鮮やかに変化しながら、自分を囲って笑っている
初めて聞いた音だ
初めて見る世界だ
そうか
アンテナなんか無くても、知る事ができた
そう思う途中で、ものすごい音がした
クリスティーナは八方に飛び散った
なるほどこれも初めてだ
地面に飛びついて、不思議な、圧倒的な力で地面を愛せよと空に言われているようだった
すぐにまた、静寂と共に元の世界に戻った
またクリスティーナは無視されている
さっきまで自分を見て笑っていたビルも木も雲も、何事もなかったように、ただそこにいる
自分の「部分」と、嘘のように静まりかえった景色を交互に眺めながら
全てを思い出せなくなる直前に、
もっともっと高いところから、ゆっくりと落ちてくれば良かったと後悔をした
アンテナ