パープルドック×交差する思い
異変
「はい」
「「私、佳苗…」」
「遅せえよ。何処にいんの?」
「「ごめん。撃たれた…」」
「は? 何処にいんの?」
「「ごめん。ディスク取られた…」」
「おい! 聞いてんのか。何処にいんだよ」
「「ごめんね…」」
「ディスクは後で取り戻せばいい。だから、何処にいんだよ」
「「ごめん。ごめんね…」」
佳苗は呟き、それ以上何も言わなくなった。
「クソッ」
隆利は一晩中捜し回り、公園の角で漆黒の闇に赤ランプが光っていた。
まさかな…。
近づいて行くと電話ボックスを取り囲むようにパトカーが数台集まり人だかりが出来ていた。
佳苗…。
そこには電話ボックス内で血を流し死んでる佳苗がいた。ドアにもたれ掛かる佳苗は微かに笑っているようにも見えた。
今直ぐ佳苗に駆け寄りたい気持ちを押さえ、隆利はじっと佳苗が担架で車に乗せられるのを見届けると、動こうとしない足を殴りその場を後にした。
隆利は後悔していた。佳苗を仲間に加えた事を。佳苗を助けれなかった事を。
簡単なはずだった。
ある企業から奪われたディスクを取り戻すだけのはずだった。
なのに何で佳苗が撃たれたんだ。
やったのは全部俺だぞ。
佳苗にディスクを渡すべきじゃ無かったんだ。
でも、どうして佳苗が持ってるって分かったんだ?
何かがおかしい…。
-end-
調査
とある公園の電話ボックス内で17歳の少女の死体が見つかった。
死因は銃で撃たれた事による出血死だった。
新前の新藤刑事は一人暮らしをしていた宮前佳苗の部屋に行くと違和感を感じた。綺麗な部屋と言えば綺麗な部屋だった。でも、そこに宮前佳苗が住んでいたのかと聞かれたら分からないと答えるだろう。その部屋には宮前佳苗が生きていた『痕跡』や『証』が何もなく、殺風景とも言えるほど雑然としていた。女の子向けの可愛いキャラクターグッズもなく、ただあるのは学習机とタンス、ベッド、それに机の上の白紙の日記だけ。…最後のページに赤で『パープルドック』と書かれていた。
宮前佳苗を調べ出して十日が過ぎ、新藤は人がごった返す街中の交差点を歩いていると、突然、背中に押し当てられた何か感じ、それが何なのか直ぐに察しが付いた。振り返ろうとする新藤に「振り返るな、騒ぐな」と冷ややかに少年は告げた。
「何のつもりだ。俺は刑事だぞ」
「だから? 死にたくなかったら、これ以上佳苗の事件を追うのはやめろ」
「佳苗…宮前佳苗の事か?」
「あぁ」
「知りたくは無いのか。彼女を撃ったのが誰なのか」
少年は口ごもる。
「じゃ…」
「奴らは俺が殺る。あんたは関わるな」と言うと少年は人込みに消えて行った。
「何だったんだ。今のは…」
脅し…。
警告…。
どっちにしろ新藤は再び宮前佳苗の事件について調べ始める事にした。
-end-
パープルドック×交差する思い