吐いても吐いても吸っても吸ってもどこまでも人間な人間

吐いても吐いても吸っても吸ってもどこまでも人間な人間

アホボケカスナス

精神にも世界がある。地と海がある。歩くことも泳ぐことももちろん可能だ。
今、その中で溺れている。
広い言葉の海の中で言葉を探している。
呼吸もうまくできない環境の中、視界を埋める言葉を1つずつチョイスし、真剣に記憶するが、徐々に徐々に脳内でとろけていく。
探していた言葉はいつのまにか必要なくなっており、脳をいくら言葉で満たしても、満足できない。

今の自分に必要なのは人だと思った。
大陸から大陸に渡り歩いていく。
人らしき影はあるが、溜め込んだ言葉を吐き出せるほどの影はない。
ここまで溜め込んでしまっていると、並大抵の影じゃ抱え込んでくれない。
甘えられるのであれば抱えて欲しいのだ。
完璧な人を探して歩いているうちに、気がつけば元いた船乗り場まで戻っていた。

自分がもう1人いたらいいのにと考える。
その自分は都合がいいことに、普段は空っぽなのです。
その入れ物に言葉を詰め込んでいく。
そうすれば一緒に共有できる。
何ならその入れ物に全てを預けたい。

だけどそんなことをしてしまうと、今の俺が空っぽになり、入れ物になる。
次第に空っぽだった俺は自我を持ち始めるようになり、俺は次第に自我を失っていく。

そうならないように、精神にも空想にも、もう1人の自分は極力作らない。

そうして時間が経ち、少しずつ流れ落ちていった言葉。
大体はここでこぼれ落ちてくれるのに、たまに残ってしまう。

ここで残った言葉は闇になる。
2度と俺の口からは解き放たれない。
俺とともに沈んでいく。

そうして闇が溜まった心、体、精神は、昼夜が一変する。

2度と朝の来ない闇の中で暮らすことになる。
目がなれることもない完全な闇の中で、俺は横たわっている。

そうなってしまっては、現実(こっち)の俺も、精神(あっち)の俺も、深く虚ろな目で生きていくことになる。

俺はそういった状態のことを『生』と認識はしない。

つまりはもう2度と会うことのないわけさ。
さよなら。さよなら。

吐いても吐いても吸っても吸ってもどこまでも人間な人間

吐いても吐いても吸っても吸ってもどこまでも人間な人間

「これは2度目のさよならさ」

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-05-20

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