この世とあの世

この世とあの世

死んだ後にまた人間として生まれ変わる事はできるのです。もし人間として生まれ変われたら、あなたはどんな人間として生まれ変わりたいのですか。
救世主として生まれ変わりたいとそのように思いますわ。この地球上で稀に見る傑物を創作して人類を救いたいのです。
他の人間と同じような事はしたくありません。他の人間ができないような事をしたいのです。
死後の淡白い儚き世界へと魂がふわっと浮遊する臨死体験とは一体どのような感覚なの。
今生きている人間は確かにあの世の世界を信じています。あの世の死後の世界に行き、私のずっと会ってみたくて会えなかった人間と、これからやっと会えるのだわ。
実際にお会いして、様々な貴重なお話を聞いたり、その方が弾く天才的な世紀の演奏を直に聞いてみたいのです。
そしてこの世にふわっと舞い戻りあの世であったでき事を教会の白い修道女に報告するのです。
あの世には誠に可憐で美しい天使の子供達がいたのです。そのようなこの世にはいない人間と実際に付きあえてお話しができた喜びは、何てこの上ない体験なのでしょう。
ふふっ、このような体験をするためには、この世界で一度死ななければならないのかしら。

やはりこの世には生老病死の苦しみがありうまくいかない現実があるのです。
だからこそ、あの世の悦に満ちた至上に幸せな生活に思い焦がれる。
あの世で生きる苦しみが無く全く泰然と安心立命して生きれる事に憧れます。
でも、もしかしてこの世でもそのような神秘な体験ができるのではないかしら。
この世にはまだまだ人間には知られていない美しい抒情の印象世界でぴょんぴょんと跳び跳ねる芸術の最高傑作の数々があります。
だからこの世も捨てたものではないの。
さあ、あなた、この世とあの世とどちらがいいのでしょう。

この世の方がいいに決まっています。あの世と比較しても変わりばえのない体験がこの世でもできるのですから。
さあ、この世であの世の至上なる幸せの世界を、お金の力を借りてあらゆる物を購入し創造する。
さあ、お金の力さえあれば、この世に私の思い描いてきた理想像を創造できる。
でも私にはお金にまだゆとりがない為に、この世に完全に優しき甘美な印象画のようなあの世を創造することができない。
こんなのでいいのでしょうか。
だからこの世でしっかりと頑張って労働して日々のお金を稼ぎ、社会に貢献しなくてはならないのです。
文明が格段に発達した恩恵によって、この世ではひとえにお金を多く持っていれば、あらゆる物を購入できて願い事のたいていは叶えれます。
だってお金でほとんど制限なしに、思うものは何もかも買えて自分のものになるのですから。
でも反対にこの世ではお金がないと人間の願い事はほとんど叶えられない。
人間にはお金と権力さえがあれば、この世をいとも簡単に動かす事ができるのです。
時々私にもお金と権力を持って、この世を動かしてみたいと思います。
でも私にはお金と権力がない為に社会を動かす事ができないのです。

いいえ、この世で人間はあまり強すぎる欲を持ってはいけません。
だから神様は人間に厳しい戒を与えるのです。人間はそれを厳しく守るからこそ、己を律し節制して慎み人生はうまくいくのです。
だから、この世でただ漫然と何も考えずにお金の為だけに洗脳されてはいけません。
日常において私らしい人生の生き方を選択する時の為にのみ、お金を正しく使い接していかなければ、本当の貴重な人生は生きれません。
この世の文明が生み出したお金によって、実は私自身は洗脳されているのかしら。
でも幸いにこの世のお金とは、私が思うままに作って増やせるわけではありません。ですから努力し労働してお金を稼ぎ社会に貢献する事が、人間にとってとても良い事なのです。

さて、この世には、あの世の淡く儚き美しい憧憬を作りだせないのか。この世に全く苦しみの無い安らかなあの世を作る事ができれば、人間は全てを解決できるのです。
そう、これからはこの世はあの世だと思って生きていればいいのですわ。
でも私は人間としてお金に対して貪欲に興味を持ってはならないのです。
その教えが真実ならば、それこそ私は清貧にして正しく美しい質素な生活をしていきたい。
そうなのか、やっとわかりました。
やはり私にとってこの世の真理とは、お金よりも健康だったのです。
この世でまだまだ元気で健康でいたいと真摯に思います。人間にとってこの世で健康でいられることが一番大事なことなのです。まだこの世で健康でいられる。ただそれだけでいいのだと思います。
あとは自然に自らが作為なく、神に委ねれば人生は全てがうまくいくようになっているのです。

しかし、たまに何の苦しみもない安穏とした至福のあの世に憧れる時があります。
さあ、お金はなくとも人間としてあまり大きな欲を持たずに謹み深く生きれば、あの世の理想を思い描いた美しい世界を、この現実の世界にも作れるのです。
人間は生きる上において意味のない無駄な欲を持たなければ、この世はたちまちに美しく穏やかで、安らぎに満ちた柔らかなあの世になる。そう、簡単に。
さあ、私はすでにこの世があの世に変わる方法を知っている。
この世があの世になる為には、物事に対する人間の心の捉えようしだいで簡単にできるのです。
そう実際にはあの世とは物質的なものではなくて、精神的なものなのです。
まさにそう、それは人間を創造した神を感じることなのです。
そうすればこの世はあの世になるのだわ。
どのようにすれば神を感じたことができるのか。
さあ、これから私は神を感じる手段を考えなければなりません。
でもそれは私にはもうすでにわかっているのです。

それは自分自身と向き合う事なのです。
そして創造する事なのです。

そして全く苦しみの無い平和なあの世に行くために、この世で一生懸命に努力しているのです。

この世でも思うものは何でも実現できる。それはあの世でも同じことであります。この世もあの世も、私のような人間にとれば同じなのではないかしら。

この世とあの世

この世とあの世

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-05-18

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