人形

人形

私の認識を拡大させたのは、宇宙の支配者なのだろうか。私とは一体どんなアルペジオで奏でれば気が済むのだろうか。
人形に一つの生命を与えることは人類に可能な願いの、たった一つの奇跡の方向性を有しているのだろうか。
さあ、一つの奇跡の芽生えで生命の輪郭を与えなければ、遣伝子は機能しなくなのではないか。
人形に返答を求める少女は美しい瞳で未来を見つめる。人形を通して未来を見つめているその少女は、儚げに夢を見る乙女の極小の素粒子だった。
その少女は人形の素粒子を組み立てようと、冴え渡る神の特権を使用して不思議な微笑をした。
人形は少女の意志に連動して動いていく得体の知れない素晴しい機能を持ち、構造の神が造り給う奇跡の行為に、ただただ感動する。
何というこの少女の心は、人形の心に寄り添い生きていく命の欲求を限りのないエネルギーに代替させた。未来は宇宙、青空、海に弾け飛んだ。
何なのだこの興奮は少女は人形に心を与えたのです。こんなにも突き抜けていく造物主の宇宙。
少女はこの人形を比喩の表現にしようとした。天性の異次元の働きを行って理解を超越した人形の人生を造り上げた。
少女の人形を見る姿はぽつんとこの世を脱していった。マリアの満面な微笑みにさわやかな現実を想起させる夢を叶えた人形使い。
人形使いは人形の心に果てしない青空ののどかに逸した安楽を与えた。この人形の心にはもう何も残っていなかった。
何処からか青い鳥が鳴いているようだ。私の青い鳥をずっと探しています。宇宙からの周波数は感度を上げて少女は未知なる喜びに興奮していた。
この地球に人形をどのように迎えようとしているのだろうか。
地球は人形にとって全くの知的好奇心の未だ誰も感じたことのない感動に満ちていた。
人形の分子領域を拡大して11次元に変換し、生命の遣伝子の系列を青い鳥の視点で俯瞰し直した。
人形がここに産まれる生命の時空のパラメータを、少女は大きなキャンパスに描こうとしていた。
人形は生きていく期待に憧れてときめいていた、この今人形の生命の絶対条件は満潮の無我となった。
人形が森の中を歩いていき、筋肉の分子構造を初めて伸ばしていく。そして、森を抜けて浜辺にでた。人形は生まれて初めて海を見たのです。
そこには広がり続け伸びていく遠く彼方の地平線の構造があった。
人形は浜辺の私に合図を送り、抱きかかえられて天空へと重力を無にして生命がさらさら流れて溶けていった、わだつみの星団。
その時人形は少女を見て嬉しさのあまり両手を広げた。人形は冴える渡る潮の音に宇宙からの降り注ぐ低音波に合わせて、心身をワルツしていった。
ワルツは創世記の素粒子の混在を完全にほどいて、人形は存在を薄らいで無くしていった。
母親のいとおしい姿がふっと頭によぎり、感謝してもしきれない恩情を抱いた人形を、その時少女はとっさに強く抱き上げた。
人形は私の子供になったのです。
あなた、私を見てください。ありがとう。海の情熱の彼方に広がる水平線にはかもめが飛行していた。
そう信じていました。この日に帰っていくことを。すでに私はこの日に帰る母の暖かい温度を知っていました。
現実に広がる我が子の人形。
こうして一つの物語一つの人生に愛おしい我が子の誕生を知らせた。
あなたはなんて調和したハーモニーを奏でる個性を持つのでしょう。
この子をあなたと呼んでいいですか。
あなた、あなた、我が子が無邪気に浜辺で遊んでいる。その姿を見ていると、私はこれで良かったのだと。
この子供は日々母親に見守られて成長を続けている。
ほらっ、海って大きいね、広いね。頼もしいね。
私は我が子を心強くて頼もしく思います。
母が語った生命の種の絆がここにしっかりと生きていますわ。
あなたが笑っている。そして、私が笑っている。これでいいじゃありませんか。
そして私はあなたをずっと見つめていた。
これは本当の事、私は子供を持つ母親になったのだわ。
さあ、この子を私の方に、母親の存在へと心を寄せていき、母なる海に通していくこの美しい感情。それは生命の慈悲なのです。
あなたは私を信じている。私はあなたを信じている。そして、母なる地球に解決していく母と子供の不思議な時間。
子供は地球を不思議にしたのです。こうして子供は成長して大人になっていく。
もう一度強く我が子を抱きました。これが私の期待していたこと。これが長く長くこれまで待ち望んだこと、人生の解答なのかもしれません。人生の解答を1つ知ったのです。

人形

人形

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-05-18

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