立ち、歩き、立ちとまり、去る

僕は立つ。何がしたいのかなんて分からないけれど、つまり、目標なんてなくただ僕は立つ。
世の中には立ちたくても立てない人がいるのに、僕は立派な目標もなく、
ただなんとなくで立っている。

僕は何故立つ。僕は立てない人たちに嫉妬されてないだろう。
僕は大衆の一人だ。僕一人なんて、態々探しはしない。
僕は考えている。僕は歩きたいから立ったんだ。僕は知りたいから立ったんだ。僕は世界を広げたいから立ったんだ。
ひょっとしてなんて思ってて、だから立ったんだ。

ぴぃーひょろーぴぃーひょろーぴぃーひょろー。
笛の音が聞こえる。
歩く。ざくざく、僕は石を踏みながら、僕は何かを踏みながら、僕は歩く。
そうだ僕は踏みながら生きてきた。いつだって踏み、踏み、踏み。僕が気が狂いそうな程には、踏み続けてきた。
21年間ずっと踏んできた。もう僕は踏む人間なので、踏まない人間にはなれない。
あらら、僕は罪深さにはらはら涙を流す。

巫女が踊っているのが見えたので、僕は立ち止まる。僕は巫女が恐ろそしい。僕の心の内を見抜く気がして、僕は立ち止まる。

僕は巫女を見る。巫女は恐ろしい。恐怖を感じる。神聖だからだ。穢れているからだ。彼女は巫女で、同時に死と共に生きる一人の人間だからだ。それなのに重さを感じさせない程に軽やかに舞う。
僕は知った。恐怖の本質を。僕は知った僕を。

地面から闇が広がる。夜の巫女が踊る。
僕は踏む。石を。何かを。そうやって生きる、生きてきた。
「何を今更...僕は」
風はさらう、僕の声、想い、全てを。

僕は立ち、歩き、立ち止まる。
その１つ１つは空っぽであったり、残酷な真実であったり、恐怖であったり、色々と含まれていて、カラフルなんだ。

僕が考えを巡らせたいろいろに題名をつけるならば、立ち、歩き、立ち止まる、だなんて考える。
だって、だって、僕は立ち、歩き、立ちとまり、色々と考えてる、重なっている、カラフルである。
そうだ。もっとカラフルにしよう。

僕は歩き、神社を去る。
暗い闇と静寂に支配された空間で、ちっぽけな世界を片手に握りしめながら、僕は月を見上げる。

僕は去る。何から去る。あの空間から去る。「巫女から去る。去ることのできないこともたくさんある」
恐る恐る呟いた言葉は風に攫われない。踏むことから去ることなんてできないよいに。
死んでも、僕は踏んだ事実と生きて、僕はやっぱり踏み続けるんだから。