月物語
1日目の夜
夜中にふらふらしていたところ、ふと、悲しみに満ちた泣き声が聞こえた気がしました。
わたしが見つけたその部屋は真っ暗でした。
わたしの光はすっと部屋を照らします。
「こんばんは」
泣いていた女の子は振り返って誰かを問います。
「私は月の光よ。あなたが泣いていたから...」
すると、女の子は目をまんまるくします。
あのね、そういって口を閉じたり、開いたり、俯いたり、私は女の子を優しく光で包み込み待ちます。
「私の神さまはね、私の心にいらっしゃるのだけれど、パパやママ、友達には神さまが見えないの。だから....」
そういってまた俯き泣き出してしまいます。
「....きっと、あなたの神さまがわたしを導いたのよ。あなただけの神さま。ねえ、目に見えない見えない傷があるとして、あなたは否定したり、バカにしたりしないでしょう」
彼女は俯いたまま頷きます。
「うん」
「私の詩を贈らせてちょうだい」
「
わたしはみた
みんなと違うもの
悲しさも
喜びも
わたしの泉から汲み取った
わたしの内にあるものを
たったひとりで愛した 」
夜明けが近づきました。
女の子は疲れたのか寝てしまいました
わたしもそっと消えます
二日目の夜
私は空を滑り、
大地を眺めていました。
冬風が吹く東京は雲一つない夜空です。
病院の閉じた窓から一人の女の子が、
私を眺めていました。
私はそっと部屋の中を見渡します。
女の子の目は赤く腫れ、
ずっと泣いていたようです。
女の子はぽつりぽつり言葉を口にしました。
いきたくない しにたくない
もうがんばりたくない
どうして こんなに苦しいの
だれかたすけて
女の子は涙を流しながら、
ふと、静かになります。
虚ろな瞳は宙を見つめ。
震える唇は問いかけました
「どうして生まれてきたの」
月物語