琥珀色の瞳
琥珀色の瞳の魅入られた男の話
琥珀色の瞳に映る俺。
無様に転んだ俺に差し出された手。
俺は無垢な優しさに歓喜し、無垢な優しさに触れ、己の業に泣いた。
俺は生まれた瞬間から汚れきっていた。
盗賊の両親から生まれ、当たり前のように技術を受け継いで畜生以下に成り下がった。
世界は腐りきっていると思っていた。
ああ!違った!
彼女の瞳に映る俺はなんて眩しいのか。
ぼろぼろの服を纏い、
油ぎった頭、
伸び放題の髭、
浮浪者のようであるのに、汚い姿なのに、
どうして手を伸ばせるのだろう。
彼女は無垢な琥珀色の瞳で俺を見つめている。
ああ、ああ、腐りきっていたのは俺であった。
雲間から差し出された黄金の光は俺を包んだ。
おお、神よ。
彼女の人生に祝福を与え給え。
そして、お導きに感謝しますとも。
どうしてか、ずっと昔に庭で育てていた水仙の花を俺は思い出した。
気持ちよさそうに雨に濡れているのを眺めたあの瞬間に、桜色に燃える感情が心臓から全身を駆け巡ったんだ。
今、この瞬間、俺は同じように全身を駆け巡る桜色に燃える感情を感じている。
走り回りたい!
叫んで教えて回るんだ!
世界はこんなにも眩しいのだと!
私は彼女に手を伸ばす。
さぁ、立ち上がるんだ。
無様に転んだ俺は死んだんだ。
そして、俺は彼女のおかげで生き返ったんだ。
バン
空気の破裂する音を何回か聞いた。
俺はなにも見えない。なにも感じない。
静寂な世界で、今なら笑って死ねるとどこかで感じた。
ちっぽけなコップが雨水に満たされた。
琥珀色の瞳