キーンコーンカーン、12時を告げる鐘が鳴る。
その音で私は目覚めた。
あぁ、今日映画を観に行こうと思っていたのになぁ、そんな後悔から私の1日は始まった。
後悔もそこそこに日々の日課であるスマホいじりをしようとスマホを開くと、ラインが届いていることに気づいた。
最近仲良くしている子からだった。
彼女からのラインは、今、なにしてる?という内容だった。送られたのは午前11時ごろで、つまり1時間ほど彼女からのラインを放置してしまったわけだ。悪いことしたなと思いながら、私は早急に返事をした。
寝てたー、おはよう。
既読はすぐされて、また彼女から返信がきた。
あのね、見てもらいたいものがあるの。
なんだろう、と思っていると写真が送られてきて、私はすぐさまそれを見た。
それは、彼女と彼女が最近気になっているという男の子とのラインのやりとりのスクリーンショットだった。
彼女は見事にふられていて、恋愛などろくにしたことのない私にはかける言葉も見つからなかったけどとりあえず気休めにはなるだろうと慰めの言葉をかけた。
そうして私たちは30分ほどラインをし続けていたが、話の流れ上彼女がうちに遊びにくることになった。
何時に行ってもいい?という彼女に対し、
今から1時間後ならいつでも、と私は答えた。
彼女は、それじゃあ四時ごろいくねと言ってきた。私は快く承諾した。
そして、彼女が私の家にくるのは初めてだったので、私は彼女の家から私の家までの道の途中まで迎えにいくことにした。
3時半ごろ家を出ると、外は土砂降りだった。私はその時初めて雨が降っていたことに気がついた。そして、少し納得したのだ。あぁ、だからあんなに眠かったのかな、と。私は雨の日は特に眠くなる体質の人間だった。


結論から言うと、彼女は四時ごろ私の家に来て十時頃帰っていった。
その間、私たちはたくさんの話をした。
2人ともアニメが好きだったのでその話をしたり、私が大好きな洋楽の話もした。漫画の貸し合いっこもした。私にとってはそれはそれはとても楽しい時間だった。
それでも1つ、私の中に引っかかる話題があった。それは彼女がうちに来る原因となった彼女の気になる彼に振られた話だった。もともと慰めるために家へ来ることを許したのだから、その話自体は良かったのだがそれに付随した話が少し引っかかったのだ。
話の内容はこうだった。
彼女は中学時代いろいろ苦労をした末に、自傷行為に走ってしまった。そして、それがもし付き合った後に彼に知れて別れられるのが嫌だから事前に彼にその話をした。そうしたら、彼もそうだったらしくて私たち分かり合えたと思っていたのに。

私は、どきりとした。
何故なら、身に覚えがあったからだ。
私も中学時代どうしようもなくて彼女と同じことをしてしまったことがある。そして、その痕は今でも色濃く私の体に刻まれている。
一瞬、話そうかな、どうしようかなと迷ったが私はその話をした。嫌われたらどうしようとも思ったが一度滑り出した私の口は止まってくれず結局全てを話してしまった。
結局は話した後も彼女は私を嫌うことはなく、あっけらかんとしていたが私はすごく不安だったのだ。何故なら、彼女には口が裂けても言えないけど彼女が彼に選ばれなかった理由もその話のせいだと思っていたからだ。


彼女はとても優しくて可愛くて素敵な子だと私は今日までは信じていた。否、今でも優しくて可愛くて素敵な子だとは思っている。
でも、こんな素敵な子でも苦しんだりするのだと知って私はとても驚いたのだ。そして、同時に少しだけ世界を恨めしく思った。こんな子を苦しめるなんて、嫌な世界だな、と。その反面、こうも思ったのだ。あぁ、こんな子でも苦しんだりするんだ。良かったな、と。
私は、その瞬間顔には出さなかったもののひどく自己嫌悪に陥った。
なんて嫌な性格をしているんだ。だから私はいつまでたってもダメなんだという風に。


私は元来、自分のことが好きではない。そして自分はとてつもなく醜い性格の人間だとも思っている。家族にもそういう風なことを言われたことがあるのできっとこれは真実なんだと思う。
だけど私はその瞬間自分が許せなかった。私を認めてくれて、友とまでよんでくれて、さらには優しいねとまで言ってくれる彼女の不幸を喜ぶなんて!
私は彼女が帰った後ひたすら天に向かって懺悔した。いつか、自分の至らないところを全て直して聖人君子になりたいと願いながら。だって、聖人君子になれば今日の私もその前の私も全て、全て許してもらえる気がしたから。
それでも私は知っているのだ。どんなに懺悔したって悔い改めたところで私は所詮普通の人間だし、聖人君子などにはなれないのだ。

あぁ、雨の日はどうも思考がネガティブなっていけない。私は雨の日は特にネガティブになる性質の人間だった。

だめな人間と雨の話。
雨は洗濯物が干せないから嫌いです。
映画はもちろんマーベル。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-05-14

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