【新型ドリル】ギガラーサー此処《ここ》に在り！+エフィの日常（ライトノベル完全版・中編）
テレビＣＭを見て、Project ANIMA SF・ロボット部門（小説作品）に応募。
第一話 未完成のスーパーロボット
「おお、お宝発見！？ なんや紋章みたいのも付いとる！」
ツンツン頭で学ランを着た黒髪・黒瞳の主人公。
つまり、俺は蔵の探検をしてたんや。
蔵から、古ぼけた大きな箱をみつけた。
邪魔な物を退けて、発掘成功。
掌を擦り合わせてから箱を開く‥‥。
「さぁて‥‥おおお、キター！」
中から、御先祖様の遺した赤い鞘が付いた赤い盾と片刃の大剣をみつけた。
「重い、これ‥‥マジモンやんけ！ 鉄やないな、これ‥‥フンッ！」
力いっぱい柄と鞘を引っぱる。
「ぅぬぬぬぬぐぐぐ‥‥！」
少しずつ刀身が露わになる刀。
現在、西暦2238年の初夏。
俺の名は、天童羅砂、西暦2222年4月1日生まれの高校二年生で16歳！
身長177cm、体重66kg。自分で言うのも何やけど、そこそこイケメンなつもりやで。
剣道部員で筋トレしまくってるんや。
腹筋は、キッチリ割れてて、それでも細身の【スレンダーマッチョ（造語）】。
好きな色は情熱の赤や！
関西弁なんは、子供の頃、小学校入る前くらいまで大阪で育って、親が東京転勤になってん。
刀身は１メートルくらい。
「っしゃあ、抜けたっ！ んおお、カッケー！」
完全に抜き放つと、紫の着物姿で艶のある長い黒髪を腰で束ねてる女の幽霊が出てくる。
「ラサ様、お待ちしておりましたわ」
「うおっ、誰やアンタ！？」
「わたくしです、アイリスですわ。お忘れになった振りをなさるなんてラサ様は意地悪ですわ」
たぶん同い年くらい、身長は160cmあるかないか。
えらい別嬪さん‥‥綺麗な人やなぁー。
上から下へと見ると、幽霊って言うた通り、足は無い。
「俺の事、知ってるんか？」
「勿論ですわ、一緒に駆け落ちした仲ではありませんか‥‥☆」
真っ赤になって両手で顔を覆って首を横に振っているアイリス。
「えっと、アイリスさんやっけ？ 今は西暦何年や？」
「せいれき‥‥？ アイザス暦の事で御座いましょうか？」
「アイザス暦‥‥？」
日本史で習った気がする。日本は昔、アイザス王国ってのが栄えたって。
「はい、アイザス暦444年ですわ」
「あ、思い出した！ 御先祖様はラサっちゅーアイザス王国の無敵の将軍やったって、クッソ長い家系図を見た記憶があるで！」
俺の名前も、その将軍に肖ったらしい。
「思い出して頂けましたか、嬉しい‥‥！」
「ちょっ！」
アイリスに、いきなり抱きつかれて硬直する。
幽霊やけど触れるんやな。
冷たいわけでもなく、足以外は普通の人間と大差ない。
着物姿で分かりにくいし、失礼やけど‥‥言わせてもらうなら、バストは、それほどでもないかな。
「ちょい一緒に来てくれや！‥‥って、重っ！？」
これまたべらぼーに重い大剣を襷掛けに背負って、左手には盾と鞘に収めた刀。
右手はアイリスさんを引っぱる。
近代日本史で習った記憶が合ってれば、昔は銃刀法って法律があってんけど、西暦2121年マザーコンピュータの反乱で、人間は常に機械に監視されてるねん。
そして人間の作れる銃や刃では、機械に対して効果が薄く見逃されるようになったんや。
「何処へなりと、お供致しますわ☆」
人間よりロボットの方が多い街の中を駆け抜ける。
「うっはぁ‥‥大剣も盾も重すぎる‥‥何キロあるんや、これ」
「こうして二人で駆け回るのも久しぶりですわね。わたくし、ドキドキしてしまいますわ☆」
息切れし始めている俺と楽しそうな笑顔のアイリスさん。
アカン‥‥なんや、この輝く花ような笑顔は‥‥息切れして吊橋効果みたいになっとんとちゃうか？
でも、悪いけど、俺には心の決めた人がおるんや‥‥！
地球は統括マザーコンピュータの支配下に置かれている。
そんな中で、統括マザーコンピュータに対抗すべくスーパーロボットを開発している科学者。
江布衣鈴。
通称エフィ博士‥‥俺の憧れの人。
研究所の情報でチラッと見たけど、スリーサイズは、バスト95センチ・アンダー67.5センチのＨカップ・ウエスト63センチ・ヒップ86センチ。
すげーナイスバディやろ？
エフィ博士が開発したアンチエイジング＆バストアップマシーンの賜物らしいわ。
年齢と体重は極秘事項になっとった。
独身で彼氏も居ない。
（ラサの知らない、エフィの秘密。2201年12月25日生まれの37歳。これは極秘事項よ、漏洩したら‥‥本当に殺すからね）
【江布衣研究所】という看板のある金属製のドームのような建物の自動ドアを潜る。
「エフィ博士‥‥居てまっかー？ ぜぇ、はぁ‥‥」
空中にウインドウが開かれて、レンズの大きな黒縁眼鏡が似合う白衣姿、年齢不詳の超美人が映る。
少し茶髪に染めた三つ編みのおさげが二つ。
身長165センチ。
「あら、ラサ君。今日はどうしたの？ マナミちゃん以外の女の子を連れてくるなんて、後で、どうなっても知らないわよ？」
マナミっちゅーのは幼馴染や。
こ、恋人とか、そんなんとちゃうで‥‥？
地位愛実、西暦2222年1月1日生まれの16歳、高校二年生。
引っ越し先のお隣さんで幼馴染っちゅーヤツやな。
何や小学校から、ずっと同じクラス。
剣道部のマネージャーやけど、俺と同じく、朝練のみで放課後の部活には出てない。
研究所のデータベースでは、身長155cm、バスト86センチ・アンダー63センチのＦカップ・ウエスト60cm・ヒップ87cm。
所詮、高校生。
エフィ博士には及ばんやろ？
まあ、去年のミスコンでは3位やったけどな。
公認カップルとか冷やかされることも多いけど、ただの幼馴染や。
今日も超美人のエフィ博士。
‥‥世の中の男は見る目ないなぁ。
俺が、もっと大人やったら、絶対告白するで‥‥。
ちゅーかやなぁ‥‥その、恋‥‥してるんや。って、恥ずかしい事、言わすなや！
ほとんど研究所に詰めとるから出会いが無いんかもしれんけど。
「エフィ様ではありませんか、お久しゅうございます」
深々とお辞儀をするアイリスさん。
「私を知ってるの‥‥？ はっ、確か古文書に‥‥ラサ君、その盾と刀を魅せて」
［見せて］ではなく［魅せて］やねん。
ただ見るんやない。
そこには魅了するほどの物を期待する言葉なんや。
慌てて入り口まで駆けてくるエフィ博士。
「えらい重たいんで気ぃつけてな、エフィ博士」
「ふふふ、こんなこともあろうかと！」
白衣を翻して腰のボタンを押すと、背中からウネウネと機械の腕が出てきて盾と刀を掴む。
「これは‥‥アイザス王国将軍の【深紅の風クリムゾンウインド】だわ！」
「はい、ラサ様は将軍で御座いました。わたくしと駆け落ちなさって‥‥きゃー☆」
俺に寄り添い、真っ赤な顔を両手で覆っているアイリスさん。
「ん‥‥抜けないわね」
エフィ博士は機械の手の出力を上げる。
「メーターは250kgを超えてるわ」
プシューっと水蒸気が出て、出力が緩んだようやな。
「さっきは普通に抜けましたで？」
俺が受け取って抜くと、重いながらも抜けて、赤い刀身が露わになる。
「なるほど、おそらく刀が主を決めるのね」
「それって、俺が主に選ばれたってー事でっか？」
「そうみたいよ。アイリスさんは刀に宿った守護霊のようね」
「すげー！ なんか中二病が、ブリ返しそうやわ！」
「もう一つ背負ってる大剣は、おそらく‥‥」
遮るように赤く明滅する研究所、警報が鳴り響く！
「エフィ博士！」
「ラサ君、またヤツが現れたようね」
「チッ、マナミのおらんときに‥‥何しとんや」
走りつつ通信デバイスでマナミを呼び出す。
「ラーさん。ふえぇ‥‥終わんないよぉ‥‥」
ウインドウのマナミは、プリントの山に埋もれとった。
担任に頼まれたプリントの整理。
すぐ終わるやろって、別行動で帰る事になった。
手伝ったったら良かったか？
そしたら蔵の探検する時間なかったやろしなぁ。
「暗黒戦艦が出よったんや、間に合いそうか？！」
「って、暗黒戦艦出現！？ ごめん、ラーさん。これじゃ間に合わなーい！」
ウインドウからエフィ博士に向いて、
「しゃーない、一人で行きまっせ！」
「無理しないでね？」
ウインドウに視点を戻す。
「マナミがおらんのに出撃するだけで無茶は承知や、ボケ！」
通信デバイスを切断。
*
司令室で、スクリーンに映し出されているのは真っ黒な［暗黒戦艦］、全長１００メートルの空中戦艦。
そこから吐き出される［破壊メカ］は、全長５メートルの飛行兵器で機関砲を搭載、街へ乱射している。
統括マザーコンピュータに管理される今の日本では、こうして間引きされるんや。
適度に人間という絶滅危惧種の管理数を減らしたり、街を破壊して修復させる仕事を作り出す。
昔は日本人は1億人以上居たけど、今は500万人も居ない。
日本以外の国の人間は絶滅して、自然環境が整えられてるらしいわ。
でも、人間やって、黙ってやられてるだけやない！
「行くでー！」
格納庫へと続くスライダーを滑り降りる途中、俺は真っ赤なパイロットスーツへと変身！
引き締まった優男らしい肉体美のチラリズム。
操縦席へと着地！
「今日は遠隔操作でスイッチを入れるわね」
コクピットの各種ランプが赤から緑になっていく。
レバーをグイッと前に押し出す。
斜め上への発射台が開き、クラウチングスタートのように合致したローラーで加速する。
ギガラーサーの脚部にはローラーダッシュ機能が付いてる。
これで射出速度アップにも繋がってるけど、空中戦が多いから、実戦で使う事はほとんど無い。
「くっ‥‥！」
強烈なＧがかかる。
研究所から射出されたのは、全高１７．７メートルのスーパーロボット！
カラーリングは赤を基調に、関節部や射撃装備は黒！
「ラーサーウイングＯＮ！」
ボタンを押すとスーパーロボットにウイングが開いて飛行可能になり、急行するギガラーサー。
*
「ギガラーサー此処に在り！」
多数の破壊メカと暗黒戦艦の前に立ちはだかるギガラーサーの決めポーズ！
「性懲りもなく現れたわね、ギガラーサー！ 今日こそ完膚なきまでに破壊したるわ！」
回線に割り込んでウインドウを開く通称、闇将軍。
暗黒戦艦の司令室には、やや露出度の高い黒ボンテージに仮面を付けた女将軍や。
赤みがかった黒髪ロングに鞭も持っている。
鞭が床に叩きつけられる音がする。
「それはこっちの台詞や、ボケ！」
「全機集中砲火や！」
破壊メカの機関砲と戦艦の砲撃がギガラーサーに集中する。
「その程度、効かへんわ！」
戦艦の主砲とミサイルだけ躱して、機関砲は当たるに任せる。
コクピットのダメージメーターが少しずつ上がっていく。
「火器管制のマナミがおらんと、これしか無いのが面倒やな‥‥ラーサー・キーック！」
破壊メカの懐に飛び込んで、某ライダーのようなキックで撃墜。
せめて剣さえあれば‥‥ないものねだりしてる場合やないか。
剣は、鉄からチタン合金やセラミックを試したけど、ギガラーサーの出力に耐えられず折れてもうたんや。
巨体に似合わず、スピーディに次の破壊メカに接近。
「ラーサー・パーンチっ！」
次も一撃で撃墜。
威力で言えばオーバーキルやな。
ギガラーサーにはバルカン砲やホーミングミサイル発射筒などの装備があるが、俺には使えんのや。
「ラーサー・ローリング・ソバット！」
回し蹴りで、更に撃墜。
まだ10機以上破壊メカは残っている。
とても暗黒戦艦には近づけない。
「もうダメージ20％か、このままやと近づく前にやられてまう‥‥くっ！ ラーサー・エルボー！」
肘鉄で更に撃墜。
「何か、ええ方法無いんか‥‥ラーサー・踵落とし！」
大きく空中回転して撃墜。回避運動も織り交ぜる。
「これじゃ埒が明かないわね‥‥」
ウインドウにエフィ博士が映る。
「ほんま、往生しまっせ‥‥ラーサー・チョーップ！」
更に撃墜した所で。
「隙在り！」
暗黒戦艦が船首のラムを向けて突撃してくる。
「ハッ！ 真剣白刃取り！」
ラムを両手で挟むも勢いに押されるギガラーサー。
「出力全開やあぁぁぁ！」
ギガラーサーの背後ブースターが火を噴き、ガッチリ受け止める！
「アホか！ 止まったら主砲のええ的やで！」
暗黒戦艦の主砲が火を噴き、ギガラーサーの頭を木っ端微塵にする。
コクピットは赤く明滅し、ダメージメーターが一気に80％を超えていく。
再度、ウインドウにエフィ博士が映し出される。
「ラサ君、それ以上は無理よ！ 帰還しなさい！」
「そんなん言うたかて、街は、どないすんねん！」
「ギガラーサーは、まだ未完成。此処で破壊される訳には行かないのよ！」
「くっそ‥‥覚えとけや！」
ラムから両手を離し、後退していくギガラーサー。
「アハハハハ！ 陳腐な捨て台詞やね。次こそ頑張りやー」
大破寸前で研究所に帰還するギガラーサー。
暗黒戦艦と破壊メカは、適度に街を攻撃して去っていった。
研究所に戻り、学ラン姿に戻る。
「く、悔しい‥‥」
「ラサ様だけでも御無事で、よろしゅうございました」
背伸びして俺の頭を撫でるアイリスさん。
「ラサ君、さっきの話の続きだけど‥‥」
眼鏡の位置をクイッと直すエフィ博士。
「なんでしたっけ？」
「もう一つ背負ってる大剣の事よ」
「ああ、そう言えば。はい、どうぞ」
非常に重く赤い片刃の大剣を力いっぱい、タスキがけのまま頭を通して差し出す。
エフィ博士の機械の手が受け取る。
「やはり、古文書の通りだわ。これは［深紅の炎クリムゾンブレイズ］に間違いないわね」
「刀は［深紅の風クリムゾンウインド］言うてましたね」
「ええ、これは姉妹剣。アダマンタイトという鉄よりも重く硬い、古代のレアメタル製の刀と大剣だわ。現に数千年を経た今でも刃こぼれどころかサビ一つ無いでしょう？」
「そう言われてみれば」
俺とエフィ博士の会話に耳を傾けるアイリスさん。
「それと鞘と一体になっている盾は［クリムゾンガード］、アダマンタイトほどの強度はないけど、鉄よりも硬くて軽いミスリル製の盾よ。古文書には［クリムゾンアーマー］という鎧も記されていたのだけど、一緒に無かったの？」
「はい、無かったです」
「まあ、鎧があった所で、生身で戦えるわけじゃないから無くてもいいのだけど、クリムゾンシリーズ一式には戦闘力アップというセット効果があるのよ」
「そうなんでっか、ほなまた蔵を探して見ますわ」
そこへセーラー服を着たセミロングで青みがかった黒髪ストレートに、フレームレスの眼鏡をかけた女子高生が息せき切らせて走り込んでくる。
「はぁ、はぁ‥‥ごめんなさい、遅くなって」
「ほんま敵わんで、俺らは二人セットのパイロットなんやで」
ギガラーサーのオペレーター兼火器管制パイロット。
コイツがおったら、破壊メカなんぞ、楽勝で撃ち落とせたんやで。
「ところで、この人だれ？」
アイリスを指差すマナミ。
「あら、マナミ様ではありませんか、お久しゅうございます。わたくしです、アイリスですわ」
「アイリス‥‥？ ってきゃあぁ、幽霊じゃないの！」
俺の背中に隠れるようにして左腕にしがみついたまま覗き見るマナミ。
「まあ、怖いですわ。幽霊だなんて、どこにいるのかしら‥‥？」
アイリスが、恐恐と周囲を見回しながら俺に寄り添ってくる。
「何この人、自分が幽霊だって自覚ないわけ！？」
「無いみたいやな。蔵でみつけた刀の守護霊らしいで。普通に触れるし、何も怖い事あらへんで」
「ほんとに‥‥？」
握手しようと手を伸ばしてきたアイリスさん。
マナミの手が空を切る。
「触れないじゃない！ 嘘つき！」
「あら、これは一体どうした事でしょうか？」
「嘘ちゃうわ、ボケ！ ほら、触れるやろ」
俺が、空いている右手でアイリスさんと握手する。
ぽっと頬を染めるアイリスさん。
「これは興味深いわね、おそらくラサ君が刀の主だからよ‥‥ほら、私も」
アイリスさんの背後から手を横薙ぎにするエフィ博士。
何の障害物も無いかのように通り抜ける。
【新型ドリル】ギガラーサー此処《ここ》に在り！+エフィの日常（ライトノベル完全版・中編）
