告白100人斬りのムカツク女子マネ兼コーチとセンスゼロな卓球男子(長編)
ヒロインの倫世《ともよ》は、物心付く前から卓球漬けの英才教育を受けて育ち、中学二年生でオリンピックの銀メダリストになった。
自覚は無いが、小柄で超可愛い顔立ち、卓球で鍛えられた身体はスレンダーで美しく見える。
中学三年になると、胸が急成長。更に成長期は終わっておらず身長は伸びないが胸だけ成長‥‥。
しかし、それは彼女をドン底に突き落とした。
胸が邪魔で卓球の未来が潰えたのだ。
それでも卓球特待生の誘いはあったが「オリンピックで上位を狙えなくなった以上、先に進めない」と断り、アイドル転向のスカウトもあったが「目立つのは好きじゃない」と断って、公立高校に通う事に。
市立日樫高校へと進学し、倫世は男子卓球部の女子マネ兼コーチとなって全国制覇を目指している努力の人。
一方、主人公の真和《まさかず》は、両親が卓球部上がりで恋愛結婚。
しかし、反抗期だった彼は、両親が中学の部活に卓球を勧めてきたのを撥ね退け、趣味だった囲碁将棋部に入部した。
元々、運動音痴なのだ。身体の柔軟性は皆無。前屈しても手は届かないし、ブリッジをすると台形になる。
足は速くもなく遅くもないが、持久走はビリッケツ。握力は女子にすら負ける最低記録保持者。反射神経も鈍い。
頭は悪くはない。体育以外の全ての教科は、一切、宿題・予習・復習をせずとも、授業だけで平均点以上が取れる努力とは無縁の天才肌。
高校進学が決まって、声変わりも反抗期も終わり、親孝行の精神が芽生え、卓球部への入部を決意したのは良かったのだが‥‥。
※この小説はフィクションであり、登場する人物や団体などは、現実とは異なります。
プロローグ:モテる女はツライよ。
「好きです! 付き合って下さい!」
「ふーん。で、アンタ。アタシのどこが好きなの?」
「全部です!」
「ハ? アンタがアタシの何を知ってるの?」
「去年のミスコン1位だし‥‥超可愛いし」
「はい、ストップ! アタシの顔が好きなわけ?」
はあ、またこのパターンか‥‥もう高校入ってから100人目よ。
そして、空を見上げると曇り空。
告白の場は、いつも何故か曇天なのよ。
「勿論です! 超絶好みです!」
「顔が好きなだけ?」
「いや‥‥あの、ナイスバディな所とか‥‥」
「見た目だけ?」
「あー、えっと‥‥、中学の卓球で銀メダル獲ったとか‥‥」
「そんなの誰でも知ってるわよ。他には?」
「え、え、えーと‥‥」
「つまりアンタはアタシの事を何も知らない。顔とスタイルがいいから付き合いたいのね? 却下、帰れ!」
アタシの眼力に怯んだ男子は、腰を引かせ、
「ご、ごめんなさい!」
と、逃げていった。
溜息しか出ない。
何故かアタシの顔は可愛いらしい。
自慢する気は無いけど、ジュニア卓球で銀メダリスト。
オリンピックで金メダルを賭けた決勝戦で中国の選手に負けてメチャクチャ悔しかった。
卓球で鍛えられて、自然とスタイルがよくなってしまったらしい。
そして、中三から胸が急成長‥‥アタシは胸が邪魔で卓球の未来を潰された。
こんな脂肪の塊、本気で要らない。
高校二年生になった今も更に成長している‥‥。
もっと背が伸びたら良かったのにな‥‥。
そして、毎日のように靴箱にラブレターが入ってる。
そこで、まず選別。
差出人の名前が書いてないヤツは即ゴミ箱行き。
名前が書いてあるの中で宛名がアタシになってるヤツは一応読む。
失礼がないように指定された待ち合わせ場所に行く。
屋上だったり、校舎裏、体育館裏、定番の場所。学校の外は却下。
でも、いつも結果は同じ。
卓球部の男子からも全員に告白された。
と言っても、アタシのコーチングに着いてこれなくて、次々と辞めてくから今は10人だけど。
卒業していった先輩も含め、全員フッた。
告白100人斬りのムカツク女子マネ兼コーチとセンスゼロな卓球男子(長編)