天女

天女

天女と手を取り合い宇宙へと、天空に向けて一気に上昇するその羽根を広げた天女の心は、大いなる救済の感情体となった。
ふわーっと高く上昇して下界の俗事は儚さとなり感傷に耽る、一心に大空を飛ぶ内なる宇宙はお祈りの教典なのです。
天に昇ることは肉体と精神が全く存在しなくなり、感覚が無になるということ。
そうなのです。私の感覚は天に行ってしまったのです。この世界にすでに存在していない解脱感は、極上なる安息日の住み処。
肉体と精神を全く無の境地へと移ろいゆきます、この解脱の感覚に全ては無くなり解放している、そう仏様に会ったのです。
人知れず、青き薄明かりの中に仏心を抱き秘かにひっそりと佇んでいる美しき顔のお方。
その秘められた表情であなたの感覚がみそらへと体感していくいとおしさに包まれた。
さあ、晴れ上がる。まさに心の晴れ上がりを実感して解脱を実現する事の尊さを知らせた。
これから天国に昇天してしまう現世の私の心身は今存在しているようで、実は存在していないのです。
この何とも言えない幸せな居心地の良さ、この世のいとおしき原風景をふわっと、ささやかなみそらのそわかに解り初める。
人生の記憶は心模様の多様さで色とりどりに変幻自在で明滅している。
一旦私は私を離れて天国から今一度私の人生を見てみます。このようにして改めて人生の広がる地平を俯瞰してみると、本当にいい人生を生きてきました。
そうなの、愛に満ちた人生だったのです。

若返った心と肉体を与えてくれた仏様の人を想う優しき慈悲深い気持ちがあった。
まさに生まれ変わった天女が瑞々しく若かれし少女であったことに、はっと驚いて清められし感情にほどけていく。
それは大河が海へと辿り着く水の流れの帰結という例えようもない安心感でした。
やっと人間は救われた愛の慈悲深さが解り初めた。
天女と私は神社上空へ超越した最上界の飛翔を、まさにこの生きてきた世界から天国へと肉体は幽体離脱していく、ああ我を忘れたの。すべての人生を忘れていく。
ゆっくりとスローモーションでふわーっと浮遊していき絶頂を迎えました。
そして天女は母なる青い地球の黄金にたなびく草原へと降り立つ。
そっと天女は生まれ変わり幼き少女に戻っていく。天国への凄絶な天女との昇天した感覚が、私にはまだ微かに存在している。

この世の私は存在していなかったのではないか。実は人生を生きていなかったのではないか。
いいえ、違います。人生よ、川の流れは確かにゆったりとたゆたんでそこに存在しています。

感傷に耽る私に少女がまたそっと寄り添う。ああ、その少女のか細い体は温かさの微熱にじんわりとほどけて救われている。
初めて教えられます、至上なる愛の救いに類い稀なる傑物の秘仏を見た。
超越した時空の快感が生命の存在を解脱させていくように、解りやすく人生のお経は人間の営みという日常の生きた文章を羅列し提示していた。
あなた、分かってください。もうすでに私は天国にいるということを。
天国はこんなにも美しい光に満ちているということを。そしてすべての人生の出来事を肯定したのです。
天国ではしてはいけない考えなんて何も存在しなかった。ああ、私は何を考えても許される。
その時存在は全てが忘れられて完全に天国の幻影へと安らかに還っていく。
さあ、天空にお星様がぱあーっと私達を明るく照らしています。
この世界の苦しみのありとあらゆるものを解きほぐしていく。身に起こる事それは私にとっては全てが意味のあった仏様の啓示でした。
私の本当の伴侶は実は私だった。万物の現象は私の感覚を通して起こる、この全く新たな認識は情熱の禅門答の解答なのです。
計り知れない天女の救いにより私の思想は確実に進化させていく。
私はこれから一体何処をどのように進化させたいのだろう。
私はこれから大上段の人生解答の集大成を仏様に提示していきます。
私の内面の問題解決がこの地球上から天国へと、まさに宇宙の初まりとなって解決していく。
やっと見えた何という美しき解決の道。
その先にさーっと広がる救いの光が見える。
ほらっ、天空へと続く階段を見つけた。
さあ、みそらへと天高く昇っていく。
この世界にこんなにも救われた時空を知れた人間修行の菩提があった。
それは一つ一つの努力の究極の積み重ねによるもの。宇宙の遥か高みへと続いていく一本の道に憧れて飛翔している。
天女への心願成就に想いを馳せる私はもうすでにふんわりと快調になっている。
そして天空に薄らいでいく天女は私にさっと手を振りました。何ということ、ああ、感情がもういてもたってもいられなくなった。
たださめざめと涙に溢れ感謝し、天女に別れを惜しみ礼をした。
これほどまでに仏様に愛されし少女は昇天されたのです。この地球に存在しえない不思議な微笑みを浮かべて、ふわっと少女はいなくなってしまう、微かなか細い声で私に「さようなら」と言い残して。

たった今この宇宙にたった1つだけ愛を叶えました。
この宇宙にたった1つだけの愛に私を教祖にした。この輪廻転生していく天使の微かな声は儚く奏でられる。
そして私は本当に許されたのでしょう。この世界の過去、現在、未来から。そう全ては許されたのです。
まさに少女は神霊へと存在を同化していった、この地球上にその抜け殻だけを残して、天国で再び天女に生まれ変わったのです。
この少女は私にとって一体何者だったのか、私はあなたの正体を知りすぎてしまったのか。
母なる青い地球から遥か高い宇宙の事象へと、さらに宇宙の果てを超えた新たな事象へと天女が私を連れて行った、生きてきた存在の意味とは今このためにあった。
天女が地球上から心身を完全に解脱させる。
私という人間は一つに規定されていった。この世界で生きてきた人間の生命は、今から生まれ変わります。黄金の草原に蓮が咲き誇る仏様の例えようの無い菩提の人間となる。
あの天女との法悦を回想します、さあ、これから全てが生まれ変わるのです。たったそれだけで今まで生きてきた人生はこれで全て良かったと思えた。
この天国に御先祖様は確実にいて守ってくださる。

天女

天女

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-05-07

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