yesプロブレムな彼氏。 第一話「真昼」
ある中学校のあるテニス部に、男子部員から独裁者と呼ばれるキャプテンがいた。
そいつの名は長野雄喜。しょっちゅう女子にちょっかいを出す女たらしであった。
彼女と別れては、また彼女を作り、その彼女と別れては、また新しく彼女を作り・・・と、数珠繋ぎのように繰り返していた。
それ故に、男子や女子からは嫌われているが、もっと厄介なことがある。
男子には厳しく、女子には優しいというフェミニストをはき違えているようなプレイボーイなのである。
こんな奴、絶対無理だ。
おにごっこ日和のポカポカな昼休み・・・。
私は外へ出ずに教室のカーテンに包まり、外を眺めていた。
「アイツの姿が見当たらないな。」
根気良く探すが、やはりいない。
おかしい。アイツの髪型は特徴的だからすぐ見つかるはず・・・。
そんなことをあれこれ考えていると、
「つーみん、どうしたの?」
だいたいこんな感じで話しかけてくるのは、友達の村本沙耶香
である。
中学2年に進級してから友達になったのだが、思ったよりも早く打ち解けることができた。
今では一番仲が良いと言っていいだろう。
「つーみん、長野探してるの?」
・・・つーみんとかいうムーミンみたいな不思議なワードにきっと、違和感を覚えたであろう。
自己紹介が遅れたが、私の名前は清瀬菜摘。
つーみんというのは、いわゆるニックネームってやつだ。
「うん、まあね。」
最近の話、私は長野ってヤツと付き合い始めた。
リア充リア充言う人もいるかもしれないけど、とんでもない。
長野にとって私は七人目だ。
記念すべき七人目!
ラッキーセブン!
・・・と、ポジティブになりたいが、どうも無理なようだ。
彼女作りすぎだろ・・・。
付き合う前はかなり邪険にしてたものだ。
「長野、いなくない?」
沙耶香も見当たらない様子。
「やっぱいないよね。」
何故か残念そうにしてる自分が複雑になる。
前まであんなに嫌いだったじゃないか。
噂を聞きつけた他の友達からは止めがたくさん入った。
よっぽどの理由が無い限り、付き合うなんてありえない。
そんな堅物な私を突き動かしたのは何だったのだろう・・・?
キーンコーンカーンコーン。
一ヶ月前に遡ればわかるかもしれないが、授業開始を告げる予鈴が鳴ってしまった。
このことは別の機会に話すことにしよう。
席に着かなければ・・・。
「鳴っちゃったね。じゃあ、また後で。」
「うん、後でね。」
私は窓から離れ、席に着いた。
yesプロブレムな彼氏。 第一話「真昼」