I am happy? 1
何が平凡だ。何が幸せだ。やってられるか。
私は机に突っ伏せた。
カバンを放り投げて、こぼれそうな涙を、唇を噛んだ痛みで忘れようとした。
「どーしたよ、ヒメノ」
「こぅチャンにはわかんないよ」
「あー?」
先生のくせに、なれなれしいぞ、馬鹿。
先生なら、廊下を走る男子共を怒鳴ってればいい。
「女の悩みってやつすか」
「…」
「俺意外とそういうの…」
「あーもーうっせー!!!」
ドン、とこぅチャンの胸板を押した。
バカバカバカ。一人にさせてよ。
「…っとっと」
「次話しかけたら、グーパン」
「あのさ」
「5」
「数学の課題の提出を」
「4」
「クラスみんなの分」
「3」
「集めんの面倒だから」
「2」
「頼んじゃだめ」
「1」
「かなー?」
ぷちん
「0」
私は全力で拳を振り上げた。
こぅチャンは何ごともないようなしれっとした顔をしていた。
何よ。その顔。そんなの殴れるわけない。
バカ。バカバカバカ。
「こーたせんせーじゃん」
「おうっす、アマミ」
「おうーっす」
「ヒメノどした、すんげぇブサイクな顔」
「こぅチャンは何も分かってない!!!」
教室から飛び出した。こぅチャンは追いかけてきた。
陸上部の顧問には、勝てる訳もなくて。
「なに」
「俺のことまだ好きでしょ」
「なにそれ」
「一昨年のこと、もう忘れちゃった?」
私とこぅチャンはお付き合いというものをしていた。
やることをやって、終わったら、この関係も終わった。
気づかないうちに水に溶けてしまった。
そして先生は、結婚した。
子供も出来て、何不自由ない。
24歳のくせに、とんでもない童顔で。
うざったい。とてもうざったい。
からかった顔がうざったい。
だけど、
だけど、
好きだよ。
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