ある恋の物語
年の差恋愛
てめーら、ストレートがそんなに偉いのか!?
「この人だあ!」
あまりにもタイプの男の子を見つけて、俺は天から大声で叫んでしまった。
現在、俺は生まれ変わる事を許された「たましい」。
ふんわりふんわりと浮きながら空から下界を見つめ、
次にどこに生まれようかと毎日思案している。
前世、「大阪」って土地に住む日本人だったから、
「今度も日本人、大阪人に生まれたい。」
と言うといけ好かない元「江戸人」や、すかした元「京都人」がとめやがる。
「やめとけ」
『大阪は柄が悪い』だと?
大阪を馬鹿にすんな!
最近はもうすぐ転生する男3人で、あれこれしゃべりながら次に生まれる場所を
選ぶのが日課になっている。
「『この人だ!』て騒いでたけど下界に可愛い女の子でも見つけたのか?」
京都人が首を突っ込んでくる。
「2歳児?1歳児か? 本当にお前は年上が好きだなあ。」
何とでも言え。
俺の心はすっかり「恋する男」になっていた。
「可愛い女の子を産みそうなキレイな妊婦さんでも見つけたか?」
「江戸人」が、ふわふわ浮きながらニタニタと笑っている。
「ちゅーがくせいだ。」
「……はあ?」
「今、12歳、ちゅーがくっていう学校にいっている。『だんしちゅうがくせい』だ」
「はあ!?12歳だと?」
「十代なんか、ただのおばはんじゃないか!」
「やめとけ。やめとけ」
「おばはんじゃない!おっさんだ!」
「余計、やめとけ。」
「男かよ!」
「創介、お前、そっちだったのか」
「俺には恋心を抱かないでくれよ」
「ジジ専の大阪人は放っておいて俺らは可愛い女の子を産んでくれそうな、
綺麗な妊婦でも探そうぜ」
「そして、近所に生まれて、幼馴染同士結婚するのさ。目指せ!
平凡でもいい、愛に溢れた平穏な人生!」
「じゃーなー、大阪人!」
おい、ちょっと待て。
なんで俺が笑われないとあかんねん?
ゲイのどこが悪いねん?
「おまえら、またんかい!」
京都人と、東京人は笑いながらふわふわと行ってしまった。
感じの悪い、京都人と江戸人の意見を無視し、
俺はふわふわ浮きながらその人の様子を見たり、
霊界図書館に通い俺を絡めた、彼と俺、2人の運命を調べ始めた。
大筋が決まっているこの人生のライフイベント表に沿って忠実に生きたとしたら、
彼と俺の人生がクロスするのは俺が二十六歳、彼が×1で三十九歳の夏。
しかも、最初は折り合いが悪く喧嘩ばかりしている「犬猿の仲」からのスタートらしい。
俺はなぜか彼にゴキブリ以下に嫌われ、
こっちが仲良くしたくても「死ねばいいのさ」と言われるばかり。
いくらなんでも「死ねばいい」はひどくないか?
俺の何が気に入らないのかわからないが、
彼が俺に言い放った『死ねばいいのに』は俺の中でその年の『流行語大賞1位』だった。
こっちはこんなに好きなのに、
『ゴキブリより、俺が嫌い……』ってあんまりだ。
オトコだって泣くんだ、えーん!
俺は藤前さんに嫌われているのが悲しくて一人隠れてよく泣いた。
それでも何とか、押して押して押しまくりつきあう事に成功し、
親の反対を押し切って2DKのマンションで、
夢の同棲生活をスタートさせたのが俺が30歳の時、彼は43歳だった。
俺の人生の予定表には波乱万丈の「乱」だらけ。
もう。
波・乱。乱。乱。である。
……みたいな人生。
まあ、いいか。
波乱乱乱、それも楽しみな人生さ。
「何とかなるやろ~。おもろそうやん。」
そういってB型で能天気な俺はこれがまた、よく考えずに、
大阪の「かなり強烈キャラのおかん」の腹の中に飛び込んで、
その年の秋に森山家の長男として産声を上げた。
森山創太朗の誕生だ。
俺が二十七の時にライフイベント表通り「運命の彼」は目の前に現れた。
俺と彼の運命の赤い糸がやっと、とある大手パソコン教室「A]でクロスしたのである。
当然、最初、俺は相手にされず……最後は頑張って頑張って死ぬ気で口説き落とした。
「死ねばいいのに」から数か月、
藤原さんは俺の「付き合って下さい」を受け入れてくれたのだ。
一方、例の「京都人」と「東京人」とも連絡を取っていた。
3人とも浮遊魂時代の記憶があり、
ラインを通じて話しかけてきたのだ。
「おい、例のおやじと同棲までしてるって……本当かよ!」
京都人が一緒に話しかけてくる。
「俺は、結婚したぜ~」
と東京人。
「俺も、近いうちに結婚いたします」
京都人も言う。
さあ!祝え!とばかりに、
煩くラインが入って来る。
てめーら、ストレートがそんなに偉いのか!?
ゲイはゲイで、色々、大変なんだ!
「…お前ら『まとめて』よかった。」
……棒読み。
今日の食事当番は俺だ。
「ごめん、俺、落ちるわ。繁彦さん、ぼちぼち帰って来るからさ。」
「繁彦さん、だってよ!」
「邪魔したな!新婚さん!」
ふん、なんとでも言え!
世の中幸せになったもんの勝ちなんだ!
繁彦さん、愛してるよ~。
俺の心は繁彦さんの事が好きすぎていまだに、浮遊している。
ある恋の物語
ボーイズラブ?