おとぎ話ヒーローズ
はじまり
新しいイグサの香りが漂う純和風の部屋。その真ん中には、主人の趣味であろうか、大きな白い大理石の猫足テーブルと揃いの椅子が置かれていた。
そのテーブルを囲み、十代前半と思わしき少年少女が腰かけている。
一人は、赤いフードをかぶり、白いエプロンをつけた少女。籐でできたバスケットを抱えたまま、素直そうな栗色の瞳は、やや緊張した様子で周りを伺っていた。
一人は、腰まであるブロンドの髪で、カチューシャをつけ、水色のワンピースを着た少女。不思議なことには慣れている、といった様子で悠然と腰かけていた。
一人は艶やかな長い黒髪を持ち、新緑の和服を着た可憐な少女。和紙と竹でできた扇子を持ち、長いまつ毛をふせ、静かに考え事をしているようだった。
一人は、唯一の少年であった。賢そうな顔立ちで、ポケットのたくさんついたベストを着ていた。隣の妹を気にかけながら、ため息をついていた。
最後の一人は、肩まである髪を二つのおさげにした、賢そうな顔立ちの少女。兄の視線を物ともせず、口の中でコロコロと飴を転がしていた。
突然、重々しい音て部屋の扉が開き、小柄な影が入ってきた。
「やあ、諸君!!お待たせしたにゃ!」
「今日から、君たちにはヒーローになってもらいます!」
しぃん、と静まり返った部屋。部屋に入ってきた猫は、あれ?と首をかしげながら、長靴をはいた二本足で歩いて、少女達と同じテーブルについた。
「今日から、君たちには、ヒーローになってもらいますにゃ!その名も!
『ウルトラプリティセーラー魔法少女戦隊ライダーズ』
にゃ!」
束の間の静寂
「長いよ!」
「要素詰め込みすぎじゃん!」
「うるとら…?らいだぁ…?」
「俺は男だぁ!!」
「…。(飴を食べているので無言)」
少年少女が慌てて騒ぎ出す。
「あーもう!いっぺんに言わないでほしいにゃ!一人ずつ答えていくから!最初は赤ずきん!」
指(肉球)を指された赤いフードの少女がビクッと頷いた。
「…確かに長いにゃ。後でチーム名会議をする。」
その返答を聞くと、緊張していた赤ずきんは、がくっとテーブルの上に崩れ落ちた。
「次!アリス!」
カチューシャの少女が、猫を睨む。
「このご時世、生き残るためには様々な工夫がいるにゃ!我々のアイデンティティは要素の多様性にある!プロデュース力抜群の、この長靴をはいた猫が言うから間違いないにゃ!」
「…まぁ、私たちに選択肢はないんでしょうけどね」とアリスは諦め顔で呟いた。
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