ラブ&ヘイト 見習い天使と見習い堕天使の物語(11)

第十一章 天使&堕天使

 ここは、天使の部屋。
「天使様。折角、「LOVE」の四文字が東の空にかかったのですが。消えてしまいました。残念です。でも、とりあえず、四文字が揃ったのですから、私の天使への昇格はどうなるのでしょうか?」
 無理やり自信あるように振る舞うものの、やっぱり自身がない見習い天使。おそるおそる尋ねる。
「見習いよ。お前は、このノートの力を信じるか?」
「はい。仲良くなった二人の名前を四組書いたら、東の空に、「LOVE」の四文字が浮かびましたから」
「ははははははは。お前も素直な奴じゃな。このノートにそんな力はない」
「でも、確かに、空には四文字が浮かびましたけれど・・・・」
「それは、セスナ機から出されたスモークじゃ。下界で、なんかイベントをやるという噂を小耳にはさんだから、お前を試してみただけじゃ」
「はあ、そうですか・・・」
 階段を四段まで登ったの、急に梯子を外されたかのように肩を落とす見習い。
「でも、四組を仲良くさせたのは、事実です」
 胸を張る見習い。
「だが、直ぐに、喧嘩別れして、元の黙阿弥じゃ」
「はあ、そうですか」
「とにかく、お前には、まだ修行が必要じゃ。その白い服を脱げ」
「ええ、これを脱いだら、天使の世界にいられなくなります」
「そうじゃ。お前は、一度、堕天使の見習いとなれ。そこで、修行を積んで、再び、ここに戻ってこい。堕天使には、わしの方から話をしておく」
「そ、そんな」
「わしに背くようだったら、天使の世界どころか、堕天使の世界にもいられなくなり、人間界に突き落とすぞ」
「そ、そ、それだけはご勘弁を」
 見習い天使は、背中に白い羽がついた、つなぎの服を脱ぐと、名残惜しそうに、ゆっくりとたたむ。
「さあ、行け。見習い天使。お前が入って来たドアと反対方向のドアを出たら、堕天使の世界じゃ。頑張って、修行の成果を上げて、戻ってくるんじゃぞ。ああ、そうじゃ。堕天使の見習いの服は、後で、届けるからな」
 天使への昇格どころか、堕天使の世界行きを告げられた、天使の見習い。首から足の爪先まで肩が落ちたぐらいにしょげかえり、「は、はくしょん。寒い、寒い」と呟きながらドアを出ていく。
「さあ、わしも着替えないといけないな」
 大天使も、見習いと同じように、羽根が付いたつなぎの服を脱ぐと椅子の下にしまう。今度は、別の服を取りだし、被った。
「よし、準備OKじゃ」
 その時、先ほど見習い天使が出て行ったドアからノックの音が。
「入れ」
「はい、堕天使様」
 そこには、見習い堕天使。
「よくぞ、わしの課題をこなしたな。誉めてやる、見習い」
「いえいえ、堕天使様。私は何もしていません。人間たちが勝手に仲違しただけです。私は、それで後からノートに名前を書いただけです。もちろん、ノートにそんな力があるとは思いませんでしたけど」
「まあ、それはいい。とにかく、お前は、目標を達成したわけじゃ。それで、見習いから卒業するけれど、やはり、一人前の堕天使になるには、更に、別の修行が必要じゃ」
「別の修行とは?」
「これじゃ」
 堕天使が差し出したのは、先ほど天使の見習いが脱いだ白い服。
「これは、天使の服じゃありませんか?」
「そうじゃ。だが、すぐには、天使にはなれんぞ。まずは、見習いじゃ。さあ、これを着て、天使の世界で修業じゃ。大天使には、わしから話をしておく」
 堕天使の見習いは、自分が着ていた黒いつなぎを脱ぎ、名残惜しそうに畳むとその場に置いた。そして、白い見習い天使の服に着替え、
「堕天使様、大変お世話になりました。修業を積み、また、お目にかかりたいと存じます」
「いやいや、直ぐに会えるわい」
「はっ?」
「いや、お前なら、天使の見習いも直ぐに卒業できるということだ」
「はい。ありがとうございます。それでは、天使の世界で頑張ってきます」
 見習い堕天使は、見習い天使として、入って来た方向と反対の扉から出て行った。堕天使の世界の扉の向こうでは、「はっ、はっ、はくしょん」の声が繰り返されている。
「ああ、忙しい。あいつも、いつまでも、あのままじゃ、可哀そうだな」
 堕天使は、見習い堕天使が脱いだ黒い服を手にとった。

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見習い天使と見習い堕天使が、天使と堕天使になるための修行の物語。第十一章 天使&堕天使(最終章)

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-09-17

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