びんづめ文通 1話
初投稿、処女作です。
メールだのSNSだのが溢れているこの時代に
文通をテーマに
甘酸っぱい青春ものを目指す予定です^_^;
まだまだ至らないところが
多々あると思いますが、楽しんでもらえると幸いです。
―こんなことを、伝えたらきっと・・・もう元には戻せない―
春 4月 入学式。まだパリパリの制服を身にまとい
ここ桜ヶ丘高校前の桜並木を緊張した面持ちで歩く・・・・・・・・・・1年生の様子を箒を片手に見る私。
私「片瀬凛」は、桜ヶ丘高校2年になった。
「なーに見てんのっ♪凛♪」
「うわっ!」
突然やってきた背後からの衝撃に耐えきれず、私は箒の柄であごを強打した。
「彩芽・・・。後ろから突然抱きつくな。と、この1年間私は何回言ったかな?」
私は〈怒ってますよ〉アピールのため頬をひきつらせたあやしげな笑みを演出しながら、ゆっくりと振り向いた。
「ごめん!ごめん!あはっ!痛そー!」
彩芽は少し舌を出しおどけた表情で、手を合わせてごめんのポーズをした。
ふむ。やはり可愛い容姿をしていると、こんな漫画のような表情とポーズをとっても似合ってしまうものなのだな。
しかし、まぁこいつはまた悪びれる様子もなく・・・。
「はぁ。また1年間、彩芽の奇襲に悩まされるわけね・・・。」
「奇襲ってなによ!コミュニケーション・・・いや、愛情表現と言ってくれ!」
奇襲という発言に頬を膨らませていたかと思うと、すぐに褒めてくれ。と言わんばかりのこのドヤ顔・・・。表情がすぐにコロコロと変わる。
うらやましい表情括約筋を持っているものだ。
「愛情表現・・・ね・・・。そんなら実害が出ないようにしてよ・・・。」
私は、まだ少し痛むあごをさする。
「実害って!!そんな・・・!!いやらしいっ!こんな昼間の廊下で・・・!!!」
「なに顔赤らめてんの!いつ私が猥談をした!すぐそっちに持っていくな!」
いかにも女の子~。という感じの茶髪でふわふわのパーマがかかった頭をはたいた。
「痛いなぁ。もう!そんなこと言って、クラスが違ってたら寂しがるくせに❤」
「アホか。語尾にハートマークつけんな!違ってたら清々してたわ!」
「でも、そう言いつつ私のこと好きでしょ♪」
「・・・まぁ、嫌いじゃないけど。」
まるで猫のように彩芽はすり寄ってきた。
こう軽々しく「好き」とかの単語が使えるとか尊敬するよ本当に。
私はひねくれて「嫌いじゃない」なんて言い方しかできない。この言い方が私にとって精一杯の「好き」という表現方法なのだ。
・・・ほんと、いっそこの〈奥山彩芽〉という人物を嫌いになれたらどんなに楽なことか・・・。
「キャッ❤デレいただきました~!あの〈氷の女王様〉からデレいただきました~!」
「〈氷の女王〉言うな!まったく!デレてもないし!」
〈氷の女王〉いったいどこの誰が呼び名をつけたのだか。呼ばれ続け約1年経つが、この呼び名にはやはり抵抗がある。
「おい。あまり俺の彼女とイチャつくなよ片瀬。そっちもう掃けた?掃けたならゴミ持っていくよ。」
ドクン。声を聞いただけで一気に心拍数が上がる・・・。
後ろから声をかけてきたのは、笹山明。奥山彩芽の彼氏だ。・・・そして、私の好きな人でもある。
「いやいや、これのどこがイチャついてるの。はい。もう掃けたよ。邪魔だからさっさとゴミと一緒に持って行っちゃって。
この子掃除の邪魔しかしないから。」
落ち着け・・・。少し緊張しつつゴミ袋と彩芽を笹山に差し出す。
「むー。邪魔、邪魔ってひどいよー。手伝ってたのに。ていうか、割った張本人さんどこ行ったの?」
「今、先生に花瓶割ったこと報告しに行ってる。」
そう、私たちが今掃除していたのは割れた花瓶だった。
数分ほど前、私が花瓶を持っていた男子と廊下の角で出合い頭にぶつかってしまったのだ。
「彩芽、笹山くん、手伝わせてごめんね。」
「別にいいよ。ちょうど一緒に現場にいたんだし。俺、ゴミ捨ててくるよ。」
「そうそう!凛は気にしないの!」
「ありがと。あ、じゃぁゴミ出したらそのまま彩芽と帰っていいから。」
「? 凛も一緒に帰ろうよ?」
彩芽が不思議そうな顔でこっちを見てくる。
うっ・・・。せっかく人が気を遣って2人きりにしてやろうとしているのに・・・
いや、詭弁だな。自分が2人が一緒にいるところを見たくないだけなのに。
「私はあの男子帰ってくるの待たないと。いつになるかわからないから今日は先に帰ってて。」
「そう?わかった。じゃぁ、また明日!」
「じゃぁな。」
「うん。また明日。今日はありがとう。」
そう言うと2人は、手をつないで外へと向かった。
「はぁ・・・なんで同じクラスになったんだろう。」
深いため息がでる。・・・これから1年間、去年以上に2人を見る機会ができるのか。
去年はまだ笹山くんが別のクラスだったから、ダメージ負うことも少なかったけど
この1年間は覚悟した方がいいな・・・。というか、2人にこの気持ちを気づかれないよう細心の注意を払わないと・・・。
「好きだなんて気づかれたら・・・。」
「すみません。片づけもう終わったんですね。」
私がぼーっとしていると後ろから花瓶を割った男子が声をかけてきた。
「うん。大した量じゃなかったしね。先生に報告ありがとう。・・・えっと・・・」
「染井誠人です。こっちこそ片づけありがとう。片瀬さん。」
私が名前を知らないことをくみ取り、名乗ってくれた。ん?
「え?なんで私の名前知ってるの?」
「だって、片瀬さん有名だよ。」
「あぁ。彩芽と友達だからか。」
彩芽は学校で1、2を争うと言ってもいいくらい可愛い。
1年の頃から、ミスコンに出たりなど派手なことも多くしてきたため認知度も高い。
「ふはっ!!」
彼はケタケタと笑い始めた。ん?今、笑うようなとこだったか?
「えっと・・・なんかツボに入っちゃった?」
「ごめん、ごめん。笑ってしまって。けど、もう笑いこらえきれなくなって。ははっ。まぁ、奥山さんとつるんでるからってのも
もちろんあるけど、片瀬さん1人でも十分有名だよ。氷の女王様♪」
「なっ!?」
この呼び名が見ず知らずの人にまで知られていようとは!!
「けど、意外だったなぁ。噂とは随分イメージが違うもんだ。
あの容姿端麗、成績優秀、下等な男どもは相手にせず、何事にも冷静沈着、と言われている氷の女王が、
普通の女の子みたいにキャッキャッはしゃいでるかと思ったら、
男とはあまり喋らないって聞くのに普通に会話してるし、
かと思いきや、恋する乙女みたいに相手の背中目で追ってるし。
しかも相手が友達の彼氏とか。いやぁ、面白いな。氷の女王様?」
「えっ!?!?!?」
今、何が起きてる!?だめだ。頭の処理能力が追い付かない・・・。
「ま、今日は面白いものが見れてよかったよ。じゃぁ、また。」
そう言うと、手をひらひらと振りながら染井誠人は帰って行った。
「・・・・・・うそ。ばれた・・・?」
遠くから入学式のざわめきだけが聞こえる。
あの後、どうやって自分の家に帰ったかよく覚えていない。
自室で着替え終わり、ようやく少し冷静になったところで、
私は便箋とシャーペンを取り出した。
―クロスさんへ―
先日、体調が優れず喉が痛いと書かれていましたが、その後いかがですか?
今日は、クラス替えがありました。よく手紙にも書いているAとSくんと同じクラスになりました。
とても切ないです。と同時にとても、いつ気持ちがバレるかと恐ろしいです。
そして、その恐ろしい出来事が起こってしまったのです。
まだ2人に気づかれたわけではありませんが、今日あったばかりの人(男子)に、
この気持ちがバレてしまったのです。あいつから2人の耳に入ってしまったらどうしよう。
1番良いのは、私がSくんへの気持ちを諦めることだというのは、わかっているのですが
まだ諦めれそうにありません。たまに、いっそ伝えてしまおうか、と思ってしまうこともあります。
けどAとの関係も壊したくないのです。
こんなこと伝えたら・・・きっともう元には戻せない。
今回のお手紙、愚痴ばかりになってすみません。
お詫び&お見舞いとしてのど飴入れておきます。
―カリンより―
びんづめ文通 1話
文通をテーマに。と書いておきながら
まだほとんど文通的描写が出てきませんでした^_^;
これから徐々に出していけたらな、と思います。