竜と神と人間と#1

「ご主人。私が死んでもご主人の心の中に居続けます」
「待て!ララ!それだけはやめろ!」
こんなことになるなら引きこもりを止めなきゃよかった。
こんな世界滅びればいいんだ!

6794年。世の中には魔法を使える人と使えない人がはっきりしている時代。
大体魔法が普及し始めて4000年が経つ頃。これが今の時代背景だ。
自分の事を適当に説明すると6000年前から生きている竜で引きこもりであるということだ。竜と言っても今の時代では珍しくもない。
今の時代は大昔に人間が描いていた空想上の生き物が平然と存在するようになった。神話に出てくる怪物達なんかはどこかの研究所で量産している。
そう、自分の母親は世界でも有数の科学者で研究所でいつも研究してる。たまに、助手を振り回してフィールドワークにも行く。
父親は考古学者だ。父親も助手と世界各国の宝や珍品を収集している。
何千年前の人にとっては空を飛ぶことも海に潜ることも夢の世界だった。自動で物を作ることだってそうだ。そこに魔法も参入しただけだ。そこまで技術が発展しただけで特におかしいことはない。
 さて、こんなつまらない話はそろそろ飽きてきただろう。そろそろ自分のことについてもうちょっと詳しく話すとしよう。
 俺の名前は御門(みかど)(りょう)
この名前は16年ほど前に創造神ノヴァの命令により付けられたものだ。元々の名前はもう覚えてない。名乗ることもないので忘れてしまった。俺が生まれた時代は今から6000年前で分かりやすく言うと平安時代だ。有名な鳴くよウグイスだ。
話は逸れたが俺は6000年前に竜として生まれて生きてきた。竜としての生き方をしていた時は人を襲い食い漁り傍から見ると悪魔にしか見えない行為をしていた。
 まぁ、そのせいで何度か陰陽師とかいう平安時代の魔法使いや武士と呼ばれる剣術士に幾度となく攻撃された。その時の攻撃に使われたあの紙切れみたいな『符』とか呼ばれる物から色んな物質に変化するのは今でも理解ができない。刀は見たままの通りの攻撃方法だったが、符は殺した陰陽師から何枚か盗んだのを使ってみたり丸1日見ていたがよく分からなかった。
100年ほど前にどこかの研究所で出会った白衣の女に聞いてみたところ言霊ことだまという言葉に魔力をこめる不思議な魔法が作用してるとか。
また話が逸れたな。次はこの時代の事だが—
「ご主人様。今日も色々届いてますよ」
モノローグを切り上げた声の主の方を向くと台車で大量の段ボールを運んできたメイドが部屋に入ってきた。このメイドの名前は御門ララ。正式名称は電脳システムララだ。とある事件がきっかけで人造人間になった。
だが、外観や機能だけを見るとほとんど人間に近い。しかし、人間とは思えないくらいの運動能力や記憶力がある。
「ご主人様聞こえてます? 通販で買ったものを置いておきますよ」
台車から段ボールを箱を降ろして箱を開封しているという作業をしている姿を眺めながら
「本はいつも通り本棚に並べておいてくれ」
「分かりました」
ララは我が家のメイドだ。こうやって俺が通販で大量に買ったものをララが並べてくれる。
「段ボールは畳んでおきますね」
「ああ、空の段ボールはそこにまとめて置いてくれ」
こうやって俺の身の回りの世話などもしている。
「では、終わったのでご飯の準備してきますね」
ララはそういうと部屋を出た。

「はぁ…」
深いため息をつく原因がこの段ボールの中身にあった。
『城山学園』という城ヶ崎市魔法保護区に存在している学校は入学適正年齢になったら入ることを義務付けられている。歴史も長く由緒ある学校だ。制服、魔導服一式、学生証が段ボールに詰められていた。面倒くさい。この一言に尽きる。
 そもそも学校は学ぶところだ。6000年も生きている俺は何を学べばいいんだ。自分より年下の人間に教えてもらうなど退屈この上ない。しかし、唯一興味を引いたのは『魔法実習』『魔法学』という魔法学校らしい授業だ。今の時代は昔みたいに杖や魔法陣で魔法を使わずに『詠唱』という魔法を叫んで発動するのが主流だ。
それにしてもだ、叫んだら避けられてしまうではないか。例えば『ファイア』と叫べば火が出るが、『ウォーター』と叫んで、水で消してしまえば意味がない。念じたり手を合わせて魔法を発動出来なければ魔法とは言えないと俺は思う。そもそも、今は魔獣という生物が体内の器官に『火炎袋』『氷結袋』『水袋』『電撃袋』『毒袋』などの属性攻撃を発動する物ががあるから魔法なんて飾りみたいなものだと俺だって思う。
 ちなみに俺みたいな竜族にしかできない魔法があるそれは『バリア』というありとあらゆる攻撃を防ぐ最強の防御魔法と『チェンジ』というありとあらゆる物体や人体を色んな形に変形できる魔法がある。部屋に散らばっている段ボールだって俺にかかれば回転椅子に座りながら人差し指を曲げるだけで紐で縛って部屋の隅に置くことだって1秒でできる。『チェンジ』という能力は日常で一番使えるし、とても便利だ。
「それを能力の無駄遣いというんだ」
「人の心を読むな。そして俺の部屋に勝手に入るな。頼りない人間上がりの神が」
「お前は人じゃないだろ。そろそろお前に使命を与えようと思ってきたんだ」
「そんなものはフェンリルにでも食わせとけ」
この髭を生やした男は『ノヴァ』だ。人間名は金剛(こんごう)(じゅん)だ。俺にこの家に引きこもらせる為だけに突如、俺の元に現れた奴だ。
「引きこもらせる為だけにこんな面倒な事する訳ないだろ。お前には高校生としてが学校に―」
「さっきからお前って呼ぶのやめろ。一応お前より何千年も年上だ。調子乗ってるとその髭を燃やすぞ?」
少しカチンときたので話を被せるように言ってみた。
「人の話の腰を折るな。ミカドには高校生として学校に行ってもらう」
また、面倒な事をするよな。全く滅びればいいのに…。
「さっきのモノローグ聞いてるなら学校に行きたくないの分かるだろ?この箱の荷物を捨てておけ」
「まだ話の続きがある。興味の引いたのがあるんだろ?それだけ出ればいいじゃないか」
「その為だけに学校には行く気になれない」
俺がそう言うとノヴァは「ふむ…」と顎に手を当てると
「では、放課後は相談室があるからそこで人間の相談を乗るのはどうだ?」
「却下。あり得ない。こっちだってボランティア活動する為に貴重な時間を費やしたくないわ」
「では、依頼料5000円ならどうだ?内容次第ではもっと貰えるみたいだぞ」
「よし、やってみるか。アルバイトってやつをしてみたかったんだ」
「手の平の返しが早すぎて残像見えそうだな」
金が手に入るならやる。何年経っても金は裏切らない。金と食ほど信用できるのもはない。
「入学手続きは私がしておく。後は頑張れ」
俺は頷いて話は終了した。

「ララ、城山学園に行くことにした」
「……え?ご主人様。料理が口に合いませんでしたか?」
ララは慌てふためいた。当然の反応だ。俺は一度も学校という単語を口にしたことないからだ。
「いや、そうじゃなくて城山学園に行くから」
「ご主人様!6000年の生活に飽きて自殺とかよくないですよ!早まらないで下さい!」
「違う!冗談とかではない」
「話が進まないな…。私が説明する」
突如ダイニングに魔法陣が出てきてノヴァが表れてそう言った。
「貴方、ご主人様を変な宗教に勧誘しようとしてますね」
「違う。俺がこの男に学校に行くように促したら行くと自分の意志で決めたんだよ」
まぁ、買収されたというのが本音だけどそれは言えない。
「まぁ!貴方はなんて素敵な人なんですか!引きこもりを頑として続けるご主人様を学校に行かせるようにするなんて素晴らしいですね。前に城山学園の教師が来たときは「ドアノブに手をかけたら氷漬けにする」って言って脅して追い返したのに一体どんな演説をしたんですか?」
ララ、余計なこと言い過ぎだ。ノヴァも少し困ってるぞ。
「まぁ、私は一応創造神だからそこら辺の人よりは言うことに重みがあるからな」
嘘つけ。買収したくせに。
「神様なんですか!そりゃそうですよね!これからもご主人様をよろしくお願いしますね」
母親かよ!流石にノヴァも「この女を何とかしろ」って俺にテレパシー送ってるぞ。
「まぁララそういうことだ。じゃあな。ノヴァ(帰れ)」
「うむ、ではまたな。(助かった)」
会話しながらテレパシーとは高度だなと思いつつララに視線を向ける。
「ご主人様。私も制服があるので行きましょう」
「明日からな」
「はい!」
こうして俺の高校生活は火蓋が切られ、引きこもり生活に終止符が打たれた。

竜と神と人間と#1

竜と神と人間と#1

魔法も技術になる時、引きこもりの竜が動き出す。 6000年以上引きこもりを続けていた人型の竜の御門遼は突然の引きこもり生活に終止符を打たれる。終止符を打ったのはなんと創造神ノヴァであった。 引きこもり生活を取り戻すために本格的に人間生活に向かい合おうと人造人間のメイドと動物好きな竜や自称時空調律師の竜と共にすることになる。 新感覚ドラゴンファンタジー ※残酷描写、暴力描写あり。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • コメディ
  • 青年向け
更新日
登録日
2018-04-22

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