No.13物語4~6
4 飛べない鳥
水面に映るものは
影だけで違和感を感じ
まだ自分の存在自体もあやふやだった
肩を落とし
また宛もなく歩きだす
真っ黒な空のしたの方が
燃えだして赤くなり
とても大きな輝くまん丸が
青色を連れて
山の遥か向こう側から
光る粒と大きな丸を食べながら
上がってくる
きっとこれが
この世界の始まりなのだろう
彼はその事を理解した
彼の中に
朝と夜
光と影
青と黒と赤
少しを知った
知ることは楽しい
もっと知りたくなった
知りたくなった
彼の瞳に映る風景は
美しく感じた
足取りは少し早くなっていた
耳をすませば
沢山の音もしていた
水が流れる音
木が風に揺られる音
ふと空を見上げると
何か空を舞っている
チュンチュンチュンチュン
2つの翼を
器用に羽ばたかせ
鳥達が
彼の頭上を飛んでいる
彼は手を広げ鳥達の真似をしてみた
彼は飛ぶ事が出来ない事は
すぐにわかった
悲しくはあったが
それが悔しくはなかった
しばらく飛ぶ真似をして
鳥達と仲良くなった
5 同じ形
しばらく
仲良くなった鳥達を眺めてた
すると疑問が生まれた
鳥達は同じ形をしている
両羽を
バサバサ羽ばたかせている
その姿も
とんがった口もお揃いだ
鳴き声だって真似っこしているみたい
他の生き物を見てもそうだった
みんな
一人ではなかった
彼は無性に悲しくなってきた
どうして自分は一人なのだろう?
もしかしたら自分にだって
仲間がいるのかもしれない
そう思ったら
いてもたってもいられない
仲良くなった鳥達と
別れて
彼は歩きだした
初めて目的ができた
同じ仲間を探すこと
少しだけ楽しくなった
6毛むくじゃらで四つん這いの生き物
同じ形をしたやつを探す事を決心した彼は
ほんの少しだけ楽しみになった
あの鳥達や
虫達みたいに
沢山の同じ形と一緒に
歩いたり
ご飯を食べたり
おいかけっこしたり
夜には大好きな
光る粒と大きな丸を眺めたり
想像しただけでも
彼は興奮していた
一人じゃないんだと
想像に夢中になりすぎて
周りを見ていなかった
彼の前を素早く横切る影が見えた
びっくりした彼は
側の木に
身を隠しその影を覗きこんでみた
そこには毛むくじゃらで
四つん這いで歩く生き物がいた
自分の体をなめ回している
体をなめ回しながら
ゴロゴロゴロゴロ
変な音を喉元から鳴らしている
とても穏やかな顔で
フカフカした
枯れ葉でくつろいでいた
パキッ!
彼は何かを踏んで
音を出してしまった
ゴロゴロしていた音が止まった
クンクンクンクン
毛むくじゃらで四つん這いの生き物が
こちらの方を気にしているようだ
彼は毛むくじゃらに興味はあったが
なにせ初めて見る生き物なので怖かった
彼は意を決した
そーと
手を上げて
毛むくじゃらで四つん這いの生き物に
自分の存在をアピールしてみた
シァァァァ!!!!!!
毛むくじゃらで四つん這いの生き物の
全身の毛が上に向かって立ち上がる
表情はさっきのゴロゴロ鳴らしていた顔とは
まるで違っていた
口は牙を剥き
今にも飛びかかって来そうだった
ダメだあの鋭い牙で
噛まれる
………………
恐怖のあまり彼は意識を失った
気がつくと
毛むくじゃらで四つん這いの生き物は
目の前から消えていた
何か分からないが嫌な気分だった
No.13物語4~6