王道ラブコメなんて信じない11

何だか久しぶりな気もするが、とりあえず前回はヤンキーぶっとばした。
「で、何の用なの?星宮くん?岸田さんにまた、頼まれたの?」
桜庭学園の副会長の因幡が嫌そうな顔をしながら聞いた。いや、俺は触ってないじゃん。あの金髪が馴れ馴れしく引っ張ってきたんじゃん。モンストかよ。
「いや、足尾に頼まれたんだ」
校門の前ですかしているこいつが今回の依頼人の『足尾遥』だ。
「よくここまで連れて来れたな。どうも、因幡嬢。クライアントこと足尾だ以後よろしく」
「貴女っ!また来たの?もうやめてくれない!?」
嫌われてるなー。ゴキブリ見つけた時の岸田並みにヒステリックになってるな。
「そうヒステリックになるな。今回は桜庭学園の方で幽霊を見たという噂を小耳に挟んだから、調査をしたかったんだ」
え?聞こえないな。怖いというのはないが残業となるなら残業手当が欲しいところだ。
「えっ!ちょっと、足尾。そんな内容書いてなかったじゃん」
「そりゃそうだ。今言ったんだからな。もしかして橋本嬢は幽霊とか苦手か?」
「べ、別に大丈夫だし」
完全に怖がってるじゃねぇかよ。ヤンキーのくせにお化け怖いとか小学生だろ。
「んじゃ、因幡嬢。件の場所を教えてくれ」
「女性陣に任せて俺らは帰るか、な、金髪。依頼は『因幡美琴を連れてくる』ってだけだし」
「あー、そうだね。クライアントが先陣切ってるんだし帰るか」
「あ、あんたら勝手に帰ったら殺すぞ」
背後からスゴゴゴって音が聞こえそうな気迫で拳を握ってる。
「あ、聞こえてたか。渋々行くからその腕を下ろせ」
「橋本さんが本気出したら僕らなんて瞬殺されるね」
「いや、消し炭の方があってるかもな」
「そこまでしないからお前らもこい」
「「はい」」
こうして残業が始まるのであった。

あー。あれだな。青鬼とかIBみたいなフリーゲーム系のホラーゲームでよく見る館と似てるな。
「ここが、最近幽霊が出るようになった場所?」
「うん。さっきまで居たのは桜庭学園の新校舎で、ここは新校舎から少し離れた旧校舎」
「少しではないね」
「かれこれ20分くらいは歩いたぞ」
少しの意味を分かってるのか?
「な、何でこんな離れたところにあるの?」
「俺の予想だとここは昔大事件が起きた可能性がある」
「それだけではないわ。旧校舎ができる前は墓地だったらしいし」
ホラー要素満載だな。残念なのは今が真昼間ってことだな。
「昼間でまだ良かった。夜だったらうちは帰るよ」
「で、ここに入るの?門の鍵閉まってるよ?」
真鍮の大きめの南京錠が扉を閉ざしてるな。鎖で巻き付けてあるし南京錠を開けないと入れなそうだな。開ける方法は一応ある
「金髪はもっと頭を使えよ閉まってるなら開ければいいだけだろ」
「鍵もないのにどうやって?」
「こうすればいいんだよ」
俺は門を思いっきり蹴っ飛ばした。南京錠と鎖が粉々になって館の方へ弧を描いて飛んで行った。流石に金属だ。腐食してるんだからこれくらい余裕だ。
「あ、鍵が吹っ飛んだ」
「早く行くぞ」
門を開けて先に進んだ。

「何であんな男が簡単に開けれるのかしら、おかしいよ」
「因幡嬢。あの男を見くびらない方が身の為だぞ。さ、橋本嬢も行くぞ」
「鍵閉まってるから安心したのに…」
背後で色々と言っているが俺には聞こえなかった。

「扉が開けっ放し?怪しいわね」
「俺が中から鍵を開けたから開いてるんだよ」
「星宮。どうやって中に入ったのだ?」
「窓ガラス割って入った」
窓ガラスを割っても怒られないのが廃墟の特権だからな。使うに越したことはない。
「不法侵入も甚だしいね」
「どうせ幽霊が住んでるような校舎に人なんざいないっての」
「皆、よく考えるんだ。旧校舎、無人、長年放置。これは確実に幽霊出るね」
ホラゲの定番だな。
「か、樫村っ!やめてよっ!」
「いやー、冗談だよー。幽霊なんている訳無いよねー」
「あぁ、幽霊が学校に住み着くなんて有り得ない。あそこにいる全身真っ赤な人だって幽霊じゃない」
赤い服を着てふらふら歩いている大男だ。何もおかしくはない。
「「「は?」」」
「ま、マジでいるんだけど」
「これは予想外ですね」
「あれは私の知り合いよ。安心しなさい」
「だから、我を殴るでない。陰湿男」
「あ、ホントに人だったのか。やけに感触があるから不思議に思ったんだよ」
ホラー映画で明らかに人間に近いお化けを逃げずに攻撃したらどうなるんだろうって思うじゃん?
「ならば、早く殴る手を止めろっ!」
「君が幽霊を見つけるまで殴るのを止めない」
「幽霊はいないって言っておるだろ」
「陰湿男に腹が立ったから殴った。もうやめる」
やっぱり幽霊ってのはいないんだな。

「こほん。我は瀧奏おぼろかなでと申す。そこの因幡殿に頼まれてここに人が立ち入らぬようにこのような格好をしていた」
「その赤いのはトレンチコートだったのか」
どこで、そんな趣味の悪い色のコートが売ってるんだよ。買う奴お前以外いないだろ。
「うむ。ブラッディレッドという色でござる」
直訳したら血の赤ってことだろ?ホントに趣味悪いな。
「で、ここで幽霊目撃情報があるのは何故だ?」
「その件なのだが、こことは地下で繋がっている寮というのが、あるのだがそこでしょっちゅう変なのを見るのだ」
地下で繋がってる寮とか明らかな設計ミスだろ。設計者バカすぎだろ。
「鍵が閉まっているのになんで、見えるのかしら?」
「茶道室の襖も地下に繋がっていてそこを通りかかったときに見てしまったのだ」
バカなのか?何でここの設計士は茶道室の襖にも繋げてんだよ。ホラーゲームを意識しすぎだろ。
「や、ヤバイじゃん。早くここを出ないと皆死んじゃうよ」
「とりあえず鍵が閉まっているところまで案内しろ」
とりあえず、そんなクソみたいな設計をしている部屋が逆に気になるから見に行きたい。鍵だろうが何だろうが蹴破ってやればいいんだ。
「蹴り開ける事だけはしないように」
「え?何で知ってるんですか?」
思わず心を読まれたようで敬語になってしまった。イカンイカン。キャラがぶれる。
「そこの金属片が外の南京錠と同じ色をしていたからだ。びっくりするからやめるように」
「あ、はい」
俺が割っていない窓ガラスが割れていたのでよく見たら南京錠の破片が落ちていた。まさかここまで飛ぶとはな。それと無駄にガラスを割ってしまったな。勿体ない。

王道ラブコメなんて信じない11

王道ラブコメなんて信じない11

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-04-21

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