ベランダ

誰も居ないから僕の特等席
夏の風が僕の頭を撫でて
ほのかに季節の始まりを覚えた
誰も居ないのさ僕のベランダ
夏の風が僕のことを酔わせて
ほのかに死にたいと思った

知らない君が
後ろから僕の肩を叩いた
だけど君は前から
僕のことを知ってたらしい
ベランダにいつも居る
僕のことを見ていたらしい

僕は何処か嬉しくて
君の美しい手を引いて
飛び降りた

誰も居ない僕と君の姿すら
冬の雪が特等席を隠して
かすかに一年の終わりを感じた
誰も居ないのに僕のベランダ
冬の雪が段々と溶けてくる
見渡せばすぐそこで君が泣いていた

見えない君に
今度は僕の方から声をかけた
だけど君は凍えて
口を震わせているらしい

そうだ
僕の想いを今伝えよう
ずっと前から
ベランダにずっと居る
君のことが好きになっていた
これからは一緒に居たいんだ
君は静かにいいよと言った

僕は何処か恥ずかしくて
君の在るべき手を引いて
飛び降りた

本来居るべき場所へ行く為に

ベランダ

ベランダ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-04-20

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