登
続きも執筆予定です。
舞台的にはファンタジーチックなどこかの国のお話です。ほんの少しの魔法要素とか入れれたらいいななんて。
「はぁ、はぁ、、」
登る。登る。
石で出来た螺旋階段をひたすらに登る。
もはや足は棒のようで口の中はからっからに乾き僅かに血の味がする。
食糧は尽き水がとっぷりと入っていた空の水筒達はただの荷物と化してしまったので早々に棄てた。
1週間である。
この塔を登り始めた日からもうそれ程の時間が経過しているが塔から身を乗り出し見える終着点は遥か雲の上だ。
「ーーー。」
遠いな…そう呟こうとしたが上手く言葉が出てこない程には疲弊しきっている、だが休んでる暇はない。
この塔の頂を目指さなければ。
〜〜〜〜
私の母国には成人前の娘を贄に出せば向こう50年先までの豊穣が保証されるという伝承があり、その贄は国によって選出される。
今年は丁度その50年の節目の年で
その日は国をあげての贄の選出が行われる日であった。
【国王からお触れを交付する】
城の前の大広場に響く声。
そののち、王城の一室から1人の男が現れる。
この国の王だ。
国民の目の前に国王が現れると国民全員が傅きその威光の前に平伏する形となる。
『皆、顔をあげよ』
その一声に皆顔を上げ次なる王の言葉を今か今かと待ちわびる。
皆その目には娘や近しいものが贄に選出されるのではないかという焦りや恐怖が見て取れた。
『城下の街、13番平屋の娘。レナス・イヴァール。前へ出よ』
耳を疑う、今聴こえた名前。
今隣でカタカタと震え蒼白な顔をした"私の妹"レナスの名前を呼ぶ声が聴こえた。
「………はい」
振り絞ったレナスの声に思わず彼女の手を握り行かないでくれ…と目で訴える。
そんな姉に心配をかけてしまうと思ったのだろう。
彼女は小声で「…大丈夫、行ってくるね。」と一度ぎゅと手を握り返しふとその手を優しく振りほどき
「レナス・イヴァール!ただいまそちらへ参ります!」
やや涙声なれど広場に通る澄んだ声で自分の存在を主張する。
そして大広場の群衆達はその声をきき王へと続く彼女の道を開いていく。
そののち王の隣に少女が並び立つと民達に何か言うことはあるか?と王が少女に聞く。
せっかくなので一言だけ、とレナスは返す。
そしてスピーカーから流れる声。
「この国の糧になれることを光栄に思います。
どうか皆様
お元気で。」
この日少女は贄となった。
登