塗り薬

 気づいたら、おでこに違和感があった。かゆみではない、が痛みでもない。今朝起きたときはなんともなかったが。
 念のためと、鏡でおでこを確認してみた。今までしきりに触っていたためか、赤くなっていた。

「たしか、この辺に薬があったような」

 洗面台の鏡の脇は開き戸の棚がある。

「お?なんか効きそうな塗り薬がある」

 棚に見慣れない赤と黄色のラインの入った箱があった。

「いつの間に買ってたのか?」

 箱に大きく「アべンシル」と書いてある。何に効くのか、裏側を見ようと箱をひっくり返せば、カタカタ鳴る。まだ未開封の箱だった。

「アベンシル?聞いたことない塗り薬だなぁ」

 効能の欄には、かゆみ・いたみ、に続き、痺れ?震え?といったちょっと首をかしげる症状も書かれていた。

「効き目、何でもありかよ」

 ホントに塗って大丈夫なのか、怪しくなったので、もう一度、さらによーく箱の説明書きを見る。
 すると、注意の欄に一回り小さい文字を見つけた。

「えーと」

 目を凝らしながらしっかりと見る。

「バ、バカに・・・・・・つける・・・・・・薬ではありません」

 ようやく読み取れて安心した。そして、ホッとして言葉がこぼれた。

「ああ、なら俺は大丈夫だ」

塗り薬

塗り薬

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-04-17

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