青春について
「青春について考えてみようと思う」
突拍子の無い言葉に目をぱちくりさせたのち芳乃は怪訝な顔をこちらに向ける。
「そういう言葉って青春とは無縁な人がいう言葉だと思うんだよね…」
ため息混じりに頬杖をついて雨の降る教室の外へと視線を向ける。
じめじめした空気が肌にへばりつき本当に鬱陶しく思う
「無縁じゃなかったら放課後こんな時間まで教室に一人で残ってないがな」
教科書とノートから目を離さず言葉だけで返事をする男。恐らく今日の授業の復習をしているんだろう。
「そんな威張りながらいうことじゃないなぁって思うよ…」
すかさず返ってくる鋭い一言に心を痛めそうになる。
「まぁきけ。青春って一体なんだと思う?
放課後に友達ときゃっきゃうふふしながら喫茶店でたむろすることか?
部活で汗を流し大会で優秀な成績をおさめるべく仲間達と切磋琢磨することか?
恋人といちゃこらこきながら手を繋いで帰ったり一緒に買い物なんか行っちゃったりすることか?
そんなの俺の思う青春とは全くかけ離れてると思うのだよ。」
「じゃああっくんの思う青春ってどんな事さ?」
「俺の青春は高校に通い勉学に励むというただ一点のみだ、学生の本分は勉強に決まっているだろう。
そういう点では俺の青春はもう既に完成している!」
「あっくんってほんとそういう所あるよね…」
本当にため息しか出ない。
「考えてもみろ、放課後を部活やら遊びやらに使ってしまったらいつ勉強する時間が取れるんだ…奴らは一体いつ勉強をしているんだ…そんなんでいい大学に行けるとほんとに思っているんだろうか…」
わなわなと手を震わせ鼻息荒く熱弁を振るう目の前のガリ勉男に呆れを禁じ得ない芳乃。
窓の外を見ると雨足がやや弱まった気がする。
「まぁでも人それぞれ青春の形ってのは違うと思うから一概には言えないとは思うけどね?」
そろそろ帰るかと鞄を手に持ち席を立つ芳乃。
「そもそもそんな勉強勉強ばっかり言ってるともっと大事なものを見失っちゃうよ?気をつけなきゃだよあっくん。」
小さな子を諭す様な口調に居心地悪そうな顔をしながらも勉学を辞めない様子を見て諦め混じりに再びため息を吐く。
「もう少し勉強してくんでしょ?雨止みそうだから私帰るね。」
「まぁそのつもりだ、また明日な」
「うんまた明日。」
教室を後にして満足そうな顔で帰路へつく。
教室で好きな人と二人きりどうでもいい話をする、それも1つの青春の形ではなかろうか
芳乃の青春は既に完成していた。
青春について
芳乃とあっくんは小学校からの幼馴染で、あっくんが好きで同じ高校に行きたくて頑張って自分の偏差値よりちょっと上の高校に入学したとかそんな背景だったらとてもいいなって思います。