軋む…No.14 5~7

5 回さない風車

5 回さない風車

俺が生まれた家は
風を操る
風に
音を乗せ
匂いを乗せ
季節を運び
暖かかったり
冷たかったり
それが俺に宿る能力

風を感じるれるよう
大人から
渡されていたのが
病室で俺を
笑わせるために
使われていた
風車だった

本来の風車の役割は
風を受けて回る
俺の風車は回らない
いや
あえて回さなかった
何でも
そつなくこなすことは出来ていた
頭も悪くはなかった
大人の期待には答えていたつもりだ
だが
目立ちたくなかった
可もなく不可もなく
そこが俺の落ち着く場所だったんだ

ただひとつだけ
俺が
やらなかったこと
それが風車を回す事だった
すこしだけの反抗

俺の風車は
どんなに風を受けようと回らなかった
すこしだけ回らないように
力を入れて止めていたから

走っては
回りそうになると
わざと力を抜いて
回らないようにしていた
だから全力で走った事なんてなかった

回らないように
回らないように
回さない努力をしていた

あいつと出会うまでは

6 偽物の星と本当の気持ち

6 偽物の星と本当の気持ち

俺らは子供の頃に出会った
何かを諦めながら生きていた俺と
何かを失った彼
彼は失ってはいたが
諦めはしてはいなかった

彼と出会い沢山の話をした
彼の話す夢みたいな話を
聞くだけで
俺の胸は踊っていた
ある夜
彼は空を見上げて俺にこう言った
「この世界の空って偽物って知ってるか?」
俺はこの世界が偽物なのは知っていた
知っていたが
それでいいし
望んだ事もなかった
そもそも
この世界の外なんか
出れるやつなど存在しない
バカげた話だ

「星って知ってるか?」

「知っているとも 今頭上にあるじゃないか五芒星が」

彼は首をブンブンと横にふった

「あれは偽物なんだ!俺知ったんだ!本物の星ってのは あんなにトゲトゲしてないって」

何を言っているのか
わからなかった
彼は続けて

「この世界の外には本物があるんだ!星も空も海も山も俺もお前も!」

俺は驚き

「何を言っている!そんなはずないここは本物だ」

ギシ…
何かが軋む

「この世界の景色には俺は何も感じないんだ
これは本物ではないんだ」

やめろ
それ以上言うな
俺はそれを知っている

ギシギシ…

「だから俺は絶対本物の空も星も全部見てやる!」

彼は振り返り
強い眼差しで俺を見て
手を差しのべ
空を指差ながら

「だから俺と一緒にお前も本物を見に行こう!」

強い風が吹いた

ギシギシギシギシギギギギギ
ギャンギャンギャンギャン

激しい音を鳴り響かせ
俺の風車が回り始めた
目から大粒の涙と共に

「回るじゃねーかその飾り物 ヘッヘッヘヘヘ」

彼は
不器用に笑った


俺も不器用に
涙を流しながら笑った

7 裏切るため

彼のおかげて
諦めたふりをしていた
俺が
それをやめた

俺は
彼を裏切ろうとしていた
それが俺に与えられた使命だった
代々受け継がれた使命

風に聞き耳をたて
風に言葉を乗せ操り
風に毒を乗せ暗殺
これが本当の姿

俺の初任務は
幼少の時から始まっていた
情報を引き出すために
彼の側に置かれた

この国の為
サイト王国の為
サイト王の為に

小さな箱の世界の
小さな国(サイト)

それがこの国
貧しき国
回りの大国に押され
飲み込まれそうな
小さな国
だが周りの大国は手を出さなかった
何故ならこの国には
数多くの能力者がいたから

洗脳と改造と薬物と恐怖と快楽と
ありとあらゆるもので
その能力者を集めていた
もちろん国民は豊かではなかった
お国の為に子供達は
兵士となり
そのためだけに生きていた
その中のエリート家系

風車家

俺は生まれた時から
そつなく何でもこなしてきた
裏切りだって
そつなくこなせるはずだったんだ

初めて与えられた任務
彼の情報収集と
ゆくゆくは暗殺だったんだ

出会った
あの時から
俺が7歳で
彼が6歳

出会った時の彼は
死んだような目をしていた
目に光はなかった

俺は彼を
監視するために会わされた

その時は彼に対して
何の感情もなかった

軋む…No.14 5~7

軋む…No.14 5~7

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-04-02

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  1. 5 回さない風車
  2. 6 偽物の星と本当の気持ち
  3. 7 裏切るため