軋む…No.14 1~4
1 軋む…
俺の名前はNo.14
俺はうたいつづける
不器用で下手くそなうたを
不器用に生きて
不器用ににわらった
あいつのうたを
俺はうたいつづける
この記録(ログ)を残すために
軋むこの身体が朽ちようとも
誰も聞いていなくたってかまわない
あいつが好きだった
空へ月へ星へ海へ森へ風へ石へ
全てに染み込むほど
うたいつづける
あいつが愛したこの世界に
2 変わらないうた
どのくらい時がたったのか
軋んでいた身体も
軋んでいるようにしか
感じなくなった
何百、何千、何万、何億
どれほどの月日が流れたのだろう
空は
あの時と少しばかりか
変わったのだろうか
あいつが
好きだった星達
俺の身体が消えて
空気になり
空気は
風になり
風は
世界を回る
大地がなくなり
星もやがてなくなる
それでも俺はうたいつづける
うたえば
いつだって会える
あのときの俺たちに
あのときと変わらず
そこにある
3小さな箱
俺らの
話をする前に
小さな箱の世界の
話をしよう
小さな箱の世界では
何にでもなれる
自分を偽れる世界
不器用な俺達は
何者にもなれず
素直に
この世界を生きた
結果
傷つき傷つけた
小さな箱の世界では
何度でもやり直せる
それがこの世界
良い事なのかもしれないが
悲しい事なのかもしれない
小さな箱の中で
名前を捨てず
生き抜く人々がいる
その人々には
物語が生まれる
カッコ悪くても
卑怯でも
臆病者でも
そんな者たちの
不器用な物語
4小さな風車 大きな風車
今日も最初から
俺らのログを歌おう
俺らが生まれた季節
新樹の季節
俺はその国に生まれた
俺の家庭は
ブラフマンと呼ばれる
階級
この国では
使う側
ブラフマン(梵)
使われる側
アートマン(我)
2つしかなく
俺は幸い
幸いと言うのが良いのか
分からないが
幸い
使うがわの人種だった
その階級のなかでは
けして裕福とはいえなかった
中途半端な
俺自身のような
俺は
大きな風車が回る土地に生まれた
病弱だった
俺を笑わせようと
大人は
小さな風車を
俺に見せて
回して見せた
期待する大人の顔を見て
笑わなきゃって
笑っていた
それから笑うことが苦痛になった
軋む…No.14 1~4