No.13物語1~3

No.13物語1~3

1 小さな箱

小さな箱を見つめる
者がいた

この世界での物語は
ここから始まる

小さな箱とは
今 貴方が見ている箱それである

なぜここに居るのか
彼には
わからなかった

無性に
寂しく悲しかった
彼は
あてもなく歩きだした

2 近よらない気配

あてもなく歩く彼
足取りは重く
手がかりもない
自分が
何をするのか
何者なのか
何かの気配はするが
それ以上ではない
それ以上というのは
その気配に近よれば
近よる分だけ遠ざかる
一定の距離で
気配はする
最初から
その正体を知ろうとも思わなかった
なぜなら向こうも
明かそうとしていないのが
わかっていたから
どれだけ歩いたか
わからなかった
疲れては眠り
朝が来ては歩き
何日も何日もそれを繰り返した
近寄らない気配と一緒に

3 光る粒と大きな丸

近寄らない気配も
気配を感じなくなった
それが当たり前になってしまえば
息をするのと同じ事

彼は自分が
わからない事すら
当たり前になりそうになっていた

自分の5本の指を見つめ
動かす
動かす意志がその指に伝わり
思い通りに動く

見ているものが
自分の一部だと認識できる

すると欲求なのか
自分のそれ以上を知りたくなる

何かで自分が見れないかと
考えながら
夜空を見上げる
光る粒が夜空に散らばっている
ひときわ 大きい丸い光が美しく
彼と彼の周りを照らしていた

ふと下を見ると

水面に
その光る粒と大きな丸が
空を真似して笑っているように揺れていた

彼はそれを覗きこんだ
そこには
揺れる自分が写っていたのだが
見えそうで
見えない
そこには
5本の指を動かす者がいた
自分の意思で動かしている
これも自分だとわかった

揺れては
いたが笑ってはいなかった
自分が
光る粒と大きな丸とは違う事に
気がついた

No.13物語1~3

No.13物語1~3

ネットの世界 リアルな世界 その狭間で生きる No.13の刻印をもつ者 その者に引き寄せられる者達の物語

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-03-30

Copyrighted
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  1. 1 小さな箱
  2. 2 近よらない気配
  3. 3 光る粒と大きな丸