短歌集『花恋つばめ』

花恋し桜恋しと待ちきれず
海を渡りし我恋燕

来てみれば恋し桜木見当たらず
途方にくれし春雨の中

あれを見な せっかち燕の哀れさよ
雀は囁き鴉はアホウと鳴き続け

淡雪の寒の戻りに震えつつ
ただひたすらにその時を待ち

時過ぎて水ぬるみゆく春の陽に
鴨は北の空へと旅立ち

柔らかき雨のあがりし朧夜に
春風過ぎぬ枝そよ揺らして

あくる朝甘き香りに目覚めれば
蕾緩みてそよと開きぬ

せっかちね 花は笑いてひととせの
甘き逢瀬の夢や再び

早や四月 花恋月の短さよ
涙の雨に散る別れの日

葉隠れに打ち沈みては月半ば
着きし伴侶に家を問われて

君ともに暮らす場所をば失わじと
先に着きてはそれ守れり

花散りて恋し面影我が胸に
いざ妻ともに日々を暮らさん

短歌集『花恋つばめ』

短歌集『花恋つばめ』

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-03-29

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