俳句集【花酔抄】
マスク取り ああ君なのかと 花の下
やったよね 同時入学 大好きな人
杖をつき 見上げる桜 老いの坂
花の下 青赤帽子が 手を連ね
だんごより 花よりわたしを見てほしい
旅立ちの 春を哀しむ 人もあろ
桜より 君の心が気にかかる
じゃあまたね 去る行く君を 抱く勇気無く
きみ知るや 胸に残りし 恋の花
行き違う 花の微笑み 誰を見る
花よ花 なぜに 君はこの私をば
花詠まん しかしニュースの涙雨
(2022/03/30)
花ともに 散るは 乙女の恋心
今宵また 清き流れに 花散る小屋で
苦き酒 飲ませて花を 浮気者
恋う君よ 花と散らすな 今宵の秘め事
貧しきは 花を握りに混ぜて食い
管弦の 止まぬときなし 花の御所
月と花 酒に浮かべて 春の宴
春の夢 朧の月の花の下
朧月 掛かるを待ちて 花の陰
人去りて われ貸し切りの 花の園
葉桜も 花見のうちと酒を飲み
屋根がわら 剥がれしままに 花吹雪
咲き初めし 八重は散らぬよ 春一番
夜桜も 見ずに君は逝きにけり
花散りて まだ数日の夏日かな
哀れなり 野分に折れし紅枝垂
けなげなり折れし枝にも花をつけ
(2019/04/23)
早咲きの 桜かとみれば 枝垂れ梅
公園のカラスも待ちし花弁当
早燕 桜心に染まりしや
目の前の 人も桜も画面にて
恋しやな 花簪と 舞い姿
京桜 加茂の瀬音を聞きながら
都人 花より人に 酔いしれて
花だより 早や南海に野分とや
来てみれば あや何処にぞ 大枝垂れ
春風の 揺らせど散らぬ 花もあり
春待の 小鳥も花に酔いしれて
羽音無く 寂し古木の 桜かな
花乙女 この世の春を 謳歌せり
人も木も 花よ華よと短き春を
(2018/03/26)
俳句集【花酔抄】