真空グランドスラム

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物憂い午後の大気を孕んだ灰色の空の下で透明に停止した光の稜線に沿って白い起伏を描くアーチは不確かな未知に臨んで重力の楔をちぎって上昇し続ける。

私はすべての言葉にうんざりだった。

ビューティフルな断定口調がグロテスクな完全試合に繰り出す無数の先発投手みたいにありふれた意思の突出をもっとも残酷な投球で次々と三振に討取ってゆくそんなデストピアで不確かな灰色の空の下でライト上段に高々と舞い上る大飛球を放ち軽く左腕を持ち上げて思考を断ち切りエモーションだけが発熱するベースを無為の沈黙のうちに蹴ってゆく背番号9番遊撃手の辿り行く荒涼とした一日分の新しい世界をわたしもまた彼のスパイクを追ってすべての言葉を振り切り裏切り疾走していたかった。




   







   

真空グランドスラム

グランドスラムとは満塁ホームランのこと。
元阪神タイガースの藤本敦士が2004年のシーズンに満塁ホームランを打ったときに感動して書いた。

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真空グランドスラム

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-03-25

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