恋心
恋心の一形態です。
次年度の入学児童の保護者名に、凍りつく。
まさか、どうして、よりによって。
忘れたかった。忘れてしまっていたはずの名前に、心が凍りつく。
さくらぐみの女の子。
担任ではなかったけど、すぐに分かった。
あの子が、彼女の。
だって、すぐに分かった。
綺麗に輝く瞳が、緩くウェーブのかかった、色素の薄い髪の毛が、愛らしく均整のとれた唇が。
そしてなにより、その笑顔が。
まるで罰ゲーム。
どうして、よりによって。
担任ではなかったけど、その子の存在が気にかかる。
担任ではなかったけど、その子の様子を見詰めてしまう。
その日は、園内行事の一つ、郵便やさんごっこ。
好きなお友達に手紙を書きましょう。
子ども達は、嬉しそうに手紙を書いて、相手に送り届ける。
自分の気持ちが伝わる、その楽しさを味わって。
「はい、先生」
担任ではないのに、その子が手紙をくれた。
字の書けないその子の手紙は、ピンクの丸がたくさん描かれていて。
私は、また、恋に堕ちた----。
恋心