*星空文庫

待っている間にしなければならないことがある

やまなしレイ 作

待っている間にしなければならないことがある
  1. 一.朝寝坊
  2. 二.救済者
  3. 三.人物像
  4. 四.禁帯出
  5. 五.不意撃
  6. 六.小確幸
  7. 七.解決策
  8. 八.表沙汰
  9. 九.土壇場
  10. 十.第一歩

一.朝寝坊

一.朝寝坊

 三連休が終わった火曜日の朝、さすがに疲れが溜まっていたのか私は泥のように眠り続けていた。

「今、何時だろう……」

 点けっぱなしの電灯のまぶしさにようやく気が付いて目覚めたが、この部屋には窓も時計もないので今が本当に朝なのか自信がない。
 ちょっと前に、仕事に出かける前のおじさんに「今日は学校を休みなさい」「お弁当を買ってきて冷蔵庫に入れてあるから、お昼ごはんにはそれを食べなさい」と声をかけられていたような気がする。だが、それが数分前なのか数時間前なのかの見当もつかない。

「学校かー……」

 今ごろみんな何をしているのだろう。
 火曜日の午前中はそう言えば数学の小テストがあったはずだが、今からではもう間に合わないだろう。これまで勉強だけはマジメに続けてきたのにもったいない気がしたが、今更もうどうしようもない。

 クラスでも目立たなくて友達のいない自分がサボって休んだくらいじゃ誰も気付かないかなぁ、なんて考えて少し寂しくなる 。

 いつも一緒に行動するような友達はいなかったけれど、クラス委員の久保田さんは休み時間に時々話しかけてくれたっけ。頭で考えたとおりに言葉が上手く喋れない私とは対照的に、よく喋る、クラスの誰とでも仲良く出来る、明るくて笑顔が印象的なコだった。きっと彼女のことを嫌いな人間なんて地球上に一人もいないだろう。


 久保田さんくらいは、私が学校に来ていないことに気付いてくれるかな

  ぐぅぎゅるるるぅるる~~~~


 ……ずっとガマンしていたけど、いよいよ限界だ。ただ眠っているだけでも、お腹はすく。学校をサボって惰眠をむさぼるという最高の贅沢を諦めて、私は体を起こすことにした。

「冷蔵庫にお弁当があるって、おじさんは言っていたな……」

 おじさんにそこまで甘えて良いのか悩むところなのだけど、現状で私がお腹を満たす方法はそれしかないのでおじさんのご厚意に甘えることにした。


 思ったように動かしづらい手足をなんとか動かして、ベッドから抜け出す。
 ガチャガチャガチャ……聞き慣れた音が響く。
 ベッド周りの機材を倒さないように注意しながら、チョコチョコと細かく歩いてそれらを抜けて部屋の出口へ。

 ふー。
「ここまでは順調だ」

 引き戸に右手と左手を添えて、勢いをつけて開く。
 視界に入ったのは青。とてつもなく青。そしてお日様。日に青と書いて晴れ。
 寝室からリビングに移ると、向こうの方にある窓の更に向こうに青一色の空が広がっていて、「あー、もう昼かー」と思った。時計を見ると11時40分。数学の小テストはもう終わっちゃっているなー。


「この部屋ってマンションの何階だっけ……」

  おじさんに連れられてエレベーターに乗った時はさすがに私も緊張していたので、よく覚えていない。この様子だと結構な高層だと思うが……


 「部屋の灯りは消しちゃダメだよ」
 おじさんが仕事に行っている留守の間、私に言いつけられている数少ない指示だ。なので、今自分が移ったリビングも電灯は点けっぱなしだった。きっとこの家のすべての部屋の灯りが点けっぱなしになっているのだろう。
 電気代がもったいないと思いつつ、寝室の灯りを点けっぱなしにして引き戸も開けたまま冷蔵庫に向かう。


 最初は思ったように歩けなかったが、歩幅を調整することで少しずつ慣れてきた。人間の適応能力ってすごい。
 キッチンまでたどり着き(といっても、ほんの数歩だけど)、4ドアの大きな冷蔵庫から私のために買ったと思われるお弁当を取り出す。 黒毛和牛とそぼろご飯が一段目、20種類の野菜をふんだんに使ったサラダが二段目という結構な高級弁当だった。

「いくらするんだろう、これ……」
 いや、そもそも仕事に行く前にわざわざ買ってきてくれたのかおじさん。
 一応確認しようと、冷蔵庫の全部のトビラを開いてみる。野菜もお肉も冷凍食品もたっぷり入っていて、おじさんと私の二人が数日間生活するには十分なほど揃っている。これらもお弁当と一緒に買ってきたのか?
 そう言えば、三連休の間おじさんは一度も外に出ていないはずだ。三連休の前から、二人が三日間過ごせるだけの食料がこの冷蔵庫に入っていたことになる。

 うーむ……
 黒毛和牛とそぼろご飯の入った方の段を電子レンジに突っ込んで温めている間に考える。

「これは、ちょっとマズイかもなぁ……」

 と言いつつ、冷蔵庫にあったグレープフルーツジュースを紙コップに注ぐ。「ジュースも飲んで良いよ」とは言われていないが、このくらいイイだろう。ついでにプリンも頂戴した。お昼ごはんのデザートにプリンだなんて! 富豪か、私は!


 ◇


 これから私が何をするべきか考えなければならないが、その前に腹ごしらえだ。お腹がすいていては頭もまわらないだろう。温め終わったお弁当と割りばしとジュースとプリンとそれ用のスプーンを持ってリビングに行く。

 リビングには、床にそのまま足を投げ出せる低いソファとローテーブルがあるので、そこに身を投げる。温かいごはんって最高だね。



 さて、最優先懸案事項だった「食事をとる」というミッションを果たした私だけど、今度はまた新たな課題を背負いこむことになった。「トイレ行きたい……」
 この部屋に来た初日にトイレの場所は教えてもらっている。確か、あのドアだった気がする。さっさと済ませてこよう。

 不自由な足をキレイにローテーブルから引き抜き、丁寧に手をついて転ばないように立ち上がる。ふー。ただ立つだけでも重労働だが、その内に慣れるだろう。


 トイレのドアノブに手を伸ばしたところで、お風呂場や洗面所に通じる引き戸が開いていることに気が付いた。
 洗面所の大きな鏡に自分の姿が映っている。



 おじさんは「かわいい かわいい」と言ってくれるが、私は私の顔が好きではない。
 辛気くさいし、目つきも悪いし、人当たりが悪そうで、 異性に告白されたこともなければ、クラスメイトの女子からもほとんど話しかけられない。「話しかけるんじゃねえ」オーラがぷんぷん出ているのかも知れない。

 唯一例外で話しかけてくるのが久保田さんだけど、誰にでも気さくに話しかけられる太陽のような彼女みたいなコこそが本当に「かわいい」と呼ばれるべき人間だと思う。


 重い左手を持ち上げて、伸びすぎたクセのある前髪をかきあげる。
 その下には愛想のかけらもない目、低い鼻、笑い方を知らない口……そして、その下の首には頑丈な赤い皮をガッツリと南京錠 で固定された首輪がかかっている。寝間着としておじさんに着させられたのは、部屋着で有名などこかのブランドのフリルキャミソールとショートパンツ。薄い胸。細い腕の先には銀色のゴツイ手錠が、細い脚の先には黒い足錠が、それぞれ左右を繋げている。



 そう。私……西村亜季、14歳は。
 四日前の金曜日から、名前すら知らないおじさんによってこの部屋に監禁されているのだ。

 to be continued...

二.救済者

二.救済者

 私の左右の足首は足錠で繋がれているため、小股でチョコチョコ歩く必要がある。鎖の長さは多分40~50cmくらい。部屋の中を歩く分には問題がないが、走ったり、階段の上り下りだったりは難しそうだ。
 格闘技における足さばきがまるで出来ないので、例えば監禁されている人が監禁している人に暴力で立ち向かおうとしても、パンチもキックも碌な威力にならずに返り討ちに合ってしまうだろう。左右の手をつなぐ手錠以上に左右の足をつなぐ足錠の方が、監禁したい相手を屈服させるためには有効なのかも知れない―――


 そんなことを考えながら、チョコチョコと小股でトイレに向かう。
 トイレとは別方向の廊下の先に頑丈な鉄格子が見える。「この部屋」と「外」を隔てる絶対の門。

 もちろん簡単には逃げ出されないように鍵がかかっているのだが、周到なことに鍵は三重になってかけられているとのことだ。

○ おじさんが持ち歩いている物理的な鍵
○ おじさんの指紋認証
○ おじさんしか知らないパスコード

 この中の一つでも揃わなかったり、強引にこじ開けようとしたりすると、高圧電流で脱走者を気絶させるのだとか。そのため、鉄格子には絶対に近寄らないようにおじさんに言われている。
 高圧電流はただの脅しじゃないのかと思うのだけど、そもそも私に付けられている首輪の鎖ではそこまでは届かない。どうもおじさんは鎖の長さまでしっかり計算した上で私を一人この部屋に置いていったみたいで、冷蔵庫やトイレには届くのだが、廊下や窓の鉄格子までは届かないようになっている。



 無事にトイレまでたどり着いた私は、拘束されているせいで不自由にしか動かせない手足をなんとか駆使してショートパンツとパンツを脱いで便座に座った。
 この服も、下着も、全ておじさんに着させられたものだ。普段の私が着ていたものと比べると、恐らく服も下着も値段の桁が1つ2つちがう。こんな高級なものを(多分)新品でもらって良いものなのか悩むところだが、全裸で過ごすわけにもいかないのでありがたく着させてもらっている。ちなみに、おじさんは全裸よりも着衣したまま派だそうだ。


 ………
 ……………
 …………隠していてもしょうがないので早めに言っておくと、この部屋に来たその日のうちに私はおじさんにヤられちゃっている。ただ、おじさんの名誉のために言っておくと、別に強姦されたワケじゃなくて、お互い合意の上で致したのだ。


 ◇


 話は三連休の前日、この部屋に来る前の金曜日の夜までさかのぼる。

 「もう 自宅にはいられない」と考えた私は、家出を決行した。
 持てるだけのお金を持って、出来るだけ遠くに逃げようとしたのだけど、その時点で時刻は夜の8時を越えていて、家を出てから気付いたのだが私の着ていた服は中学校の制服だった。警察官か教師に見つかれば一発で補導されて家出もゲームオーバーになってしまう。

 しかし、意を決して家を出たものの、夕飯を食べていない私はお腹がすいてどうしようもなく(こう書くと、私いつもお腹をすかせているみたいだな)。近所のコンビニの前で、夕飯を買いに入るか悩んでいた。
 よく行くコンビニだと顔を覚えられているかも知れないし、この時間に中学生が制服姿で入ったら印象に残ってしまいそうで、後から警察に行方を探された時にポイントになるかもと頭をよぎった。そもそも手持ちのお金はなるべくとっておきたい。だが、お腹はすいた。


 おじさんに声をかけられたのは、その時だった。

「キミ、どうしたの?」

 誰かがいるとは思っていなかった背後から声をかけられて、思わず息が止まった。警察官だったらどうしようと、恐る恐る振り返ると仕事帰りと思われる知らないおじさんが立っていた。とりあえず警察官の制服ではなかった。

 冴 え な い お じ さ ん

 それが私の第一印象だった。
 辛気くさく、愛想がなく、華がなく、幸も薄そうで、ただマジメで実直なところだけが取り柄―――そんな印象だった。

「お腹すいているのなら、おじさんと一緒にご飯でもどう?」

 ………思ったよりナンパな人だった。


 一歩引いておじさんを見定める私。
 うん、まぁ……いいか、と思い、勇気を出して言った。自分の気持ちを言葉にするのは苦手だけど、ここはちゃんと言わなければならないと思った。

「お腹もすいているけど……今晩、おじさんの家に泊めてくれませんか?」


 私には行くアテがない。しかし、夜中に制服姿でウロウロしていればあっという間に補導されるのは目に見えている。一晩だけでもかくまってもらえれば、明日の朝から行動に移せる。新たに服を買ってもイイし、遠くに逃げてもイイ。


 もちろん、そうした知識に疎い(ホントですよ?)私でも、女として生まれてきた自分が男の人に「泊めてください」と言うことの意味が分かっていないワケではない。
 おじさんは決してカッコイイ男性というワケではなかったのだけど。恐らく私の父親と同じくらいの年齢で、見た目はカッコよくても暴力的で攻撃的で威圧的な私の父親とは正反対な印象だったので、「この人ならイイかな」と思ってしまったのだ。


「おじさんは一人暮らしだけど、大丈夫?」

 私からの突然の提案におじさんも戸惑っていたようだが、そうと決まれば誰かに見られる前にさっさと移動した方がイイと判断したのだろう。

「はい」

 そうして私はおじさんの車に乗り込み、このマンションに向かうことになった。
 自分がそこで監禁されるだなんて思いもせずに。


 ◇


 電車やバスならともかく 、自家用車というものに乗り慣れていない私を察してか、おじさんはドアを開けてくれて、シートベルトの締め方も教えてくれた。
 おじさんは口数が少なく、マンションへの道中も大した会話をしなかった。愛想が悪く、無表情で、明るさの欠片もないのだけど、私が困っているのを察して丁寧に教えてくれるなど気が利く一面も見えて親近感が湧いた。

 どれくらいの距離を走ったのか、車を運転できない中学生の私には分からなかった。車が地上から地下に入り、そこが駐車場だったのでマンションに着いたのだと察した。そこからエレベーターに乗り、しばし沈黙のまま到着を待つ。
 自分から言い出したことだが、この後に自分がおじさんとすることを考えると流石に緊張してくる。



 おじさんの部屋に着いた私の第一印象は、「生活感のない家だなー」だった。
 だだっ広いリビングと、家具やテレビなどには“普段から使っている”という痕跡を感じず、かといってホコリ一つない。まるで、今夜ここに誰かを招き入れるためだけに用意されたような部屋だと思った。

 お腹をすかせている私のために、おじさんは冷蔵庫にあるものでササッと二人分のチャーハンを作った。
 なんという手際の良さ!
 これが一人暮らしをしている男性の生活力か。しかも、何を隠そうチャーハンは私の大好物なのだ。相手がおじさんで良かったなんて思ってしまったが、流石にそれは女として自分を安く見積もりすぎだろう。



 チャーハンを食べ終わると、おじさんは私に歯ブラシをくれて(今思えば、これも結構なイイ値段のする新品だった)二人して洗面所で歯を磨いた。

「お風呂、先に入るかい?」

 歯を磨き終わった後、おじさんの“先”という言葉に私はいよいよかと思った。

「いえ……家を出る前に、シャワーを浴びてきてるので………」


「このままで イイです……」


「このまま……しましょう」



 こうして4日前のことを振り返ってみて気付いたのだけど、私の方から誘っていたらしい。

 ここからの話は詳細に書くとポルノ小説になってしまうので大胆にカットさせてもらうが、おじさんはまず最初に「亜季ちゃんの体を拘束したいんだけどイイかな?」と訊いてきた。

 ふむ……その手の知識に疎い(ホントですよ?)私としてはビックリしたのだけど、そういうものがあるのかと了承した。何てったって、私はおじさんに家においてもらって、ご飯まで作ってもらっているのだから、おじさんの望みをかなえてあげるべきだろうと思ったのだ。

 こうして、私の体に首輪など、その他もろもろがかけられていった。
 つまり、最初は“そういうプレイ”なんだと思っていたのだ。


 んで、そのままえっちをして、疲れて眠ってしまい、土曜日の朝に起きた時にまだ首輪などが自分の体を拘束していることに気が付いた。
 おじさんに外してもらおうとヨタヨタと足錠を付けられたまま何とかリビングまで行くと、この部屋から出るための唯一の廊下に鉄格子が付けられていて、窓にも鉄格子が付けられていた。どちらも昨日の夜にはなかったものだ。朝ごはんの準備をしているおじさんが振り返って微笑む。


 そこでようやく、私は自分が監禁されていることに気が付いたのだった。



 ◇


  長い回想の間に用を足し終わった私は、下着とショートパンツを穿き、水を流し、手を洗い、トイレを出た。灯りはつけたまま。

 おじさんは仕事に行って家を留守にしている間も「部屋の灯りは消しちゃダメだよ」と言っていた。それは、寝室の灯りも、リビングの灯りも、トイレの灯りもだ。
 この家にはありとあらゆる角度からチェックできるようにカメラがいくつもセットされていて、私は監視されている。 カメラの映像は録画されているだけでなく、おじさんが外出先からいつでもチェックできるとのこと。私が11時過ぎまで寝ていたことも、お弁当と一緒にプリンを食べていたことも、トイレの様子さえも全てチェックされているのだ。まぁ、この三連休の間に私とおじさんがしたことを考えれば、今更トイレの様子を見られたところで何ともないのだが……


 これは明らかに「この部屋から抜け出そうとするなよ」という監視だ。
 首輪につなげられている鎖を見る。
 部屋の柱に何重にもグルグル巻きにされていて、無数の南京錠がかけられている。南京錠はもちろん、鎖も首輪も、私のほっそい腕ではこじ開けられそうにない。

 確か、前に図書館で借りて観た昔の映画に、 刑務所かどっかから脱獄するためにスプーンで地道に穴を掘っていた人がいたのだけど……私の装備は、お弁当を食べた時に使った割りばしと、プリンを食べた時のプラスチックの小さなスプーン、おじさんにもらった高そうな歯ブラシくらいだ。

「これで鎖をぶち切るのには何十年かかるのだろう……」

 しかも、その様子はバッチリと監視カメラにチェックされているので、おじさんの機嫌を損ねかねない。それは私としても望ましいことではない。



 そもそも、私はこの部屋から脱出したいのか?という問題がある。

 現在の私は家出中で、もうあの家には帰れないが、だからといって頼りに出来る人もいなくて、行くアテがないのだ。監禁されていなかったとしても、おじさんにしばらくこの部屋に置いてくれないかと頼もうかと考えていたくらいだ。
 女子中学生を監禁している人にふさわしい形容詞だとは思わないけれど、おじさんは紳士的で、暴力とか私の嫌がることは一切しない。えっちの回数と内容は、まぁ……アレなんだけど、それらも私も同意したうえで行っているので今更文句を言うのは良くないだろう。

 ハッキリ言って、私にとって今のこの監禁状態はありがたいのだ。


 だから、おじさんの留守の間――――待っている私がしなければならないのは、「この部屋からの脱出」ではない。私がしなければならない、知らなければならない、調べなくてはならないことは……


 おじさんにとって、私は

 何 人 目 の監禁相手なのか??

 ということなのだ。


 to be continued...

三.人物像

三.人物像

 おじさんはこの部屋で一人暮らしをしていると言ったが、一人で暮らすには部屋数が多いし、冷蔵庫やソファやテーブルなども何人かで使うことを想定した大きさだと思う。

 おじさんは三連休中ずっと家にいて買い出しなどには出かけていなかったので、毎日三食おじさんと私の分の食事を作るだけの材料が予め冷蔵庫に入っていたことになるし。この家に来たその日に私用の新品の歯ブラシが与えられたり 、服どころか下着まで用意されていた。


 もし、私がこの部屋に来なかったら……それらはどうするつもりだったのか?


 そう考えると……おじさんは、金曜日以前から私、というか私くらいの背格好の女のコがこの部屋に来ると分かっていたことになる。
 つまり、こういう推理が出来るのだ。おじさんは私くらいの年恰好の女のコが好きで、この部屋はそうしたコを監禁するための部屋で、そういうコを拉致監禁できないか夜の町を物色しているところ、ノコノコと私がついてきてしまったのではないか?と。


 何より……おじさんは手慣れているのだ。
 監禁までの手際の良さだけじゃない。私に首輪を付けたり、縛ったり、手錠や足錠をかけたりという動きがすごくスムーズなのだ。 こうしたことは、初めて行う時はなかなか上手くいかないものだが、一回でも経験していれば二回目以降は案外カンタンに出来てしまうものだ。少なくとも、私は「二人目」以降ではないかと思う。



 私は何も「実直そうなおじさんが意外に女慣れしていたことにガッカリだ」とか、そういうことを言いたいのではない。問題は……


 “私の前にここに監禁されていた少女がいたのなら
  そのコはどうなったのか??”

ということだ。それは、言ってしまえば私が今後たどる道なのだから。


 ◇


 おじさんにもらった歯ブラシで歯磨きした後、私は情報収集を始めることにした。
 テレビの前までは首輪につなげられた鎖が届かないが、リビングのテーブルにはテレビのリモコンが置いてある。試しにテレビの電源を入れると、ちょうどワイドショーの時間だったのか、思いっきり私のニュースが報じられていた。

「マジか……」

 私が家を出たのは金曜日、三連休を経て、今日は火曜日だ。
 たった四日で事件が発覚してニュースになるとは……こりゃ久保田さんも「あのコ、今日学校に来ていないけどどうしたのかなー」なんてノンキなことを考えてはいないだろう。思いっきり行方不明者としてニュースになっているもの。

 急いでテレビの電源を切ったが、ふと思う。「おじさんがこのニュースを見ていたらどうしようか……」
 もし見ていたら、ちょっと厄介だ。


 犯行が発覚したとき、犯人がとるべき行動とは……


 私はふとテーブルの横にあるラックに気が付いた。
 昨日までは確かになかったはずだ。
 そこには漫画雑誌や携帯ゲーム機などが入っていた。ということはおじさんが仕事で留守にしている間、私が一人でヒマをつぶせるようにと鎖のとどく範囲内にこういうものを持ってきてくれたのか。

 ホント……マメで気配りのできる人だ。
 「気配りのできる人は女子中学生を監禁したりはしないのでは?」と思ってはいけない。


 !!

 「……! 月モのバックナンバーが揃っている!」

 私のキャラではないが、思わず大声が出てしまった。
 月刊モンブラン……私が毎月楽しみにして、コンビニで立ち読みをしている少女漫画雑誌だ。買ってじっくり読みたいのだけど、お財布の事情で立ち読みで慌ただしく読むしかなかった自分にとってはとてもとても嬉しい。しかも、2年分くらいあるぞ。
 これなら昔の話を読み返したり、読んでいなかった作品もじっくり読んだり出来るな――――――


 とか、やっている場合か。
 今はこの部屋に残されたものから、おじさんの情報を収集しなければならない。



 次に私が気になったのは携帯ゲーム機だ。
 私はゲーム機というものを触ったことがないのだが、確か最近のゲーム機ならインターネットというものに繋げられるはず……これでどこかに連絡をつけられれば……うん、「オフライン」って思いっきり出てるね。

 そりゃそーだ。
 そもそもインターネットというもので連絡をつけられる人も、私にはいない。
 私はこういうデジタルでハイテクなものにはとことん縁がなく、私の使える最もハイテクな機械はディスカウントストアで安かったので買ったDVDプレイヤーだ。


 とりあえず生まれて初めてゲーム機というものに触れた私は、せっかくの機会だし、どれかゲームというものを遊んでみることにした。

 「ニュースーパーなんちゃら……」
 「ドラゴンなんちゃら……」

 メニュー画面には横文字のよく分からないタイトルが並んでいたが、その中で私の目を引いた名前がこれだった。


 「密室からの脱出」

 目が覚めたらよく分からない密室に閉じ込められていた主人公が、なんとかそこから脱出するゲームらしい。何だか他人とは思えない。


 ゲームなんてしょせん子供騙しだろうと甘く見ていたが、これがなかなか思ったより手ごわい。目につくところに片っ端からタッチしているだけではダメなのだ。
 しばらく四苦八苦して、このゲームのポイントが「アイテムを入手すること」と「入手したアイテムを組み合わせること」だと分かった。例えば「電池」というアイテムだけでは何もできないが、「懐中電灯」というアイテムと組み合わせると灯りを照らせるようになってクリアーに近づくといったカンジだ。

 何とかして見事に密室から脱出すると。今度はまた新しい密室に閉じ込められてしまった。今度のステージはさっきと打って変わっ……


 って、何やってんだ私は!!

 こんなことをしている間に、気が付けばもう5時である。
 どれだけの時間ゲームしていたのだろう……


 ◇


 覚悟を決めて、私は扉の前に立った。
 この部屋はリビングと隣接してある、私が眠っていた寝室とは別の“もう一つの部屋”だ。このマンションの一室に監禁されて4日が経つが、この部屋には私は一度も入っていない。中を確かめるのは、おじさんのいない今しかないだろう。

「……開いたら別の女のコが監禁されていた、ってオチだったらどうしよう」

 いや、だって……めっちゃ気まずいし。
 私は元々、他人と喋るのが苦手なので、何を喋ればイイのか分からない。とりあえず自己紹介でもして、「いつからここにいるんですか?」みたいな当たり障りのない話題から入るべきか。いや、それはかなり当たっているし障っている気もする。

 しかし、おじさんが何者なのかを知るにはこの扉を開けなくてはならない。手掛かりはもうここにしかないのだから、とりあえず目につくところは全部タッチして調べよう。


 拘束された左右の手で何とか引き戸を開けると、部屋の灯りは点いていなかった。
 あれ? 私をカメラで監視するために全部の部屋の灯りを点けっぱなしにしていると思っていたんだけど……ここの灯りが最初から点いていないということは、この部屋には入らないと踏んでいたのか?


 壁を手で探って(こういう時、両手を手錠でつながれているととても不便だ)、スイッチを見つけて部屋の灯りを点ける。
 ぱっと目についたのは、二段になってハンガーにかけられている無数の服だった。といっても、これはおじさんの服ではない。私に着せるための服だろう。おじさんはえっちをする時もしていない時も、私に色んな服を着せるのが好きなのだ。
 そこにかけられている服は可愛らしい服からコスプレっぽい服まで、ざっと見て70…いや、80着くらい上下セットになっている。中には既に私が着たことのある服も何着かある。私はこれらの服の着せ替え人形……というほど、私はかわいくないと思うのだが、まぁそんなカンジなのだ。


 左を見ると、鎖が届きそうにない部屋の奥に高そうなビデオカメラがいくつも棚に収まっている。

「……」

 初めてこの部屋に来ておじさんとする前、おじさんにビデオに撮ってイイか訊かれた。それは流石にどうかと私も躊躇したのだが、絶対に他の人に見せない、おじさんが一人で見るだけだからと言われてOKしてしまった。
 そしたらまぁ、いろんな角度から撮れるようにとベッドの周りにカメラを16台もセットされたのにはビックリした。テレビ局か。

 しかし、この話の本当の問題は私のあられもない姿が記録されてしまったことではない。
 おじさんは 「おじさんが一人で見るだけだから」と言った。その時はそうかーとしか思わなかったのだが、その後に私はこうして監禁されている。そうなると話が変わってくる。


 この部屋に“私という実物”がいる限り、
 “私を撮影したビデオ”なんて必要ないはずだ――――

 ビデオに記録するということは、おじさんはいつかこの部屋から私がいなくなると思っているのだ。
 一体どうして?こんな風に監禁されていれば出ていくことも出来ないのに?


 その手前の棚は手が届くが、「う……」。この棚は恐らく、えっちする時に使う道具や器具の棚だ。
 私の体を拘束するもの、既に使ったことのあるもの、「どうやって使うんだこれ?」というものまで、たくさんたくさん、それはもうたくさん置かれている。 赤いピンポン玉のようなものに穴が空いてベルトが付いているもの、かたつむりのつののような2本の金属が折り曲がったもの……これらが何なのかよく分からないが、どうもどれも新品みたいだ。

「おじさん、お金持っているよなぁ……」

 これらの道具や、カメラなどの機材、着せ替える服、 お昼ごはんに食べた高級そうなお弁当、漫画やゲームだってそれなりの値段がするはずだ。

「あれ……?」

 そう言えば、アレが見当たらない。
 おじさんが私の体を縛るときに使う“縄”がない。あんなにひんぱんに使うものなのに、この部屋には見当たらない。ここではなく別の部屋に保管しているのかもと、寝室に戻って確認しようと思ったところで気が付いた。

「首を吊られないように、か……」

 私はともかく、フツーの女子中学生がここに連れてこられ、レイプされて、三連休の間もずっとレイプされた後に、一人で部屋に放置されたら絶望して首でも吊りかねない。考えてみると、キッチンの包丁は私の背では届かない高い棚にしまわれていたし、鎖の長さで届く範囲には刃物がない。カッターやはさみどころか鉛筆なんかもない。

 おじさんからすると、せっかく手に入れたかわいいかわいい(私自身は正直そうは思わないけど)獲物に自殺でもされてはたまらないだろうし、そうならないようにしているのか。
 おじさんって、かなり頭がイイよなぁ……私の考えることなんか、先回りしてすべてお見通しな気がする。


 ここまでに分かった情報を整理すると―――

・おじさんはお金持ちだ
・おじさんは頭がイイ
・おじさんはマメな性格で気が利く

 なんだかこう整理すると、理想の結婚相手みたいだ。
 唯一、難があるのは自宅に女子中学生を監禁していることくらいだ。


 
 ふと、奥のクローゼットが目に止まった。
 何の変哲もないクローゼットだが、鎖と錠で強引に封印されているのだ。

 見ると、この錠は4桁の暗証番号で開くタイプだ。私の体を拘束している首輪・手錠・足錠や、首輪に繋がっている鎖などは全て物理的な鍵がないと開かない南京錠がかかっているのだが、このクローゼットだけが暗証番号タイプの錠がかかっているのだ。このクローゼットだけが。


「と言っても……暗証番号なんて分からないんだけどね……」

 私はおじさんについて何も知らない。知らないからこそこうして調べているのだが、それでも何も分からないし、暗証番号なんて想像もつかない。 そう思い、この部屋を出ようとして、電灯のスイッチに手を伸ばしたところでハッとした。


 どうして、この部屋だけ電灯が消えていたのか――――
 カメラで監視するために電灯を点けっぱなしにしているのだと今の今まで私は思っていた。部屋の電灯が消えていたらカメラに撮ってもよく見えないから。だが、それがもし 逆 だったら……??


 足錠でつながれているため小股で、だけどなるべく急いでクローゼットの前まで戻り、4桁の暗証番号を合わせる。その番号は……私が普段使っている暗証番号だった。

 カチャリ

 開いた……これが意味するものとは……
 しかし、今はそれを考えるよりもしなければならないことがある。

 このクローゼットの中身。
 ここまでしておじさんが私から隠したかったもの。
        否
 ここまでしておじさんが私に見せたかったもの。

 厳重にまかれた鎖をなんとか外し、その扉を開けたその中身は私の想像を絶するものだった。


 to be continued...

四.禁帯出

四.禁帯出

 クローゼットの中にいたのは、

 私だった。
 私
 私
 私
 私
 私
 私
 私
 私
 私
 私
 私
 私
 私
 私
 私
 私

 正確には、私の写真がスキマなくびっしりとものすごい数貼られていたのだ。
 自分の顔がキライで、必要最低限しか鏡を見ない私としては、こんなにも自分の顔を見たのは初めてかもしれない。



 これらの写真はどうも、この部屋に来てから撮られたものではない。
 ランドセルを背負っている……ということは、小学生の頃の写真もあれば、こちらは比較的最近の……恐らく先々週あたりの写真もある。
 撮られている場所も、外を歩いているところ、コンビニで立ち読みをしているところ、自分の部屋でテレビを観ているところまで様々だ。部屋……? どの写真も私は撮られた記憶がないので、盗撮ということになる。


 写真が貼りつけられているところは壁かと思ったら引き出しのようで、試しに一つ引き出してみると、そこにも無数のファイルが収納されていた。

 中学1年 10月 外①
 中学1年 10月 外②
 中学1年 10月 お店①
 中学1年 10月 部屋①
 中学1年 10月 部屋②
 中学1年 10月 部屋③……などなど。

 まるで愛娘の成長アルバムのようだ。もちろん「実はおじさんが私の父親だったんだ――!」というオチではないだろう。
 試しに「中学1年 10月 部屋②」を開いてみると、私が部屋でくつろいだり、勉強したり、着替えたり、ムラムラしたりしている姿が事細かに写真とメモで記録されていた。


 10月20日 16時29分 制服から部屋着に着替える。また少しやせたみたいだ。
 どうも成長期のコにしては食事量が少ないようで、これでしっかりと大人の体型になれるのか心配になる。


 やかましいわ。


 ◇


 記録をさかのぼると一番古い記録は、私が小学4年生の頃だった。
 最初は写真もなく、メモ書きだけで、どうやらおじさんは私の家の近所を通りすがったところ、たまたま私を見かけ、そこで

 私 に 一 目 惚 れ を し た そ う な。

 そこからしばらくの間、おじさんは車の中から私の登下校や買い物に出ている姿を盗撮して、こうしてファイルに収めて記録していたのだと。
 女子中学生を監禁している時点でそりゃヤバイ人なんだけど、女子小学生をストーカーして盗撮しているとは、もう一段階更にヤバイ人だった。

 しかし、おじさんの私に対する情欲はそれでは収まりきらず、何とか私の家と部屋をつきとめると、私の部屋をのぞきこめる反対側のアパートを借りた。そして、そこで毎日寝起きしながら、私の部屋を覗き、私の部屋を盗撮して、干している服を観察していたとか(決して盗みはしなかったみたいだが)。

 だが、隣のアパートからでは当然見えない角度がある。
 私だって着替えるときはカーテンを閉めるしね。

 なので、おじさんは大胆な行動に出る。
 私が窓を閉め忘れて出かけた日に侵入し(念のため言っておくと、私の部屋は2階なのだが)、窓の鍵が完全には締まらないように細工をする。窓の鍵は、完全に締まっていない「半ロック」の状態だと、実は外から窓を持ち上げて、下ろす、持ち上げて、下ろすを繰り返すことで摩擦によってちょっとずつ開けることが出来るそうだ。

 確かにしばらく前から窓の鍵がかかりにくいと思っていたが、私は特に気にしていなかった。つまり、窓の鍵が完全に締まらないように細工をすることで、私には気付かれず、おじさんは自由に窓から私の部屋に侵入できるようになったのだ。


 少しずつ少しずつ、おじさんは私の部屋に隠しカメラと盗聴器をしかけた。
 最終的にはカメラは8か所、盗聴器が2か所設置された。これが私が小学6年生の頃だ。

 私はこのマンションに監禁されてからカメラによって24時間監視されるようになったと思っていたのだが、実際には小学6年生の頃からすでに365日監視されていたのか……


「ということは……」

 色々と合点がいったところがある。
 おじさんは私の部屋以外には侵入しなかったみたいだが、私の部屋を24時間365日監視していたのなら“あの家”がどんな家なのかが分かっていたのだろう。

 だから――――「心配」なのか……


 ◇


 本来なら、女子として「ずっと見られていただなんて気持ち悪い!」みたいな反応をするべきなんだろうけど、私の率直な気持ちは「少し、安心した」だった。
 おじさんからして見れば4年もストーカーしていた念願の相手をこうして監禁して「ようやく手に入れた」現状、すぐに殺すことはないだろうし。少なくともこの4年間は私に執着していて、他のコを監禁しているような余裕もなさそうだった。

 どうしておじさんの用意してくれた服が私のサイズにピッタリだったのかとか、何故この部屋に来て最初に作ってくれた料理が私の好きなチャーハンだったのかとか、どうやって私の愛読している漫画雑誌を知っていたのかとか、腑に落ちたことも多い。
 それと、何より……おじさんが私のことを「かわいい かわいい」 としきりに言っていたのもお世辞じゃなく、本気で私をかわいいと思ってくれているのだろう。



 4年続いた記録の終盤、
 いよいよおじさんは計画を立てる。

 4年間ストーカーを続け、2年間部屋を監視し続けた私を拉致監禁しようという計画。

 両親が帰らない夜をねらって、私の部屋の飲み物にちょっと睡眠が深くなる睡眠薬を仕込んでおく。私が深い眠りに入ったところ、いつも通り窓から侵入する。大きめのバッグに私を詰め込み、部屋のカメラと盗聴器を回収して、そのままこのマンションに連れ込む。

 その準備は終わり、あとはいつ決行するかというだけだったが、この一週間は珍しくウチの両親が共に家に帰っていたのでなかなか決行出来ない――――――ここで記録は終わっている。


 恐らく、なかなか計画を決行できずにやきもきしていたところに、家出をした私を見かけて声をかけたということだろう。拉致するリスクもなく、相手がノコノコと監禁されにやってくるとは、おじさんからすればカモがネギとドナベとガスコンロを背負ってやってきたみたいなものだったことだろう。



 さて。
 ファイルを引き出しに戻し、クローゼットを締め、錠も戻そうかと考えたが、意味もないのでそのままにしておいた。リビングに戻ると、時計は8時をまわっていた。そろそろおじさんも帰ってくる時間だろうか。



 私のするべきことは――――――

 おじさんにとって私が特別な存在だったとしても、それがいつまでも続く保証はない。理想と妄想が積み上げられた分、一瞬で幻滅される可能性もある。
 そうなる前に、こちらから攻撃をしかけなくてはならない。タイミングを間違えれば私の命運は尽きる。それを見極めなくてはならない。



 “あの部屋にだけ電灯がついていなかった”理由とは、
 おじさんからのメッセージとは、


 ガチャリ

 玄関の扉が開く音がする。おじさんが帰ってきたのだ。


 私は首輪の鎖が届くぎりぎりの位置まで鉄格子に近づく。
 鉄格子の向こうにおじさんの姿が見えた。急いで帰ってきたのが分かる。少し、息を切らしている。


「お帰りなさい、おじさん」

 だが、まだ攻撃のタイミングではない。
 その時が来るまで私は、全力で媚びる演技をすることにした。

 to be continued...

五.不意撃

五.不意撃

 さっきまで着ていたフリルキャミソールから着せ替えられて、私の服は黒と白のコントラストがはっきりしたロングのメイド服に変わっていた。しかし、メイド服に着せ替えられたからといって家事をさせられるワケではない。単に、おじさんがメイド服を私に着せるのが好きというだけの話だ。

 時刻は9時過ぎ。

 おじさんの帰宅から既に1時間近くが経過しているのだが、その間にしていたことは伏せさせてもらおう。


「ちょっと遅くなってゴメンね。今から夕飯を作るから待っていてね」

 おじさんはキッチンに立って鼻歌まじりに料理を作る。
 その間、私はリビングに設置された“檻”に入れられている。



 この“檻”は本来はSMプレイ用の商品らしいのだけど、おじさんは主に料理をする時に私をここに入れる。料理には火や包丁を使うし、無防備になりがちなため、監禁されている者が攻撃をしかけるとしたら絶好のタイミングと言える。そうならないため、おじさんは予め私を“檻”の中に入れて閉じこめておくのだ。

 “檻”には南京錠が三重にもかけられていて、手錠も足錠も首輪もかかっている。
(まだだ……まだ、その時ではない……)
 私は虎視眈々と、その時を待つ。


 “檻”は長時間私を入れていても大丈夫なように下にマットが敷かれていて、平均よりも小柄な私にとっては、ここから出られないという一点を除けばなかなかに快適だ。おじさんはとにかく私の体を気遣って負担にならないようにしてくれる。

 「夕飯が出来るまで“檻”の中で横になっててイイよ」とは言われているのだが、私はじっと正座して、料理中のおじさんを見つめる。

「あの……おじさんって料理が上手ですよね……いつから料理しているんですか?」
「そんなに上手くはないと思うけど、一人暮らしを始めてからずっとだから慣れてはいるね」
「私は料理できないんで……いつか教えて欲しいです」

 そんな他愛もない話をする。


 出来たのは、オムライスとコンソメスープと簡単なサラダだった。
 おぉ、オムライスか……初めて食べるぞ。

 “檻”から出してもらった私は、おじさんの向かいではなく、おじさんとL字になるように座らされる。私がLの縦棒の位置、おじさんがLの横棒の位置と言えば分かりやすいだろうか。
 私は右利きなので、もし仮に私が持っている箸やスプーンでおじさんを突こうとしても上手く振りかぶれない。こういうところまでおじさんはよく考えている。

 手錠をつけたままで食事が出来るのか疑問だという人もいるかも知れないけど、4日目ともなるともう慣れたものだ。 こうしたことは、初めて行う時はなかなか上手くいかないものだが、一回でも経験していれば二回目以降は案外カンタンに出来てしまうものだ。

「テレビでも点けようか?」
 私に気を遣ったのかおじさんがリモコンに手を伸ばそうとしたので、私は咄嗟に「あ……いえ、テレビよりおじさんとの二人の時間を大切にしたいです……」と体を寄せた。わざとらしかったかも知れないけど、今テレビを点けてはならないと思った。

(まだ……その時じゃ……ない)

 私は攻撃のタイミングをじっと待つ。
 おじさんの心が最も無防備になる瞬間を……

  食事中はあまり会話をしなかったが、密着した体からお互いの体温が伝わってくる。おじさんの左手が私の太ももを這ったが、私は笑顔で「今はご飯を食べている時間じゃないですかー」と押し返した。おじさんは性欲と食欲が同時並行でも大丈夫なのか。私は、そこは分けて欲しいなぁ。


 ◇

 夕飯の後、二人で歯を磨き、二人でお風呂に入る。

 お風呂に入るということは裸になるということで、当然(?) そういう展開にもなるのだが、この話は全年齢向けの健全なお話なので、そうした描写は割愛させてもらう。


 髪も体も洗い、そういったことも済ませた私達は二人で湯船につかっていた。

 入浴の時だけは首輪や手錠・足錠を外してもらえるのだが、湯船につかる際は濡れたタオルで後ろ手に縛られ、 おじさんに背中から抱きしめられるように入る。 首輪も手錠もかかっていない上に、お風呂場というのは壁も床も固く、シャワーヘッドのように武器になるものも多いので、おじさんも警戒してのことだろう。

 しかし、この体制だと…… おじさんの底知れない性欲を背中に感じることになるので、なかなか落ち着かないな……



「あの……このお風呂も広いですよね……二人で入ってもちっとも窮屈じゃないし……」

 おじさんは私の体を撫でていた手を止めて、少し間があった後「うん」とだけ答えた。


「クローゼットの中を見ました」

 このタイミングだとは思っていなかったのか、おじさんは驚いて全身を硬直させる。


 そうだ。
 これは、おじさんにとって審判が下される瞬間なんだ。


 おじさんは4年間、私をストーカーして、盗撮して盗聴して、拉致監禁の計画を立てていた。弁解の余地もなく、犯罪者なのだ。誰よりも、おじさん自身がそれを自覚している。

 だから、私にそれを見せた。
 あのクローゼットを閉じていた鍵の暗証番号は、私が普段使っている暗証番号と同じ……私の誕生日だった。もちろん私の部屋に出入りしていたおじさんならそれを知ってあの番号にしたのだろう、私だけはあのクローゼットを簡単に開けられるようになっていたのだ。そう考えると、おじさんは最初からアレを私に見せるつもりだったと考えられる。

 あの部屋だけが灯りがついていなかった理由も、逆算して考えれば分かる。
 おじさんが外出先からでもカメラで全部の部屋を監視していると言っても、24時間張り付いて監視できるワケではないだろう。だから、灯りをあらかじめ消しておくことで、「私があの部屋に入ったかどうか」を電灯が点けられたかどうかで確認できるようにしたのだろう。部屋の灯りを消しておくことで、逆にあの部屋だけを特別に監視していたのだ。


 私が、おじさんを赦すか
         赦さないか――――――――――

 おじさんは息を呑んで、その答えを待った。


 だから、
 攻撃のタイミングはここしかないと私は踏み込んだ。

「私は、奥さんとちがって 出ていったりなんかしませんよ」

 あまりに予想外の言葉だったのか。おじさんは腕の力を緩めた。
 その一瞬で私は、後ろ手に縛られた体をなんとか前に倒して、おじさんの体から離れた。



 そう。
 この家は元々「一人で住むには広すぎる」のだ。
 部屋数が多いだけでなく、お風呂も家具も家電も少なくとも二人以上を想定した大きさで……恐らく、家族が三人、四人と増えることを想定していたように思える。おじさんは、そこに一人で暮らしていたということは――――


 私はおじさんに向き合って、しっかりと目を見て、言おうと思った。
 喋るのが苦手な私でも、ここはちゃんと言葉にしなければならない。


「私、おじさんのことが好きです。
きっと……おじさんが私のことを想ってくれているのと同じくらい、私もおじさんのことが好きです。」


 半分は「見捨てられたくない」という保身からだったが、もう半分は本心だった。
 初めておじさんに声をかけられた時、どうして「この人ならいいか」と思ったのか、その時には分からなかったのだけど、きっと これは おじさんが小学4年生の私に一目惚れをしたのと同じ理由だ。

  この世界に見放されて、ただ一人で生きていかなければならないと思っていた。
  私とおじさんは似ている。だから、放っておけなくて、愛おしくて、手に入れたくなってしまう。


 私の目からぽろぽろと涙がこぼれて湯面を叩く。
 心の内を晒すというのは、こんなにも不安で、こんなにも怖くて、こんなにも情けなくなってしまうものなのか。

「私、2年後には16歳になります。」

 きっと、おじさんもあのクローゼットの中を見せようと決めた時、今の私と同じくらい不安で、怖くて、情けなくなってしまったことだろう。なら、私もそれに応えなければならない。

「そうしたら……
私をお嫁さんにしてください。」


「ずっとずっとこの部屋で、
子どもも作って、家族を……今度こそ、みんなが笑顔になれる家族になりましょう。」


 これが私のとっておきの攻撃。
 私が唯一できる攻撃。



 ぼろぼろと、信じられないくらい私の目から涙が落ちまくるけれど
 同じくらいおじさんの目からも涙が流れていた。

「赦して……くれるのか……」

 私は黙って笑顔で頷く。

「うわぁああああああああああああああああああああああ」

 堰を切ったようにおじさんは泣きくずれた。私の前でおじさんが涙を見せたのは初めてだった。
 私の薄い胸にしがみつくように、抱きつくように、 ただただおじさんは泣き続けた。


 to be continued...

六.小確幸

六.小確幸

 そこからの2カ月間は、間違いなく私の人生で最も幸せな時間だった。


 私は、おじさんは奥さんに出ていかれて一人暮らしをしているのだと推理したのだけど、正確には結婚はしていなかったそうだ。
 奥さんになる予定の人はいて、おじさんがその手のプレイに慣れていたのもそういうことだったのだろう。このマンションをその彼女と購入し、後は結婚式の日を迎えるだけだったのだが、式の当日その彼女は来なかった。後日届いた手紙によると、実は彼女にはもう一人肉体関係を持っていた男性がいて、そちらの子どもを妊娠したと分かり、逃げ出したとのことだ。

 おじさんは親戚や同僚の前で一人「結婚式に花嫁が来なかった男」として晒し者になり、二人で暮らすはずの広い(この)マンションで一人寝起きしていたという。私にはまだそんな経験はないので、愛している人に裏切られた気分がどんななのか想像もつかない。

 おじさんが私に一目惚れをしたのは、その頃だったらしい。



 それなりに年齢を重ねているおじさんが小学4年生に恋をしたことを多くの人はバカにするだろうけど、私にはおじさんの気持ちがよく分かる。私とおじさんは似ていたのだ。


 ◇


 欠けていた半身にようやく出会えたかのように、私とおじさんはひたすら、それはもうバカップルのように、新婚さんのように、ひっついてイチャイチャしていた。

 首輪や手錠は外してもらえていないが、特に不自由はないので私には不満はなかった。これが付けられているということは、まだ私はおじさんにとって「所有したい」対象なのだと思うし、鎖につなげられていることでおじさんとつながっていることを実感も出来た。

 包丁はまだ持たせてもらえていないが、料理の盛り付けなど、簡単な手伝いくらいはさせてもらえるようになった。料理中のおじさんの横に立たせてもらえるというのは、信頼されているということだろう。
 本当はおじさんが仕事から帰ってくる前に夕食を準備して待っているくらいのことが出来たらイイのだけど、そのためには料理を覚えなくてはならないし、手錠を外してもらわなければならないからジレンマだ。


 髪を切った。
 おじさんの好みの髪型を訊くと、おじさんは実は短い髪……ボブくらいが好きだそうで。おじさんの理想になりたい私は髪を切ることにした。おじさんはビックリしていたけど、私は昔から自分の髪は自分で切っていたので慣れたもんだ(もちろん、この時だけは手錠は外してもらっている)。

 好きな人が自分を想ってくれる―――それを実感するだけで人は生きてゆける。
 自分のために髪を切った私を見ておじさんは喜んでいたみたいだし、それを見た私も心底うれしかった。


 ◇


 おじさんが仕事に行っている間、私が出来ることもなくなってきた。
 体力が落ちないように部屋をグルグルと歩いている(足錠を付けたまま)が、すぐに飽きるし、漫画やゲームを1日中というのも仕事に出かけているおじさんに申し訳なくなってくる。

 「何か欲しいものはないかい?」とおじさんが訊いてきた。

 私は、ふとおじさんに誕生日を尋ねた。
 おじさんは怪訝な顔をしたけど、教えてくれた日にはまだそこそこ日数がある。

「編み物がしたい……」

 私はいつもおじさんにもらってばかりだから、編み物をして私からおじさんに誕生日プレゼントをしたいと告げた。翌日、おじさんから初心者向けの棒針編みの本と棒針と毛糸をもらった。誕生日プレゼントを作るためのプレゼントをもらうというのも、おかしな話だけどね。

 何を編むかは、まだ内緒にしておく。
 おじさんも楽しみだと言ってくれて、私もおじさんのために何かが出来るというのは幸せだった。その日から、おじさんのいない昼間は、せっせと編み物の練習をすることになった。


 本当に幸せな時間だった。
 おじさんと出会い、私はよく笑うようになったと思う。



 だが、そんな幸せな時間は唐突に終わった。




 監禁生活が始まって2か月が経過して――――



 私は妊娠していた。


 to be continued...

七.解決策

七.解決策

 冗談抜きで私はそういうことに疎かったので、えっちの時は全ておじさんに任せていたし、おじさんのしたいことを全てしていた。だから、避妊についてもおじさんに任せておけば何とかしてくれているんだろうと勝手に思っていた。

 しかし、私をこの部屋に連れてきた当初のおじさんは後先を考えていなかったので(そりゃ、後先を考えている人だったら女子中学生を拉致監禁する計画なんて立てないだろうし……)、ただただ欲望のままに私とえっちしていたそうな。
 三連休の後、お風呂での私のプロポーズを受けてから、おじさんはちゃんと将来を考えるようになり、避妊もそこからちゃんと対策するようになったのだけど……どうやら、その頃には既に遅く、私はもう妊娠していたみたい。


 陽性反応が出た検査薬を握って座る私を見て、おじさんは言葉を失っていた。
 こんなに動揺しているおじさんを見るのは、あのプロポーズをした日のお風呂以来だ。

 一方の私は、対照的に冷静だった。
 現実的ではないというか、どこか他人事感があるというか……自分が妊娠したことよりも、こうして狼狽しているおじさんを見るのがつらかった。おじさんが次に発する言葉がこわかった。


 だから……

「私、産みたい」

 おじさんが何かを言う前に、私は先に言葉を発した。



 私が妊娠したことで考えられる最悪のシナリオは、こうだ。
 妊娠は放っておけないが、監禁している少女を病院に連れていけば事件が発覚してしまう――――そう考えたおじさんが、私を殺し、私もろとも赤ちゃんもなかったことにしてしまうという展開だ。


 もちろん、私を心の底から愛してくれているおじさんにそんなことが出来るとは思えない。
 おじさんは少し心配性なくらいに私の体を気遣うし、ちょっとした擦り傷ができたくらいでも大袈裟に救急箱を持ってきて消毒して絆創膏を貼るほどだ。そんなおじさんに私を殺せるとは思えない。

 だが、世の中には「愛しているから殺す」みたいな殺人事件がたくさんある。
 私には理解できないけど。

 ◇

 だから、先手を打って、私の希望を言った。
 今回はかなりの割合が保身だったのだけど。

「この部屋で、おじさんの赤ちゃんを生んで、おじさんの赤ちゃんを育てたい。」

 赤ちゃんは病院で産まなければならないという決まりはなく、自宅出産という選択肢もあるはずだ。子どもが生まれてしまえば、この先どんなことがあってもおじさんが私を殺すことなんて出来なくなるだろうし。そもそも私はおじさんの子どもを産みたいとプロポーズの時に言っていたじゃないか。ちょっと時期が早まっただけだ。


「それはムリだよ」

 おじさんは言う。

「自宅で産むにしても、その前にはちゃんと病院に行って検査とかしなければ危険だよ。亜季ちゃんの体をそんな目には合わせられない。」

 おじさんが私の体を大切に想ってくれることが裏目に出た。おじさんは私の体にリスクを背負わせたくないのだ。

「それに、もしこの家で産んだとして、その子は将来どうなるの? 戸籍を申請することも出来なければ、学校に通ったり病院に行ったりすることも出来ないよ」


 ◇


 しばらく二人して黙った後、おじさんが口を開いた。
 私が想定していた「最悪のシナリオ」どころではない予想外の展開が始まった。


「おじさん、今から亜季ちゃんの両親と話してこようと思う。」




 ……は?

「亜季ちゃんも知っての通り、おじさんはずっと亜季ちゃんの家を見ていたけど、亜季ちゃんの両親はハッキリ言って亜季ちゃんに無関心だったじゃない。」

 それはまぁ、そうですけど。
 “無関心”どころか“いなくなってくれればイイのに”くらいに思っていたことでしょうけど。

「この2か月、警察のデータベースを見ていたんだけど、亜季ちゃんの家出って捜索願が出ていないんだ」

 驚いた。
 いや、驚きすぎて何に驚いているのか分からないくらいだ。おじさん なんで そんなとこ見てるのよというのが、正直な気持ちだった。


「娘が家出をして2か月もほったらかしにしているような両親なら、
おじさんが亜季ちゃんを引き取って結婚したいと言っても承諾してくれると思うんだ。」

 論理の飛躍がすごい。
 確かに、両親は私が家からいなくなってくれた方がうれしいと思っていただろうけど……おじさん、ちがうんだ。それはちがうんだ。私が家出をしたのは、両親からほったらかしにされていたからとかじゃないんだ。決定的な、根本的な、基礎的なところがおじさんは間違っているんだ。


「じゃあ、おじさんはご両親と話してくるよ」

 え? え? え?
 ちょっと……それは……


「待って!! 行かないで!!」

 ようやく声が出た。

「私を好きだって想ってくれているのなら、行かないで!!」

 おじさんにしがみつく私。
 だって、だって、そんなことをしたら おじさんは……

 しかし、おじさんは私の手を離し、「大丈夫。おじさんを信じて待っていてね」と言って、この部屋を出ていってしまった。


 一人残された私は、この部屋に来て初めて、拘束されている我が身を呪った。


 to be continued...

八.表沙汰

 おじさんの帰りを待っている私の気分は、判決が下されるのをただただ待たされているソレだった。

「おじさんもこんな気持ちだったのかな……」

 あの日、お風呂で私の言葉を待っていた……おじさんの気持ち。


 ガチャリ

 玄関を開ける音がする。
 私は相変わらず、正座して指をついて待つ。


 鉄格子の向こうに立っている人の姿を見る。
 おじさんだ。
 良かった。
 良かった……のか?

 おじさんは急いで鉄格子の鍵を開けようとしているが、焦りのせいだろう手間取っている。そりゃ三重なんかにしてかけるから……



 部屋に入ってきたおじさんは息を切らして、私を見下ろす。
 私はおじさんを見上げ  ドキッとした。おじさんの私を見る目は、昨日までとはまるでちがっていた。得体の知れないものを見るような、知らない人を見るような……


「亜季ちゃん……君の家に行ってきたよ……」

「……」

「両親はいなかった」

「……」

「も う い な い って言われたよ……」

「………? 誰に?」

「警察官に……」

「………」

 そうか、そのパターンがあったか。
 知られないと思ったんだけどね……

 この家では新聞を取っていない。
 おじさんは仕事が終わると毎日急いで家に帰ってきてくれるし、仕事の休憩中などもカメラからこの部屋の様子を見ていたはずだ。家にいる間は、テレビを点けられないように私からそれとなくイチャイチャしようとした。

 おじさんはニュースなんて見るヒマがなく、そうしてそんな事件があったことすら話題にならなくなるくらいに時間が経ったものだと思ったんだ。でも、そうか……事件のあった家は今も見張りの警官が立っていたか。それは考えていなかった。

「ご両親に会いに来たって言ったら、警察官の人が親切に色々と教えてくれた。
犯人だと疑われるかと思ったけど、そんなこともなかったよ。」

 そりゃそうだ……
 警察は間違いなく、犯人が誰なのかを確信しているのだし。


 そして、
 審判が下される。



 おじさんは私の目線と同じ高さまでしゃがみこんで言った。

「亜季ちゃん、自首しよう」



「おじさんも罪を償うから、亜季ちゃんも一緒に自首しよう」


 言って欲しくなかった。
 おじさんだけは、
 おじさんだけは私の味方になってくれると思っていたのに、
思っていたのに、
思っていたのに、
思っていたのに、
思っていたのに、
思っていたのに、
思っていたのに、
思っていたのに、
思っていたのに、
思っていたのに、
思っていたのに、
思っていたのに、
思っていたのに、

 私は おじさんのことを 赦したのに ――――
 おじさんは 私のことを 赦してはくれなかった―――

 ロングスカートの下に隠していた包丁で、私は おじさんのノドをかっきった。
 信じられないような顔をしたが、そのまま血を噴き出して、おじさんは横に倒れた。


 こうしたことは、初めて行う時はなかなか上手くいかないものだが、一回でも経験していれば二回目以降は案外カンタンに出来てしまうものだ。ましてや、私はこれで五回目だ。私が人を殺したのは、これで五人目だ。



 案外カンタンに、私はおじさんを殺してしまった。



 to be continued...

九.土壇場

九.土壇場

 自分を産んでくれた人を母親というのなら、私には母親の記憶がない。

 幼い頃、父親から「お母さんは死んだ」と言われたことがあるのだけど、今にして思えば暴力的だった父親に耐えかねて出て行っただけなのかも知れない。ともかく、小さい頃の私は父親一人に育てられていた。


 私が小学校に入る頃、父親が再婚して、新しい女性が我が家に加わった。
 自分を育ててくれた人を母親というのなら……残念ながら、この女性も母親とは言えない。何故なら彼女は私を育ててはくれなかったからだ。ただ父親の妻になった人というだけだった。

 新しく同じ家に住むことになったその女性は、私を産んだ母親と古い知り合いのようで、そしてとても憎んでいたようで、大きくなるにつれて産みの母親に似ていく私が気に食わないようだった。

「本当に、あの女に似てかわいくない顔だ」

 顔を合わせるたびにそう言われ、私はどんどん自分の顔が嫌いになった。


 ◇


 それでも、父親が家にいる頃はまだマシだった。
 食卓を囲み、家族みたいなことをしていた。

 私が小学3年生の頃、父は外に恋人を作ったようであまり家に帰らなくなった。
 残されたのは、血のつながらない女と私。

 同じ家に住む女は、私と顔を合わせるのを嫌い、私を2階の奥の部屋に押し込み、別の男を家に連れ込むことも多くなった。
 たまに帰ってくる父親も、私のそんな境遇を気にすることもなく、お酒を飲み、男を連れ込む女に怒鳴ったり暴力をふるったりするようになった。それは逆ギレでしかないだろうと思いつつ、関わりたくなかったので私も家の中で2階の自室にこもるようになった。



 決して多くはなかったが、食費というか生活費のようなものが毎月封筒に入れて階段に置かれる―――これが、私と、私の“両親のような人達”との唯一の交流になった。

 その中からやりくりをして、毎月の給食費と食費と、その他にも生活に必要な諸経費を出していった。
 台所は使わせてもらえなかったから、コンビニやスーパーでお弁当を買ってくるのが主な食事だったが、お金がないときは一つのパンを何食かに分けて食べることもあったし、そのお金すらないときは何日か食事を我慢することもあった。コンビニのチャーハン弁当は特にお気に入りだったので、やりくりがうまくいった時などに奮発して食べていた。

 洗濯やシャワーなどは、同じ家に住む女が出かけている間にササッと済ませる。時々、女が数日ずっと外出しない日が続くと、私は体も洗えず、服も同じものを着るしかないので学校で「くさい」と陰口を叩かれたこともあった。


 それが、およそ小学4年生の頃だ。

 おじさんがたまたま道端で私を見かけ、気になったというのは、単に私の見た目がかわいかったからだけではないだろう(繰り返すが、私は本当に自分の顔がかわいいとは思えない)。


     世界に拒絶された存在――――――


 私とおじさんは似ていたんだ。


 しかし、私はこの生活が不自由だとは思わなかった。
 テレビは、この部屋に押し込められたときに小さいやつを置いていってくれたので、夜はそれを観て時間をつぶした。生活費をやりくりしてDVDプレイヤーを買ったので、図書館でDVDを借りてきて昔の映画を観ることも多かった。お金はないので、本は図書館で借りたり、コンビニで立ち読みしたり。

 この部屋の中でだけは、私の暮らしは充実していた。

 授業参観に誰も来なかったとか、積立金が払えなくて修学旅行に行けなかったとか、そういうこともあったけれど。元々、友達はいなかったし、さほど気にならなかった。中学を卒業して高校生になれば、アルバイトも出来るようになるし、今より楽になるだろうなんて考えていた。

 あの日までは。


 ◇


 その一週間は珍しく、毎日のように父親が帰ってきて、私と一緒に住んでいる女と口論していた。そのせいでおじさんは私を拉致できなかったのだが、その話は置いといて……

 どうやら二人はそれぞれ別に再婚したい人がいるので、正式に離婚をしたいということだった。
 なんだよ、すごくめでたいことじゃんかよとはいかないのが「私」の存在だ。どちらが「私」を引き取るのかで揉めているのだ。

 どちらが引き取るもなにも、一緒に住んでいるだけの女は血もつながっていなければ、お互いに避けあって会話すらしていない。
 しかし、父親の方も、再婚したい相手には高校生の娘がいて、どうやら新しい家族3人でこの家で暮らしたいとのことで―――「私」というババを夫婦で押し付けあっているのだった。



 そして、その日が来た。
 一週間も話し合ったが(怒鳴り合った、の間違いかも)、押し付け合いが終わらなかった2人は、互いの再婚相手(予定)を同席させることにしたのだ。

 私が一緒に住んでいた女の再婚相手(予定)の男は急な用事で来られなくなってしまったため、1階では「父親」と「その現在の妻(私が一緒に住んでいる女)」と「父親の再婚相手(予定)の女」と「その娘」の4人が話し合っていた。当人である私には選択権がないので、ただ決められた答えに従うだけだと、2階の自室に引きこもってテレビを観ていた。

 すると、突然ドアが開いて、そこに知らない娘が立っていた。


「せっまい部屋」

 それが、その娘の第一声だった。
 見た目からすると、恐らくこの娘が父親の再婚相手(予定)の連れ子なのだろう。高校生というから私より少し年上なのだろう、高圧的な態度で私に話しかけてきた。

 「失礼な人だ」と思ったが、私は言葉を飲み込んだ。ひょっとしたら、この娘は私の義姉になるかも知れないし、一緒に暮らしていくことになるのかも知れない。なるべく波風を立てないようにしよう。

「それと、なんかくさくない?」

 あっちから波風立ててきやがった。

「ごめんなさい。でも、アナタには関係ないでしょう。」と、私は答えた。


「は? 聞いてないの? 来週から、ここは私の部屋になるんだよ?」

 えー……1階ではそういう話になっていたのか。
 ということは、私は一緒に住むだけだった女の方に引き取られるのか。

「私と、私のお母さんも、来週からこの家で住むんだけど、4人で暮らすには部屋が足りないじゃん。アンタの部屋は私が使うから、今週中に机とか片づけておいてよ」

 ん……? やはり父親の方に引き取られるのか……?

「それだと私の部屋はどこに……?」
「アンタの部屋はないから、廊下かなんかで寝てなよ」

 何かが私の全身をかけめぐった。
 “両親らしき人”からどれだけほったらかしにされても、私は“この部屋”があれば満足だった。ここが世界で唯一の居場所だった。


 でも、
 でも、
 それすら、私には残されないのか――――


 娘が一歩、部屋に入ってくる。

「ちょっと……勝手に入らないでください……」

「は? ここは来週から私の部屋だって言ってんだろ。
アンタこそさっさと出てけよ」

 娘が睨みをきかせて顔を近づけたとたん、私は机の上に置いてあった果物ナイフで娘の首をかっきった。
 台所に入ることを許されない私は、簡単な刃物を買って自室に置いていたのだ。果物は滅多に食べられないのだが、良かった、役に立った。


「うがややああああああああああああ」

  唸り声のような悲鳴をあげて、娘は尻餅をついた。
 血が飛び散ったが、致命傷ではない。そりゃそうだ。私のような素人に、一撃で人を殺せるワケがない。


「なに? なに!? 信じらんない!!」

 娘は必死に這いつくばりながら廊下に逃げる。
 あー、良かった。このまま“この部屋”でトドメを刺したら、掃除するのが難しいくらい汚れちゃうよなーと思っていたので、廊下に出てくれたのはありがたい。私は娘を追って廊下まで出て、娘の頭を踏みつけ、床に押しつけ、馬乗りになる。


「うそっ……うそ、冗談でsy

 母音を言い終わる前に今度はちゃんと頸動脈を切断する。
 血が噴き出し、やかましかった娘はただの肉塊になった。


「ちょっとー、 どうかしたのー?」

 ハッとした。
 1階から誰かが上がってくる。

 聞いたことのない声なので、恐らく「父親の再婚相手(予定)」だろう。
 これはマズイ。この状況を見られたら「ちょっと怒られる」くらいでは済まない。

 どうするべきか考える前に、体が動いた。
 2階の廊下に飛び散った血を見て固まっていた女の首をかっきると、あっさりと知らない女が死んだ。こういったことは、初めて行う時はなかなか上手くいかないものだが、一回でも経験していれば二回目以降は案外カンタンに出来てしまうものなんだなと思った。



 さて……
 ここで冷静になる。

 1階では、「父親」と「その現在の妻(私が一緒に住んでいる女)」が2階の騒動など知ったこっちゃなく相変わらず怒鳴り合っている。どうしようかと考えたが、これはもう誤魔化しようもないので、2人とも殺すことにした。

  居間の扉を開けてもこちらに背中を向けている父親は、私が返り血にまみれていることにも、既に2人を殺しているナイフがにぎられていることにも気が付かなかった。最後の最後まで、父親は私に無関心のまま死んだ。


 最後に残された一緒に住んでいるだけだった女は、驚き、恐怖におびえ、その後ひたすら私を罵った。ここまで育ててやったのにとか、あの女に似てどーのこーのとか、気色悪いとか、そんなことを。確かに毎月の「食費」をもらっていた恩はあるのだが、「育ててやった」は言い過ぎだろう。その言葉を私に言ってイイ人間なんて、この世界に一人もいない。

 そうして、かつて一緒に住んでいるだけだった女も死体になった。



 家が広くなった。
 人間だったものが4つほどそこらに転がっているが、これで存分に台所も浴室も使えるぞ!

 鏡に映った私を見ると、「赤い」と思った。服も顔も返り血に染まっていた。

「とりあえずシャワーかな……」

 今までは一緒に住むだけだった女が帰ってくる前にと慌ただしく浴びるしかなかったシャワーが、今日からはじっくり浴びられるぞ。浴槽にお湯を張って湯船につかるなんてこともその内に試してみたいが、一週間ほど体を洗っていなかったからまずは念入りに隅々まで洗わなくては。


 しかし、浴室から出てきた私が聴いたのは、電話が鳴る音だった。
 といっても、私はケータイ電話を持っていない。ということは……鳴っていたのは、一緒に住んでいた女のケータイだった。


 しまった。


 本来なら、今日ここに来るはずだった人物がもう一人いたんだ。
 一緒に住んでいた女の、再婚相手(予定)の男だ。

 せっかくこれでこの家を広々と使えるぞと思ったが、その男がここに来てしまえばただじゃ済まないだろう。


 「もう この家にはいられない」と考えた私は、家を出ることに決めた。
 “あの部屋”を離れるのは惜しかったが、こうなってしまえば仕方ない。出来るだけ遠くに逃げよう。所持金を全て集め、服も比較的汚れていないものを探したら中学の制服になった。それを着て、私は家出を決行した。

 その直後、お腹を空かせてコンビニの前で立ち往生しているところ、おじさんに声をかけられたのだ。
 後におじさんがあの部屋を監視していることを知った私は、「一部始終をおじさんに見られていたのでは?」と思ったのだが、おじさんの仕事が終わって家に帰ってくる時間を考えると恐らく「監視用のアパート」に帰る途中で私を見かけておかしいと声をかけたのだろう。


 私の事件は、三連休の後の火曜日にはワイドショーで取り上げられていたので、きっと一緒に住んでいただけの女の再婚相手(予定)があの家を訪ねて異変に気付いて通報したのだろう。
 その時点で警察が犯人を「外からの侵入者」ではなく「あの家に住む私」だと確信していたのは、おじさんが私の部屋に仕掛けたカメラがばっちりと私の最初の殺人を記録していたからだと思われる。偶然にもおじさんは、自分の仕掛けたカメラで身の潔白を証明したことになる。よかったね、おじさん。もう死んじゃったけど。


 そう。
 もう、死んじゃったけど……


 to be continued...

十.第一歩

十.第一歩

 おじさんは私が刃物に触れないよう、首輪につなげた鎖の長さを考えて、届かない位置に包丁をしまっていた。

 だが、『密室からの脱出』をプレイした私は、 「アイテムを入手すること」と「入手したアイテムを組み合わせること」がポイントだと知っている。
 えっちなアイテムがたくさん置かれている部屋から「かたつむりのつののような2本の金属が折り曲がったもの(鼻フックというものらしい)」と、「おじさんの誕生日に向けて編んでいたマフラー」を合成して、「手の届かない位置にあるものを引っかけて取るアイテム」を作った。これを投げて、引っかけて、引っぱって、包丁を手に入れた。そして、私の家から帰ってきたおじさんの首をかっきったのだ。



 ◇


 私が殺したのは、おじさんで5人目になる。
 最初に殺したあのやかましかった娘の時は、上手に一撃で仕留められなかったが、2人目以降は慣れたものでサクサク一太刀で殺せた。こうしたことは、初めて行う時はなかなか上手くいかないものだが、一回でも経験していれば二回目以降は案外カンタンに出来てしまうものだ。

 しかし、おじさんは私にとって「初めて愛した人」で「初めて愛してくれた人」だった。
 初めて「自分が愛して、自分を愛してくれた人」を殺した私は……



 ただ


 ただ、ひたすらに涙が止まらなかった。


 私がおじさんの家に監禁されてうれしかったのは、毎日あったかいごはんをおじさんが用意してくれたり、あったかいお風呂に入れてくれたり、ちゃんと洗濯した服に着せ替えてくれたりというだけでなく。
 一緒にご飯を食べて、一緒に寝て、誰かの帰りを待って……と、ちゃんと家族のようなことが出来たことだった。


 その家族を私は殺してしまった。
 また、一人ぼっちになってしまった。今度こそ私の居場所はこの世界からなくなってしまった。


 ……と、その時おじさんが、肉の塊になったと思ったおじさんが最後の力をふりしぼり、最後の声を発して

「ジャケットの内ポケット……」

 そうしておじさんは少し微笑み、動かなくなった。


 おじさんのジャケットをめくり内ポケットを探ると、鍵の束が出てきた。これは……
 私の体を拘束していた首輪、手錠、足錠、その他もろもろの鍵だ。

 最後におじさんが私に言いたかったことがこれなのか……と思ったが、とりあえずこれで私につながっていた全ての拘束が解かれた。


 しかし、この部屋には鉄格子がハマっていて、私はこの部屋からは出られない。私はそれを覚悟でおじさんを殺し、私自身もこの部屋でおじさんと一緒に死ぬつもりだった。


         が、


 ハッとした。


 鉄格子の鍵は三重だ。

○ おじさんが持ち歩いている物理的な鍵
 → これはおじさんの内ポケットから出てきた鍵の束の一つで開いた。

○ おじさんの指紋認証
 → おじさんの死体を引きずって合わせたら開いた。

○ おじさんしか知らないパスコード
 → これがどうしようもない。これはおじさんに聞くしかないのだが、これを知っている唯一の人間がもう死んでしまっている。だから、私はもうこの部屋から出られないと思っていたのだが………



 私は、思いついた4ケタの数字を入力した。


 開いた。
 三重にかけられていた鉄格子の鍵が、あっさりと全て開いてしまった。

 前にもこんなことがあった。
 あの時、クローゼットを開いた暗証番号は私が普段使っている暗証番号と同じ……私の誕生日だった。



 今度の、鉄格子のパスコードは……おじさんの誕生日だった。



 普通なら、監禁している者と監禁されている者の関係で、監禁されている方が監禁している人の誕生日を知る機会などないだろう。だけど、私はおじさんを愛してしまった。だから、おじさんの誕生日を知りたくなったし、教えてもらったし、その日に向けてマフラーを編んでいた。



 最後に、おじさんが私に言いたかったこと。

 それは恨み言でも、憎しみでもなく、


 「家族になってくれて ありがとう」だったのではないか。


 ◇



 それから何時間か、私はおじさんだった死体に体を寄せて座っていた。
 この世界で、ただ一人、大好きで、大好きだと言ってくれた人。

 都合の良い解釈かも知れないけれど、殺されてもなお、おじさんは微笑んでくれた。赦してくれた。それが家族なんだと、家族を知らずに育った私は初めて知ることが出来た。

 お腹に手をあてる。ここには、おじさんとの子がいる。
 私を愛してくれた人の子が………


 まだ、死ねないな。


 一人、シャワーを浴びて返り血を洗い流し、おじさんが私に着せるのが特に好きだった服に着替えた。

 これから先の人生に、おじさんと過ごした2カ月間以上に幸せな日が来るとは思えない。でも、それでも、この思い出とおじさんの子どもがいれば生きてゆける気がした。


「さようなら、おじさん。私やっぱり おじさんの赤ちゃんを産みたいや」

 鉄格子の向こうで私は振りかえり、微笑んだ。
 そうして、私はこの部屋を出ていった。

『待っている間にしなければならないことがある』

『待っている間にしなければならないことがある』 やまなしレイ 作

私にはしなければならないことがある。タイムリミットはおじさんが帰ってくる時間だ。 【毎週水曜夜~木曜朝くらいに更新します】 【この本は2018年8月末日までの限定公開とします】 配信者のブログはこちら→ http://yamanashirei.blog86.fc2.com/ 配信者のTwitterはこちら→ https://twitter.com/yamanashirei

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更新日
登録日 2018-03-21
Copyrighted

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