白を持っている。私は白、という手段を持っている。
私の持っている白は、あんまり優秀じゃない。持っていても特に有益ではない。
透き通った真っ白で光にあたるとキラキラと輝く。
真っ白のくせに七色の光でキラキラと輝きだす。それを私は「キレイ」と言って年に3回くらい晴天の空の下、かざす。それくらいのモノ。
実際使える瞬間はそんなもの。しかし持っているという意識はその何倍も私を助けた。

学校ではクラスメイトがくだらないアイドルの話をいかにも楽しそうに話していた。その関連商品、ブロマイド、雑誌の切り抜きやシールを机いっぱいに広げてなにやら昨日のTV番組の話。誰誰が好きとか、センスがないとかあるとか、でもやっぱり付き合うなら○○君かな―、といい大人を君付けで呼ぶ。
つまらないことですぐに黄色い声を上げる。がははと下品に笑う。彼女らの全てが不快で極まりなかった。私はそんな頭の悪い連中との付き合いはとうに止めていた。
なのにあいつらは輪に入れてもらえない可哀想な子という憐れみのような目を、平気で人に投げかける。そうして目が合った途端、勝ち誇ったような色を目の中に浮かべてほほ笑むんだ。
見当違いもいいとこだ、
と心の中で呟きながらゆっくりと口角をあげながら目をそらす。
私はお前らよりもいいことをたくさん知っているぞ、と。

朝はぎりぎりまでベッドにしがみつき、五分で朝食を終えるとTVの今日の占いを局を変えて立て続けに二つ見ながら、ソファの上で一晩過ごした洋服を着る。
服を着たり脱いだりするときは他の何かに集中してさっと済ませるのが一番いい。小さなレースが首と腕回りについた真っ白の半そでシャツ。そこからにょきにょきと伸びる浅黒い腕。幼な作りの自分の身体はあまり見ないようにしていた。
見詰めて疑問を持ったら最後、自分が本当は人間とは全く異なった、脳味噌だけが肥大化した宇宙人であることに気付いてしまう気がした。

白は私を益々高潔にした。
白を持っている。
それだけで他者とは異なった存在であるような気がした。
実際私は他の人間より頭一つ抜けて出ていた。
勝っていた。
白を持つことによってその気持ちは反復と増殖を重ねた。
そんな心の中は、そんな心の中は。その気持ちはいつしか心の中から抜け出して、私は人を見下すことを覚えた。
蔑んだ目で笑う方法を覚えた。

白を持つことはとても愉快だ。

「白」を持って。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-09-14

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