危険なつばさ 第1章
君は考えた、ことがあるだろうか。僕の苦しさ、ほんの、少しの楽しさ、生きるために考えることは、重大なんだよ。君と僕は違うね
僕は、波止場で生まれた。目の前は海だよ。
海は、波と波と波とズウゥと、向こうまでゆれているよ。
入り江には、船が、何そうか、止まっているよ。
出て行くのもあれば、入って来るのもあるよ。
岸壁に、船が着くたびに人々は、忙しく騒がしくなるよ。
僕は、そんな、海の見える、小高い丘の上で生まれた。
全体の色は、茶色、羽根に黒い点々が並んでいる。腹は灰色でぽってりしてるよ。
でも、僕は、兄弟達とは少しだけ違っていたんだ。二枚の羽根の点々は同じだよ。
でも、僕の尾羽根をみてよ。ピンと広げると尾羽根の先に一列に赤い線が入っているんだよ。
太陽の光を受けると、これが光るんだよ。身体に力を入れてもひかる。
子スズメたちは用心深い。
カラスも、トンビも、ワシも、タカも、ああ、もうそんなに、たくさんの種類の鳥が、居たかどうかも、知らないけれど、母鳥はいつも巣が、敵に見つからないように、得物を、捕まえても、真っ直ぐには巣へかえってはこない。
あっちの枝にちょっと、とまり、茂みをくぐって藪の中を通っていつも、周りに気を使ってヒナの、安全をまもっているのさ。
母さんが、帰ってきたら、ヒナ達はピイ、ピイ、ピイ、大声で鳴いて、飛べない羽根をばたばたさせて大騒ぎだ。僕も、もちろん鳴くよ。
母さんがくちばしに、バッタだの、トンボだの、くわえているのがみえるもの。
僕は、羽をバタバタさせて背伸びをして、母さんをまつよ
その時、ちからが、はいるんだ。尾羽根に、いや、からだ全体に、明るい太陽の光が、尾羽根の赤い線に反射してひかるよ。
兄弟達は、ビックとする。僕は、もっとしょんぼりする。
兄弟達は、僕のうえに飛び乗って、自分のちいさな羽根を広げて隠そうとするんだ。
上に、のっかている、兄弟達が、争ってえさをもらうよ。
皆が、夢中で食べ始めると、ぼくは、やっと、首をそっと挙げることができるんだ。
母さんは、もう、次の狩へ出かけるために、後ろをむいて飛び立とうとしている。
僕は、母さんを頼りにしている。
「お母さんというのは、子供が、かわいいものなんだよ。」兄弟達はそういう。
だから、僕は、チュン、て鳴くんだ。「僕は まだだよ。」って、その時、力を入れるから、尾羽根が、キラッとひかるんだ。お母さんは、チック、と僕を見て、困ったような、顔をするよ。そして、忙しそうに飛んでいくんだ。
フ フ、と、兄弟達が、そっぽを向く。これが毎日の悩みなんだよ。だから、僕はくふうすることにした。
弱っている、かこうをする。かっこうをしてるんだと、自分に、言い聞かせていたけど、
エサはもらえないし、踏まれるし、本当に弱っていたんだ。
母さんが、僕がうずくまっている隙間に、力強く止まった日、僕は、大きく口を開いて得物のすぐ下にもっていった。お母さんは、口の中へ得物をいれる。
兄弟達は、エサを もらうため、大騒ぎしながら、僕の上にとびのってくる。光っていても、光っていなくても、兄弟達にとっては、いつものことさ。なにしろ夢中だからね。
尾羽根は光らない、光ってもみえない。僕は、いつも神経をピンとはっている。
羽ばたく音、風の音、木をゆする音、足が、小枝をつかむ音。
「ききわけるんだ。」
そして、巣の中が、ギユウ、ギユウに、なるくらい僕たちは、みんなおおきくなった。
僕は、早く飛びたかった。自分でエサを取りにいったほうがいい。僕がつづけて、何回か、もらったら、お母さんが首をかしげて考えこんでいる様子が、わかるように、なったんだ。
「また、あの子にやったよ。次はむこうの子に、しなきゃね。」
僕は、飛ぶ練習をはじめた。力いっぱい羽根を振る。兄弟達が、飛び乗ってくる。
「お前は、はばたいちゃだめ。」
僕の、身体は小さい。ノビノビと、育たなかったからね。パッパッパッ、近くの、小枝から、枝へと、つないで、
みんなが、出て行ってから、僕は、飛ぶんだ。
夢中で、練習している兄弟達は、ぼくのことを、すっかりわすれている。
僕も、尾羽根が光る、なんて考えていられない。
子供は、巣から落ちてはいけないのだ。
満足に飛べない鳥が、巣から落ちると、適に見つかる。地上には、蛇も、蛙も、僕の見たこともない敵が、いっぱい、いるって、母さんが、いってた。
「巣は、大切よ。必ず戻ってくるのよ。しっかり飛べるようになるまでは、止まる枝を先に捜しておくのよ。飛び出してからじゃ見つけるのに時間が、かかるわ。」
僕は、足に力をいれて、一番近くの枝まで飛ぶ。次の枝は羽ばたかなければならない。
ひとかき、ふたかき、みかき、兄弟たちのを見る。「僕はこわい。」
羽ばたくと光る、兄弟達が、とびのってくる。
みんな、飛ぶのに夢中だ。誰も見ていない。長い間考えていた事は、すぐには変わらない。
「考えるんだ。」
その時の周りの様子で、判断しなければならない。いつも、おなじ、じゃないんだ。
羽ばたくまえに、僕は、あたまのなかを、整理しなくてはならない。
僕の心は、きづついている。
直すのは誰、手伝ってくれるものはいない。そんな事は、わかっている。
もうすぐ、みんな、とびたっていく。遅れるわけにはいかないんだ。
そして、みんな飛び立っていった。僕は、ひとりになった。
危険なつばさ 第1章
幼い時から、考えているかて?ずーとさ。