夕空へ遺言を

死神がもしも
僕を迎えに来たなら
決して見つからないように
時間を稼ぐんだ
陽が落ちて夜になるまで
絶対頭だけは守るんだ
君とあの夏に創った記憶を忘れないように
誰かに全てを知らせるんだ

誰にしようか

死神がもしも
僕を殺す刻まで待つなら
この世界に生きた証として
何かを残すんだ
仲間や家族に別れを告げて
絶対後悔だけはしないようにさ
そうだ今もどこかで悠々と生きてる君に
格好いい言葉を残すんだ

なんて書こうか

今日でもしも
僕が居なくなったなら
この人生は楽しかったと
伝えて欲しいんだ
きっとこの場合だからこそ
言える話になるけど
もう二度と僕として生きられないから
夕空へ遺言を託すんだ

こんなもんか

“今までありがとう
僕は若くして今日で死ぬらしい
仲間にも家族にも直接別れを告げた
君にだけ文面で伝えて申し訳なく思うよ
思い返せば七年前
行ってくるよと言ったきり
君が帰ってくることは無かった
皆は君を殺したが僕は君を今でも待ってるよ
いつでも帰っておいで
僕はここにいるから”

短かった走馬灯
それはあっという間に
そよ風に吹き消された

夕空へ遺言を

夕空へ遺言を

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-03-13

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