小説家になりたい
東京新聞の「300文字小説」で落選した作品です。
母が言う。「あんた、小説家になるって言ってから家にこもりきりだけど、ちゃんと書いてるの?」
「またかよ…」と俺は毒づく。
「どうなのよ」
「書けては、ないけど…ほら、長いのを書くのは大変でさ、まず完璧なアイデアが浮かんでからじゃないとだめなんだよ。短いもんはさ、いまあんまり募集してるとこないんだよ。短いもんならいつでも書けるんだけどさ…」
「またそうやって言い訳ばっかり。そんなだからあなたはいつも…」
「うるさいな!」俺はつい、そばにあった読みかけの新聞を母に向かって投げつけてしまった。床に目を落とすと「300文字小説」という文字が目に入った。
「やってみなさいよ」と母が言う。「いつでも書けるんでしょ?」
小説家になりたい