小説家になりたい

東京新聞の「300文字小説」で落選した作品です。

 母が言う。「あんた、小説家になるって言ってから家にこもりきりだけど、ちゃんと書いてるの?」
 「またかよ…」と俺は毒づく。
 「どうなのよ」
 「書けては、ないけど…ほら、長いのを書くのは大変でさ、まず完璧なアイデアが浮かんでからじゃないとだめなんだよ。短いもんはさ、いまあんまり募集してるとこないんだよ。短いもんならいつでも書けるんだけどさ…」
 「またそうやって言い訳ばっかり。そんなだからあなたはいつも…」
 「うるさいな!」俺はつい、そばにあった読みかけの新聞を母に向かって投げつけてしまった。床に目を落とすと「300文字小説」という文字が目に入った。
 「やってみなさいよ」と母が言う。「いつでも書けるんでしょ?」

小説家になりたい

小説家になりたい

書けない理由はいくらでも思いつくけれど。300字。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-03-11

CC BY
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