半陰陽
この大地を手中に収めてみせる
「あの女の人生をズタズタにする何かいい方法があるかしら?」
隣にいるライファが、
「地下牢に死ぬまで入れますか」
と答える。
ライファは后・アリシアが信頼している家臣だ。
「それは何年か先の話よ。あの女を娼館で働けるだけ働かせて、
復讐はそれから」
「私の知り合いに、高利で金を貸す金貸しがおります。
をして見ましょう」
「お願いするわ。それにしてもあんな女の分際で私の夫に手を出すとはね。
ライファ。今、あの女はどうしている」
「こちらが、用意した『あの男』と2人で暮らしております。」
「『男』とは…あの、ジョイ?」
「そうでございます。大酒のみで、賭け事が好きで、働らかず、
いつも借金で首がまわらない、女癖が悪いあの、
ジョイでございます。高利の金貸しに命じて、
『ジョイには上限なく幾らでも金を貸せ』
と命じております。同時に街中の他の金貸しにはジョイが来たら、
門前払いをするように申し付けております」
「よくやってくれたわ、あの女とジョイの住む家には?」
「もちろん、朝、昼、夜、関係なく取立て屋を雇って向かわせています。
あれでは眠る事も出来ないでしょう。
付け加えると女の娘2人は先月奴隷としてはした金で他国へ売られていきました。
もちろん、私が手配した者に業者の振りをさせました」
「ああ!なんて面白いこと!楽しいことね!」
「あの女もいい年ですから娼館と言っても、
高級店で働くのは無理でしょう。村はずれの傾きかけた娼館の経営者に、
幾らか金品を渡しあの女が尋ねてきたら
『悪条件で必ず雇うよう』命令を出しておきました。
あの女は手を下さなくてもそのうち性病で死ぬでしょう」
「ライファ、あなたって素晴らしいわ!
なんて頭がいいの。さすが、私の乳兄弟ね」
「お后さまの為なら何でも、何でもお申し付けください」
后とライファは抱きあった。
「后様、今日はこの城の3階には誰も?」
「ええ、王は明日まで狩りに行っているし、
召使たちにも今日は2階までの鍵しか渡していない。だから」
「誰に見られる事もなく楽しめるって訳」
ライファが私をベッドへ運ぶ、ライファと后は抱き合った。
「不思議だな、こんなに怖い女性なのに、素晴らしく魅力的だ、お后様は」
「アリシアって呼んでっていつも言っているでしょう?
それに、私のどこが怖いの?」
キスをされながら言った。
「自分のことを棚にあげている事は認めるけど」
「怖いっていうのは、怖いほど美しいって事だ。僕の美しいアリシア」
「で?どうなんだ?后の様子は?」
「あいかわらずです。王と私の関係に気がつくこともないまま。
お幸せそうです。憎い街の女に復讐を果たし、
僕との関係を王に悟られていないと信じ込んでいらっしゃる」
「しかし、お前は、后の乳兄弟なのにいとも簡単に私になびいたもんだな」
「私はこの国を支える臣下ですから。
当然の事をしていると自負しております」
「あいかわらず、おまえは口が上手いな」
「しかし…。お前は不思議だ」
「私が?でございますか?」
「お前は男であり男でない、女でもあり女でもない」
「生まれつきです」
「后を抱いた、その日の夜に私に抱かれ、朝を迎える」
ライファは半陰陽者であった。
男と女両方の性器を持つ。
これのせいで、どれほど虐められてきたか。
唇を噛む。
「俺はのし上がってやる。王も后もただの利用できるカードだ」
小さくつぶやく。
王の子供を身ごもることも、后・アリシアに子供を生ませることも出来る。
いずれ、必ず、この国を支配する一族の長として君臨してやる。
その、為なら何でもするつもりだった。
子供の頃から、
この身体のせいで酷い仕打ちを受けてきた。
あの、辱め。
生涯掛けて復讐してやる。
アリシアを抱き子を孕ませる。
王に抱かれ、子を孕む。
子供たちを近隣の国の権力者に嫁がせこの大地を
手中に収めてみせる。
それがライファの胸にある壮大な復讐だった。
半陰陽
野心家の人は、きらいだわ。