REPLAY 第1章
REPLAYの第一章です!
ある日から、幽霊が見えるようになって
話しかけてきたら、あなたはどうしますか??
第1章 器用貧乏
イヤな夢を見た。
きれいな女性が生きたまで男にメスのようなモノで切り裂かれている夢。
リアルだった。
血の匂い。女性の香水の匂い。
男のキツイタバコの匂い。
すべてが不快だった。
どうしてこんな夢を見たのだろうか?
恐い映画を見たわけでもない。
深層心理で僕は人を殺したいのだろうか・・?
しかし、犯人の顔は鮮明に覚えているし・・・どちらかと言えば
殺される女性から見た映像に見えた。
そんな僕の憂いを吹き飛ばす声。
「くるみ~!起きなさいよ~!!遅刻するわよ~!!」
『くるみ』とは僕の事。
僕の名前は鳴川 来未(ナルカワ クルミ)
『くみ』と間違われる事があるが、『くるみ』と読む。
女の子のような響きなので僕自身はあまり好きではない名前だ。
名前の意味は、ある唄が由来ならしい。
僕が好きな唄だから良かったが・・・。
僕は、公立高校に通う、高校2年生。
数理化学科というクラスに通っている理数系の人間。
家族構成は、僕と母と父の3人だ。
普段はあまり会話しない。
僕は母が苦手だ。
時計を見ると針は7時30分を指していた。
僕は、制服に着替え、トーストとコーヒーを適当に腹に流し込んだ。
TVはいつものように殺人や、知らない国の戦争や紛争。政治家の汚職、芸能人のプライベートを嘆いている。
毎日の様に報道されるソレに僕はうんざりする。
殺人だって戦争だって、汚職も芸能報道も僕には関係ない。
ただただ、僕たちの好奇心、興味を煽るようなソレが垂れ流されている。
みんな、つまらないこの生活を変えようとつまらないソレを垂れ流す。
だからといって、この生活は何一つ変わらない。
すべてがナンセンス。
「この事件うちの近くじゃないか・・・!」
普段無口な父が新聞を見ながら口を開いた。
「あら。知らなかったの?」
僕はあまりTVを見ないから詳しくは知らないが切り裂き魔事件の事だろう。
凶器は小型のナイフ。ネット上ではその殺人は芸術だと騒ぎ立てる者達もいた。
人を殺すことが、その死体が芸術だなんて僕には到底理解できない世界だ。
僕の住む小さな町がTVに映る。
自分の知っている町がこうしてTVに映る。
ソレは、言いようのない不安感や恐怖心が僕を襲った。
僕はまたあの夢を思い出して気分が悪くなったので
早く学校に行くことにした。
「くるみ?今日は何時位に帰るの?」
母が出迎えに来て僕に質問した。
『7時くらい。今日は友達とご飯たべるから夕食はいらないから。』
母はその答えに不服そうな顔をした。
「・・・じゃぁ。気を付けて行くのよ。」
母は何も言わなかったが、多分こんな僕が気に食わないんだろう。
『ん。』
僕は扉を開き今日もつまらない世界を生きる。
僕と今の母とは血が繋がっていない。
本当の母は僕が5歳だった頃に亡くなった。
母には不思議な力があった。
人には見えないものが見えたり、人の心を見ることができたり。
父はそんな母を嫌った。
僕にそんな奇妙な話をする母を良く思っていなかった。
母はフランス人で、僕も母が生きている時はフランスに住んでいた。
そして母はフランスで弁護士をしていた。
その能力を活用して冤罪の無い世界にしようとしていた。
そんなある時、母は殺された。
法廷で。
容疑者は死刑を免れることはできなかった。
母がどうがんばろうとも。
だから腹の立てた容疑者は法廷で銃を放ち母を殺した。
彼は逃げた。
そして暫くして沢山の人を殺害し、捕らえられた。
彼は死刑になった。
母が亡くなって、父は祖国の日本に僕を連れて帰った。
そして、若くて綺麗な女性を娶った。
僕は再婚に関してなにも思わない。
父は父の人生を歩めばいいと思う。
だけど、僕は今更新しい母を母とは思えない。
比べるつもりも何も無いけれど
僕は彼女を母とは認められないようだ。
フランスでの生活が今役に立っていると言ったら
フランス語と英語が話せるくらいだろうか。
3ヶ国語話せて、その上外見の違う僕はまるで
毛色の違う雛鳥のようだった。
昔は特に珍しがられ孤独だった。
今では数少ない友人が僕の支えである。
いつものように音楽を聴きながら学校に向かっていると
いきなり話しかけられた。
「おっはよ~!クルミ!!」
黒い髪に優しそうな垂れ目の彼は僕の友人、結城 零弥(ユウキ レイヤ)
通称ユキちゃんだ。
『おはよう。』
僕は今朝のこともあり気だるく答えた。
毎度思うが僕のこの目立った髪色の所為で遠くからでも僕が
僕だと分かってしまう。
何色かと問われると金のような茶色のような不思議な色だ。
「なんだなんだ?元気ないなぁ。今日はあれか。日が強いからか?」
僕の母は白人とアルビノのハーフだった。
だから僕は少なからずその血を受け継いでいるわけだ。
とゆうわけで僕は日に弱い。
肌は白く、目は少し紅み掛かっている。
『今日は別に日はそんなにだけど。』
そう答えるとユキは一瞬安心したような顔をし、すぐに表情を変え
すこし真面目な顔をした。
「てゆうかさ、お前アノ事件どう思う?」
アノ事件とは恐らく切り裂き魔事件のことだろう。
今はあまり話したくない内容だ。
朝からあんなものを見たわけだし。
『なんで?』
素朴な疑問だった。
高校生が真面目に話し合うような話題ではないはずだ。
確かに、僕たちの身近で起きている事件だが少なくとも僕たち男は
襲われないだろうし。
被害者はすべて女性。
恐らく犯人のターゲットは綺麗な女性だ。
「いやぁ・・・。情報収集・・みたいな・・?」
焦ったようにユキは答えた。
情報収集・・・?
何のためにそんな事をしているのだろうか?
まさか犯人を捜すつもりなのか・・?
『一体、何のつもり?変に嗅ぎ回るのは良くないって。殺されるぞ。』
僕がそういうと、ユキはいつものように笑顔で「うそうそ冗談だってば」と言った。
僕には全く冗談に聞こえなかったがまぁいいか・・。
ユキが冗談だといっているんだし。
そこからは他愛も無いような話をして学校に行った。
************
こんなにも世間で騒がれているのに、いつもと変わらぬ学校。
少しいつもと違うといったら、全校集会が急遽行われ女子生徒は気をつけろ
との事だった。
だからといって短縮授業になるわけでも無いのだが。
男の僕には関係の無い話なはずだったのだがなぜか不安になった。
************
美しい女性が泣いている。
僕は動けなかった。
その女性の瞳はとても大きく美しかった。
僕は彼女の瞳に吸い込まれた。
ー『白い肌に紅い血は美しい』
ここはどこだろう・・?
薄暗い・・・埃のにおいがする・・教室・・?
『俺は芸術家だ。白く美しいキャンバスに真っ赤な血で絵を描く。』
男は僕を椅子に縛り付けている。
ふと下を見ると、短いスカートから白くてキレイな足があった。
僕は女子制服を着ていて黒く綺麗な髪をしている。
これは僕じゃない。
僕は一体誰なんだ・・・?
「あんた誰・・?」
僕は男に尋ねた。
男はいやな笑顔で言った。
『どうせ死ぬんだから最期に作者名くらい聞きたいよなぁ?』
気持ち悪い。
そんな目で僕を見るな。
『俺は佐伯 ・・・・・』
急に何も聞こえなくなったそして身体が言うことを聞かなくなっていた。
死にたくない。
死にたくない。
「イヤァァァ!!!!!死にたくない!!誰か助けて!!」
少女は叫んだ。
死にたくないと。
でも誰も助けには来ない。
少女は猿轡を噛まされた。
そして男は少女の額を切り裂いた。
***************
ガタンッ!とゆう音と共に僕は目を覚ました。
目を覚ますと、いつも通りの教室。
僕は机の上の教科書を床にばら撒き気がついたようだ。
クラスメイトの目が痛い。
「おい!鳴川!居眠りしたら破門だっつっただろう!?恐い夢でも見たのか!?」
理科教師の綺堂先生が僕を怒鳴った。
更にクラスメイトは僕を見て爆笑。
「破門だってさークルミ~!!!」
誰かが囃し立てるように言った。
恥ずかしい・・・。
まさに穴があったら入りたいという状況だ。
まったく・・。
居眠りで破門だなんて・・・。
僕がうつむいて後悔していると横から呼ばれる声がした。
「おい!クルミ~どうしたんだよ~。天才は居眠りしてもいいのかぁ~?」
隣の席のユキがいつものように悪戯っぽい笑顔で話しかけてきた。
『はぁ~。天才って言うなって何度言ったら分かるんだよ・・。』
「ええっ?クルミが天才じゃなかったら誰が天才だよ?才能的に天才。」
僕は所謂器用貧乏だ。
基本的にはなんでも出来るけどそれ以上でもない。
自惚れのようで少しイヤだが・・・。
『失礼な!努力型だバカヤロウ。』
小声でひそひそとこうして馬鹿なことで言い合うのは意外と好きだ。
先生に怒られるかもしれないスリルも。
「で、今日お前どうしたんだよ?調子悪そうだけど?」
お前が一体どうしたんだ。と心の中で突っ込みながらも
一応心配してくれている友人には感謝だ。
『別に・・・。ちょっと変な夢を・・っつうか殺される夢を2回も見た。』
所詮はただの夢。
真面目に聞いてもらおうと期待している僕は馬鹿かもしれない。
「・・・お前のお母さんってさ・・。霊能力者じゃなかった・・?」
意外な言葉に驚いた。
誰も知らないはずの過去。
大体ユキは僕の本当の母親のことなんて知らないはず・・・。
『・・・はぁ?何の話だよ・・・?』
「俺の親父が警視総監でさぁ。昔、若い頃フランスに行った時本物の霊能力者に
会ったらしくて、その人は弁護士で、俺と同じくらいのハーフの息子がいて
名前はケイティー・アークエット。息子の名前は・・・来未。」
色々意味が分からない。
まずユキの親が警視総監・・?
そんな話初めて聞いた。
んで、その父親が僕の母と会った・・?
「息子の名前が珍しくて覚えてたらしい。それで高校の名簿でお前の名前を見つけて
びっくりしたらしい。それに、帰国子女でハーフ。ビンゴだろ・・?」
ビンゴ過ぎてビックリしてるから。
とゆうことは、僕が霊能力者の息子だってユキは最初から知ってたの?
それでも、普通に接してくれていたのか?
『ビンゴだよ・・・。マジでビックリしてるよ今。』
普通なら、霊能力のある母親の息子なんて気持ち悪くて
関わりたいと思わないのに。
ユキは真剣な眼差しで僕を見つめている。
「やっぱり・・・。」
僕はユキがその先を言う前にいつから知っていたのか聞いた。
そして、どうして知っていて僕と普通に過ごしていたのか。
ユキは、高校に入学してから知っていたけど違うかもしれないし偶然の一致かもと思っていたらしい。
それに、もし僕が本当にその『来未』だったとしても気が合うヤツには変わりないと
あまり気にしていなかったらしい。
ユキらしい回答だった。
少し安心した。
「でさ・・・もしかしてその夢にも意味があるんじゃない・・?」
ユキは、真剣な顔だ。
こんな僕の話を信じるのか。
夢なんだから、起こったかもしれないし、起こっていないかもしれない。
事実か、ただの夢か。
『意味なんか・・・・。』
ふと、見上げると廊下に夢で見た女性が。
どうして・・?
生きている?
そもそも実在していたのか・・?
「どうしたの?クルミ・・?」
『あそこ・・・・。』
僕は廊下を歩く女性を指差した。
しかし、ユキは首をかしげ”そこには誰もいない”と。
そこに歩いているのに。
居ないなんて・・・そんな事・・。
ありえない。
「まさかお前、やっぱり見えるんだよ!俺たちには見えないモノが!」
すこしユキは興奮したように声を上げて言った。
「おい!結城うるさいぞ!!お前も破門するぞ!!!!」
「えぇ!?それは勘弁・・・。」
またクラスは笑いに包まれた。
廊下を歩く女性はいつの間にか居なくなっていた。
僕の見間違いならいいのに。
僕は不思議な能力なんていらない。
つまらないこの生活を変えたいのに僕は他人と違う能力は要らないと思う。
結局はこの日常を手放したくないのかもしれない。
REPLAY 第1章
楽しんで頂けたでしょうか!?
くるみは、私と似ているキャラクターで大好きです。
朝、くるみ君が感じたTVに自分の街が映る恐怖は私の経験した
ことでもあり、鮮明に書けたのではないかと思います。
綺堂先生が「居眠りしたら、破門だぞ!」は、私の通う高校の先生の
名言から貰いました(笑)
そんな先生が本当にいるんですよ(笑)