舞った花弁は金色に
大きく凹んだステージに、私は立っていた。周囲にいる多くの観客が私を見つめ、私の一動一動に注視している。
肺に溜まった暖かな息を体外に排出して、体を前進させる。地面との摩擦がゼロに近しい私は、滑らかに、それこそ、「つるつる」に進む。
会場にピアノの旋律が流れ出し、私はそれに合わせて振る舞う。否、それでは駄目だ。駄目なのだ。音を、纏う。自らが音を発している。
大きく広げた両の腕が、そこらに散漫する空気を引っ掻き回し、尾を引く。反時計回りに回転し始めた私の体は、その身を縮めることでより速度を増す。
予定通りに回り終えた私は、姿勢を整える。右足を後ろに引き上げ、遠心力を味方につけて、舞う。
着地と少し遅れて、群衆の歓声が僅かに耳に届く。しかし、今はそれどころではない。すぐさま次の跳躍へと準備する。
束の間、私の体勢が傾く。脚が曲がり、手を地につける。転けてしまった。
しかし、取り乱してはならない。焦ってはならないのだ。
はぐれた音を連れ戻し、私は再び氷の大地と相対する。
私の名前が呼ばれたのは、三人の内、一番最後だった。
最も高い地へ、私は再び、小さく跳んだ。
舞った花弁は金色に