熟れた実の味

熟れた実の味

おばあちゃん、怖い。

お嬢さん。ここまで知ってしまったら、親元には帰れないよ。

あたしから見たら孫の子供、
あたしの曾孫を孫の嫁は7人身篭ったねえ。
6人女の子が続いて7人目でやっと跡取りの男の子だった。
こんな小さな閉鎖された村さ。
みーんな親戚みたいなもんだよ。
全員がどこかで必ず血が繋がってる。

だからこそ口をつぐむ。

村人同士で殺し合いになって、
どちらかが死んでも、大差ない。
死んだ方を村のみんなで黙って死体を埋めるのさ。
殺した赤子も同じだよ。
こんな貧しい家ばかりの村だ。
皆、おろすか
後を取らない女の子は口減らしにまず間違いなく殺して埋められるねえ。

うちは次女から六女まで生まれて直ぐ首を絞めて殺して、5人埋めたねえ。
誰が首を絞めたのかって?
あたしだよ。
あたしは若いとき産婆をやっていたから、
自分の曾孫をこの手で7人とりあげて、
そのうち5人、私の手で殺して生めた。
息子は黙々と自分の孫を埋める穴を掘っていたねえ。
どの木の下に埋めたか忘れないように、
村はずれの森で一番大きな木の下に埋めることに決まってた。
目印をつけてねえ。
幹も立派だが大きな枝が生えていて

「あの村はずれの首吊りの木」

なんてよばれていたねえ。
ザンコク?
「ざんこく」ってなんだい?
ずいぶんと難しい言葉を使うんだねえ。
さっきから「ほうりつ」とか「けいばつ」とかどこの国の言葉だい?
あたしには分からない。
で?お嬢さんはこの村に嫁に来たいと?
洋と結婚したいだけならやめといた方がいいよ。
この村から若いもんが出て行く話は良く聞くけど、
この村に入りたいと言って来たのは、
お嬢さん、あんたが初めてだ。
洋の子供をこの村で育てたいと?
悪いが歓迎は出来ないよ?
それでもいいかい?
いいさ、わかった。
そこまで言うなら、
今晩にでも、
村の連中と掛け合ってみるかねえ。
お嬢さんの気持ちはあたしが受け取ったよ。
今晩中には、
村中で寄り合って報告する。
それでいいね?洋?
家は今浩が住んでいるうちの離れに住むといい。
何?
お金をかけて、リフォームしたい?
してもいいかって?
リフォームってなんだい?
ああ、そりゃだめだ。
村に例え業者だろうと他所もんが大勢入って来るのは村のモンが許さないよ。

すまないねえ。
お嬢さん、
何もないけど良かったらこの果物をお食べ。
昨日、
あたしが森に入って採って来た分だ。
何の実かって?
正確にはあたしも知らないねえ。

確か、柘榴って名前だったかねえ。
「おいしい?」
そうかい?
それは、良かったよ。
何人の赤子をこの柘榴の木の下に生めたかねえ?
お嬢さん。
ここまで知ってしまったら、
親元には帰れないよ。
その実の木の下に、あたしは曾孫を5人埋めたんだ。
赤子を栄養にして育った実だ。
味はどうだい?

「柘榴は血の味」って言うからねえ。

生まれたての赤子の血の味がするだろう?

熟れた実の味

ジャパニーズホラーって感じ?

熟れた実の味

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-03-02

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