停止しても春
睫毛を濡らしたお姫さまに水仙を渡す
全身を走る血はピレネーの雪解け水
急いで季節の引っ越しを行うのだ
忘れたら巻き戻る 壊れたVHSを捨てられなくて
風が家を破壊する 黙ってみていた兎の子
尻尾を立てることができない
不自然なロープが輪を作って木にぶら下がる
蔓を伸ばして素肌が見えないけれど
幾千の闇夜を超えても眠れない
下駄の鼻緒が切れてしまえば動けない
洗濯機を回し忘れたことも気付けない
彼の手に触れるまでは
我が目を潰す指に出会うまでは
また水仙を渡す 雪はまだ残っている
停止しても春