米$の身体
難しいわ、この問題は。
中途半端に子供を欲しがったあんたたち夫婦のせいなの
ジュースの中に入れた薬がまわって抵抗できない、
「女」の喉元がひくひく動いている。
私は先端を当てているアイスピックをもつ手に力を込めた。
「空ちゃん…お母さんが間違ってた」
「間違ってた? ナニを? 言って見なさいよ」
「体外受精で子供を産んでもらったお礼に、
ブラウンさんに『あなたをお礼に上げたこと』。
ブラウンさんが『情がうつちゃったから一人欲しい』って言ったから」
「あんたさあ」
実の母親に私は言う。
「子供はね…赤ちゃんはねえ。物じゃないの!お礼の金品じゃないのよ。
贈答品やプレゼント扱いされてアメリカに置き去りにされた、
子供の気持ちがわかんの? どんなに辛い人生を歩んできたのか、分からないでしょ」
私は「私を産まなかった母親」に言った。
「黒い髪、黒い眼の日本人。両親はアメリカ人。
友達もいない。私がアメリカ社会でどれだけいじめられてきたことか。
ブラウンさんはね。確かにママは可愛がってくれたわ。
でも、パパの方は違った、私はパパの言葉の暴力、
性的虐待の対象だったわ、10歳の頃からずっと。
その間、美湖の方は大切に甘やかされて、愛されて。
この差は一体、何? 全部、お金を掛けて、
中途半端に子供を欲しがったあんたたち夫婦のせいなの」
私は私の卵子の製造元でしかない女を責めた。
「でも、こうして空子ちゃんに逢いにきているじゃない。
逢いたかったわ、空子ちゃん」
「よく言うわ。18年ぶりじゃないの。美湖が留学するから、
下見ついでに寄っただけでしょ」
「空子、どうして知ってるの」
「美湖と連絡とってるもの。春からは双子の姉妹はLAで同居生活。
LA育ちの私は、美湖の案内役。『困った事があったら助けてあげて。』って、
それをいいに来たんでしょ。どこまで、私を傷付けたら気が済むの。
どこまで、私を馬鹿にしたら気が済むのよ」
「ごめんなさい」
一言言って、母親は泣き崩れた。
「空子ちゃん、どうしたらいいか、お母さん分からないの」
「赤ちゃんに戻って私を愛情込めて育てて」
「空子ちゃん、それだけは」
「無理よね、分かっているわ」
薫子に言った。
「もう、私を利用するのはやめて」
それだけ言った。
「この次は美湖を連れてくるから」
夜、空子は今日あった事を一部始書き、
双子の姉、美湖にメールで送った。
空子は、美湖の事が嫌いだった、同じ双子なのに、
幸せに育った双子の姉の美湖を「めちゃくちゃに」してやりたかった。
まず同じハイスクールの「身体で操れる」男に「身体を与え」協力を頼んだ。
バージンじゃなかったし男という生き物が馬鹿だと認識も十分あったし、簡単だった。
報酬はいつも私自身。
ブラウン夫妻『代理母出産』の時も、
「美湖を傷つける男を操る計画も」
…いつも「この身体で私は」代償を支払っている。
半年後、美湖は妊娠した。
私が雇ったジミーたち誰かの子供だろう。
「よくやってくれたわ」
男たちは3人いたから、私は順に相手をした。
私と、美湖とジミーたち男3人。
「生理が来ない、でも(アメリカ)こっちのお医者さんに行くのは怖い」
と言う美湖に「大丈夫よ。生理は来るわ」といって聞かせ、
妊娠7カ月まで「親」への報告を引き延ばさせた。
これで海湖の人生は多少狂うはず。
愛娘の一大事に飛んできた両親は「管理監督できなかった」と、
私、を一様に責めたが、
「20歳の大人の性生活までは踏み込めなかった。」
と少し暗い顔で言うとそれ以上は何も言わなかった。
私はそのままアメリカに残り、
美湖は日本の田舎で極秘出産して生まれた両親と子供を育てていた。
私は何かあるごとに、身体と引き換えにやってきた。
私に対する虐めがなくなったのは主犯格の少年に自分の身体を与えたからだ。
パパの私に対する虐待に対しては、
2人バイを雇って闇の中後ろからパパを襲わせた。
パパは完全にそっちに目覚めてしまい、元々破綻仕掛けていたママと離婚した。
そのバイ達とも私は寝た。
「愛が欲しい」と言えば嘘になる人生だった。
でも、私は異性との愛と言うより家族愛が欲しかった。
日本とアメリカ、どちらの家族にも愛されなかった、
なんて、悲しい人生…私はつぶやいた。
そして生まれて初めて、泣いた。
米$の身体
全部、責任とる人って損かも知れないけど。
責任のがれする人よりも魂が綺麗だと思う。