卒業式

これ、実話をもとに書きました。

皆、パパのこと悪口言ってた、「鬼畜」だって。

パパ。
そんなに私とママの事が嫌いですか?
「PTA」って不倫相手を見つける出会いの場なの?
パパ、瞬くんの事、
もう私より可愛いのね。
私は瞬くんに負けたの、
そして、
ママは瞬君のママに負けたの。
私の渚っていう名前、
パパがつけてくれたんだよね。
相原って言う名字、
私と岬はまだ使ってるの。
ママはね、
子供の頃の名前だった「小林」に戻りたいって、今もしょっちゅう言っているわ。
おじいちゃん、おばあちゃんも、
そうしなさいって言ってる。
「小林渚は嫌だ。」
パパの事、忘れない為に「相原渚」でいたいって、
家の中で私一人が頑張ってるんだ。
「相原渚」って名前ね、
結構気にいっているの。
でも、「山下瞬」だった瞬君も今は「相原くん」
になっちゃった。
同じクラスに「相原」が二人いて、
結構ややこしいの。
ややこしいクラスにね、
したのはパパと瞬くんのママなんだよ。

パパ、瞬くんには「お父さん」って呼ばせてるって聞いたことがある。
それ聞いて、私は、ちょっと嬉しかったんだ。
パパのこと「パパ」って呼ぶのは私と岬だけなんだって思って、
すごくすごく、嬉しかったんだ。

後ね、あれ、ショックだったよ。
「瞬君のママ」のお腹にパパの赤ちゃんがいてね、
瞬君と渚が小学校を卒業する少し前に生まれるって、噂。
噂じゃなくて本当の事だったけどね。
パパ、私ね、噂じゃなくてパパの口からその事を聞きたかった。
2月に生まれた「弟」に私、まだあったことないな。
それとも、一生、
あわせてもらえないのかな?
赤ちゃんにも私にも罪はないんだよ。
パパ、パパがうちを出て行ったのは、
去年の12月だったね。
「計算が合わない」って、皆が笑うの。
あれって、どういう意味なの?

パパ、覚えてる?
運動会の親子騎馬戦、
パパは瞬君じゃなくて、
私を肩に乗せてくれたの。
あの時は嬉しかったあ。
瞬君のお母さんは「ミコンノハハ」で、
お父さんがいないから体育の先生だった。
渚は嬉しかったんだよ。

ねえ、パパ。いつか渚も「弟」をダッコさせてもらえる日が来るのかな。

あっという間に「相原渚」と「相原瞬」が小学校を卒業する日が来たね。
「瞬君」は私学に進むから、もう、私は「相原瞬」と顔を合わせないで済むの。
私も私学に行きたくて2年生から塾に通っていたけど、
パパとママが離婚したから「公立」に行くことになったの。
ママがね、ママ一人では、経済的に到底無理だって。
「仕方ないよ」って渚が言ったら、
「ごめんなさい」ってママが泣いてた。
パパ、どうしてママがなかないといけないの?

パパ。
私、これは自慢なんだけど、パパとママの離婚の事で泣いたことは一度もないの。
瞬君のママの事も、瞬君の事も、赤ちゃんの事も、中学校の事も、
泣かないで受け止めて来たの。
でも、今日だけはごめんなさい、だめだった。
ママに買ったもらったAKB48風の服を着て私は小学校を卒業するの。
卒業生の入場は名前順だから、
「相原瞬」と、「相原渚」は先頭だったの。
パパ、嬉しそうに大声上げていたよね。
「瞬!瞬!おめでとう!」って。
パパ、渚、ワンワンワンワン泣いちゃった。
パパが渚の名前も呼んでくれなかったから。

皆、パパのこと悪口言ってた「あの男は鬼畜」だって。

ごめんね、パパ、私、パパの事、庇いきれなかった。             

卒業式

何回読んでも、
泣いてしまいます。

卒業式

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-03-01

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