せんべい屋の婆さん


バイトの昼休みによく行くせんべい屋に行ってきた

この店は江戸時代を思わせるようなレトロ感たっぷりの狭くて古い店で 小っちゃい87歳の婆さんが一人でやってるんだよ 

店に行けば『ミスカちゃんいらっしゃい』って声もかけてくれるし 新年の挨拶も兼ねて婆さんの様子を見に行ってみた

入口は薄っぺらいガラスドアが傾いてて ギシギシ音をたてないと開かないドアなんだけど それを開けると古い木材を並べただけのようなカウンターに 婆さんいつも顔だけぎりぎり出して座ってるんだよね 

てか今日はいねぇからどうしたんだろって思って見渡してたら

『あらミスカちゃん こんにちは』って奥の部屋に婆さんの姿が見えて安心したよ

婆さん昼飯の真っ最中だったのか 食いかけのあんぱんを右手に握りながら歩いてきて

『お姉ちゃんも食べるかい?』つうから元気よく『はい!』って返事してイスに座って待ってたら 食パンの耳を持ってこられてひっくり返りそうになったwww

普通にあんぱんくれるもんだと思ってたしさ てか奥のテーブルの上にあんぱん2つあんだから どっちか1つくれよwww 

カウンターんとこで2人でパン食いながら紅白の話したりしてて 会話の途中で何度も『おいしいねぇ』って言ってくっけど 美味しいのはあんぱん食ってっからだろwww

仕方ねぇから醤油せんべい1枚買って その上に食パンの耳を小さくちぎって乗せて食ってたんだけど そろそろこの光景を見て何かを察してくれよって本気で思ったよwww

それよか婆さん何だかしんねぇけど あんぱん一口食うたんびに入れ歯を取り出してティッシュで拭きとって また入れて一口食って外してティッシュで拭き取ってって行動をずっと繰り返してっけど さっきから何やってんだよお前はwww

すげぇ奇妙な行動だったんだけど その後アタイと話をしながらその行動をしている内に いつの間にかあんぱんの方をティッシュで拭き取ってっから吹きそうになったwww

しばらくしたら婆さんが『お茶でも飲むかい?』って言って遠慮せずに頂いたんだけど コップなんて婆さんが今さっきまで飲んでた洗ってない奴だからねwww

まぁこれは毎回だから慣れてんだけど 婆さんが口つけてないとこ探すのに毎回マジ必死こいてんだよ

だから今日はコップにあんぱんのカスやティッシュのカスが付いてないとこ選んで飲んでたwww

そもそもお茶をもらうようになったのは お釣りの小銭がなかった時に『お釣りがないから美味しいお茶でいいかな?』みたいに言われたのがきっかけなんだよね

てかすげぇお釣りが足りなかった時なんて 無理矢理7杯飲まされて泡吹きながらバイトに戻ったけど 今となってはいい想い出だよ

こんな感じの婆さんだけど この店に来ると落ち着くし 婆さんは何だかんだと笑わせたり笑顔にさせてくれるからマジ感謝してるよ

ほとんどの人は綺麗でお洒落な店へ行きたがるけどさ アタイは深い何かを感じさせてくれるここのせんべい屋が1番好きだよ

せんべい屋の婆さん

せんべい屋の婆さん

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-02-28

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