白とシロの境界線
これは夢?幻?それとも?
―――私は彷徨っている。深い霧の迷宮を。
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the end of the wor・・・
・・・今日も外は夏の日差しが照りつける青空で。今日も私は家の中。
いつものことだけど、なんでか今日はちょっとセンチメンタル、なんちゃって。
私の名前は「鐘原 虹」(かねはら にじ)
『一応』高校二年生。灰色の青春真っ只中。
なんで一応なのかって?
私が通っている学校は
『秋桜特別高等学校』(こすもすとくべつこうとうがっこう)
「特別」の名前の付く通りで、特別な事情がある子達のための学校。
そりゃー灰色の青春なわけですよ、そういう所に行ってる私ゃ。
今日も『誰もいない家の中』を歩く。
私は家なき子ならぬ、親なき子。
両親は私が幼い頃に蒸発した・・・らしい。
私は全然知らないんだけどね。
そんな私は絶賛ヒキコモリ中。
だって『人間嫌い』の極みだもの。
学校だって用事がない限りは行かない。
学力に問題はないから問題はない。
残されていた通帳には、生活に困らない程度の金額が記載されてる。
そんな私が学校に行くことになったのは、子供の頃私が一人残されていた時、病院に連れて行かれたらしいのだけど
そこで検査した結果判明した、人類にとって類稀なる能力のため。
【テレパシスト】
私は、人の心が聞こえる。
普通にしている時は色で感じ取るし、耳を澄ませば具体的な内容までバッチリ。
『アナタ』は羨ましいって思うかもしれないけど、人間嫌いになるには十分なのよ、これ。
―――あら、そんなに驚かなくてもいいじゃない。
私は一言も喋ってないのに、私の【言葉】を聞き取ってるんだし、同類みたいな感じでしょ。
アナタは人間かしら。それとも、人間のフリをしたイキモノかしら。
どちらでも構わないけどね、また、暇潰しに付き合ってくれる「モノ」が来てくれただけで嬉しいわ。
「ぴんぽーん」
あら、この世界でも来客ね、珍しい。
「どちら様ですか~?」
相手の感情の色が見えない時点で、検討ついてるけど、一応聞く。礼儀らしいし。
『わたしだよ、わ・た・し!』
「わたしさん?たわしの訪問販売は間に合ってます、では」
『ちょ、ちょっとまてーーー!』
ガチャン。カチャリ。ジャラっ。
インターホンを切って戸締り完璧、これで完璧ね。
「人を試すのもやめてほしいぜ、全く」
「あら、もう【入ってた】のね」
そう、その、私より小柄な子は、さっきまで私が寝ていたベッドに腰をかけて漫画を読んでいた。
「君と違ってわたしは疲れるんだよ、わ・か・る?」
「わかんない♪」
大げさなため息をつくと、手に持ったコンビニ袋から冷え冷えアイスを差し出してくる。
「機嫌直してくれ、というか餌」
「わーい♪」
『今まさにクーラーボックスから出したかのような冷たさ』は、私の心を容易く溶かす。
この子は「終夜 時希」(よすがら とき)同じ学校に通う同級生。
世話焼きでついでに人間大好き。どうしてか私のことも好きらしい。私は人嫌いなのにね。
そんな私も、時希の心は何故か読めないから、そんなに嫌いじゃない。
【タイムリープ】
時間を切り取る能力。
その切り取られた時間の間、何が起きていたのかわかるのは本人だけ。
それが時希の能力、らしい。
「ほい、宿題」
「うぇー、かわりにやってよー」
「お前専用のカリキュラムの宿題をわたしができるわけねーだろ!」
「にっひっひ、時希じゃなくて『アナタ』ならできるんじゃないかなと♪」
「おや、また『観測者』さんがいるん?なんか悪いことしてるんじゃねーの?」
「時希には誰か居るかわからないしねー、ねーねー『アナタ』は波動方程式とマシンコードの相関性についての論文って書けない?」
「いや、普通無理だからな?」
「この食べかけアイスあげるからさ♪」
「男か女かもわからないのにその餌はねーよ」
「時希はそういう認識したのね、私はからかっただけなんだけど」
「『アナタ』が少しでも劣情抱いたら、精神攻撃で失神させてやろうと思ってた」
「はいはーい、虹ちゃん、落ち着きましょうね~」
「はーい」
・・・・・・・
・・・・・
・・・
「んじゃなー」
「それじゃあ、また来世♪」
「今世で会うんだよ!じゃあな!」
・・・ぱたん。
騒がしい声とは裏腹に、ドアは静かに閉めるとか、仕草は凄く乙女な時希、ちょっと笑う。
【ゆーがっためーる!】
はいはい、なになに・・・ナニコレ。
[秋桜の咲く頃は永遠に来ない]
この一文だけのメール。
順当に考えたら秋が来ないって事よね?
『アナタ』は意味わかる?
・・・ん?
勝手にコマンドプロンプトが開いて何かコードを実行してる?
ウイルスかしら・・・?
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the end of the wor・・・
・・・・・・・
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・・・今日も外は夏の日差しが照りつける青空で。今日も私は家の中。
いつものことだけど、なんでか今日はちょっとセンチメンタル、なんちゃって。
私の名前は「鐘原 虹」(かねはら にじ)
『一応』高校二年生。灰色の青春真っ只中。
あら?誰かいるの?『アナタ』は何を呼びかけてるの?
そもそも私が『アナタ』に気づいてる事を驚かない時点でおかしいんだけど。
・・・しっかり戸締りしてインターホンに出るな?いきなり何よ。
でも『アナタ』は変わってるし、退屈してたから試してみようかしらね。
「ぴんぽーん」
本当にインターホン鳴ったわね。出なければいいんでしょう?
・・・息を潜めて居留守。
「ぴんぽーん」
・・・これ本当に意味あるの?ある?わかった、今回は私が乗ったんだし『アナタ』の言うこと聞くわね。
「ガチャッ!ガチャ!ガン!ガン!」
ひっ!?・・・何!?
・・・完全に気配消えたわね。誰だったのかしら?
外には出ないほうがいい?・・・そうね、何があるかわからないし。
夜。
そろそろお腹すいたのだけど。『アナタ』何か作ってよ、って無理か。
「リリリリリリリ!リリリリリリリ!」
電話?なんでまた・・・?
「はい、もしもし鐘原ですが」
「[秋桜の咲く頃は永遠に来ない]」
変声機を使ってるような変な声。
「?どういう意味?」
ツーッ、ツーッ、ツーッ
・・・!?
窓ガラスが・・・まるでパソコンのスクリーンのようになってる!?
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the end of the wor・・・
・・・・・・・
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・・・今日も外は夏の日差しが照りつける青空で。今日も私は家の中。
いつものことだけど、なんでか今日はちょっとセンチメンタル、なんちゃって。
私の名前は「鐘原 虹」(かねはら にじ)
『一応』高校二年生。灰色の青春真っ只中。
え?周囲の感情を受信してみて?って『アナタ』薮から棒になによ?
いいから、って・・・ぇ。
・・・周囲の、感情が、色が、一切、無い・・・???
待ってて、って、何よ!一体!?
やぁやぁ『読者様』
ここに気づいたんですね、おめでとうございます。
そう言うと、小柄な影は恭しく礼をする。
その顔は・・・
時希「あらぁ、わかっちゃったんですね、謎」
やっぱりそうだったんですか。
時希「ですよぉ、じゃなくちゃ、あの子のアイスはありませんしね」
そうだね。
あなたが[設定]した【タイムリープ】じゃ無理がある。
時希「理解してくれて嬉しい限りですよぉ、じゃあ、どうしてこんな所に『呼んだ』かわかりますかぁ~?」
・・・正直いうと、わからない。
助けて欲しいという意志は感じたけど。
時希「あの子を救ってあげて欲しいんですよぉ」
・・・救う?
時希「はぃ~。あの子は『作者様』ですからぁ」
時希「あの子が元気にならないと、時間は進んでくれないんですよぉ」
・・・テレパシスト。
時希「ご明察ですぅ~。あのチカラがある限り、あの子は人嫌いが治らないでしょうねぇ~」
時希「人嫌いが治らないと、そのまま終息するだけなんですよぉ~」
・・・あなたは一体?
時希「わたしは『妖精さん』ですねぇ~。あの子を助ける、あの子の大事な人がわたしかなぁ~?」
・・・これを信じろと?
時希「信じられないのもわかりますしぃ、信じてもらえないなら、また別の方を探しますよぉ~」
・・・わかりました、やれるだけやってみます。
時希「流石ですねぇ~。【虹色】の存在だけの事はありますねぇ~」
・・・期待はしないでください、確実なんてありませんから。
時希「それでもありがたやですよぉ~。それじゃあ、巻き戻」
・・・しはしなくていいです。
時希「はぇ?」
・・・現在進行形である以上、巻き戻したらここまでやったことも無に帰するわけですから。
時希「それもそうですけどぉ~、今のあの子はボロボロですよぉ~?」
・・・それでも、時間を巻き戻すことに頼っていたら、あの子も治らないと思います。
時希「わかりましたぁ~。でも、何か問題があったら、その時は『読者様』の意思を無視してでも巻き戻しますからねぇ~?」
・・・百も承知です。
時希「ありがとうございますぅ~。・・・よろしく、お願いしますね」
ここから先は、物語としては書かれていない。
これからどうなるかは、誰にもわからない。
何故なら、人生という本に記されていく物語だから―――
fin
白とシロの境界線
作者様、はじめました。